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ナイジェリアがGMトウモロコシを解禁 干ばつ・害虫対策に期待

ナイジェリア政府は2024年1月11日、干ばつ耐性や害虫抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ4品種の商業栽培を承認しました。ナイジェリアで解禁されたGM作物は、綿花とササゲに次いで3作物目となります。主要作物であるトウモロコシについては、ケニアが2022年10月にGM作物を解禁しました。気候変動や異常気象による不作や飢餓に悩むサハラ以南のアフリカでは、食料安全保障を強化するための新技術として、GM作物への期待が高まってきました。
  
アフリカ農業技術財団(AATF、ケニア)や国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によると、このGMトウモロコシは「TELA Maize(テラ・トウモロコシ)」と名付けられています。2018年に商業栽培に向けたプロジェクトがスタートしました。
 
プロジェクトには当初、ナイジェリアと南アフリカ、エチオピア、ケニア、モザンビーク、タンザニア、ウガンダの計7カ国が参加していました。しかし、ウガンダとタンザニアが抜け、現在は5カ国となっています。AATFのほか、ナイジェリアの農業研究所(IAR)やメキシコにある国際トウモロコシ小麦改良センター(CIMMYT)、ドイツのバイエルなども参加し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金支援しています。

GM技術については、バイエルの農業部門バイエル・クロップサイエンス(旧モンサント)がライセンスをプロジェクト参加者に無償で供与しています。これにより、ライセンスを供与された種子会社が、GMトウモロコシの種子をアフリカの農家に低価格で販売できるようになるということです。
 
南アフリカでは既にテラ・トウモロコシの商業栽培が始まっており、ナイジェリアで2カ国目となりました。2024年5月ごろに作付けが始まる見通しです。プロジェクトの担当者は「ナイジェリアの決断に勇気づけられた。農家の利益となるように、他国も同様の決断をしてほしい」と訴えています。

次の候補としては、ケニアが期待されているようです。ケニアは既に干ばつ耐性のGMトウモロコシの商業栽培を解禁していますが、テラ・トウモロコシとは異なる品種です。
 
テラ・トウモロコシのTELAは、ラテン語でProtection(保護)を意味するTUTELAに由来します。アフリカでは干ばつや害虫による農作物の被害に悩まされ、多くの人が飢餓に苦しんでいることから、GM技術により、干ばつや害虫に強い品種を開発し、食料安全保障を強化するのが狙いです。
 
ナイジェリアでは、カミキリムシの幼虫であるテッポウムシや、蛾の一種であるツマジロクサヨトウの被害に悩まされており、干ばつ対策とともに、これらの害虫対策として期待されています。アフリカでは、これらの害虫により最大で年2000万トン、1億人分の食料に相当する被害が生じているとのことです。従来品種の収量は1ヘクタール当たり6トン程度でしたが、新品種は10トン程度に高まったとの報告もあるそうです。
 
AATFは、GMトウモロコシの解禁について、「ナイジェリア政府による農業改革に沿い、食料や栄養の安全保障に貢献する」と意義を説明しました。その上で、「AATFは揺るぎに決意を持って、農家が直面する課題に取り組んでいく」と表明しました。
 
ナイジェリアの国家バイオテクノロジー開発庁(NABDA)は「テラ・トウモロコシの出現により、農家はトウモロコシ栽培で使う農薬を最小限に減らすことができ、人間や家畜、環境にとって有益だ」とアピールしています。

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