見出し画像

第6話 公共施設の印刷機使用について

 ここから先、以前自分が出版したzine「わたしとリソグラフ」と被る内容が多いので、加筆修正をもとに掲載させていただくことにしました。というか、「わたしとリソグラフ」は3号までリリースしているのですが、実はリソ使用の導入部で終わったままなので、ここでその続きを書きたくてこのコラムを書いております。
 ま、自分で文章を書き、自分で出版しているものであるならば、コピーライトの問題でゴタゴタしなくてもいいっていうのもセルフ・パブリッシングの良き部分ですね、と、久々に本コラムのテーマに寄り添ってみました。

百聞は一見にしかず。まずは触ってみる

 これまでで少しでも「D.I.Y.パブリッシング」に興味を持たれた方は、まずは騙されたと思って一度リソグラフを使っていただきたいのです。そうすればきっと「リソグラフとプリンターって全然別モンじゃん!」とわかっていただけるはず。「そんな、リソグラフのスタジオなんて近所にないし、触れられないよ」というあなたに朗報です。公共施設の多くの場所で、リソグラフの印刷を行なっているのです。
 自分が初めてリソグラフを意識的に使ったのも、公共の施設にあるという情報を聞いて使ってみたのがほぼ最初の経験です。小学校のころはガリ版の時代だし、ギリギリ大学時代にレジュメを作るのにちょっと使った記憶はありますが、リソグラフと認識してあまり使ったことがなかったのです。ただ「チラシ作るんだったら、区民センターの印刷室に行ったら1枚1円で刷れるよ!」との話を聞いたら、そりゃ行くでしょ! ちょうど自主企画も毎月やっていたころ、ライブやイベントのフライヤーを印刷したり、ちょっとした新聞を刷るために自分たちが住む場所以外の印刷室を予約しまくってガンガンに刷り続けたものです。また、フライヤーや小冊子を作ってるけれど、枚数が多いとプリンターやゼロックス・コピーだと高く付くんだよなぁ、と思われてる方はぜひ一度お試しを! 施設によっては印刷機に加え、折り機や丁合い機(ソーター)、簡単な製本機までが用意されている場所もありますのでチェックチェック、実際、設備や機械の調子がメチャクチャ違うので、しっかり調べてみてください。また、小学校から大学まで、各種学校にも大抵設置されているので、なんとか先生に「そこをなんとか、お願いしまーす」と話をするのもありかと。ま、施設の担当者の方はあくまでも学務教員、役所や自治体のスタッフさんゆえ、ほぼリソグラフのことを分かっていないので、専門的なことを訊いても何ひとつ分からないと思いますが……。

公共施設での印刷のマナー

1 居住している区や市の施設に関して、自治体によって異なりますが、ホームページ等をくまなく探すことにより印刷室や印刷機を擁している場所を見つけることができるはず。リソグラフ以外にも、RISOのOEMモデルでもあるDuplo社やRICHO社の孔版印刷機が置かれている場合もあります。ただ、使用方法はほぼ同じなのでご心配なく。

2 施設に連絡を取って印刷室/印刷機の予約。一度予約前に、一度現地に足を運んでどんな印刷機があるのか、予約方法等を確認したほうがいいかもしれません。また、この時に近隣の住民であるか、団体等の申し込み等のチェックがあったりもします。そこは大人ならば、「友達が住んでる」だの「仕事場が近くて」等々、うまく誤魔化してみましょう(っていいのか?)。

3 印刷室でスタッフに印刷手順を聞く。価格に関しては、施設によってもちろん違いますが、大抵孔版のマスターが100円/枚、印刷が紙持ち込みの場合1円/枚、施設の紙を用いる場合は、紙1枚に対して1、2円かかることも。多くの場合、機械に使用枚数のカウンターがついていて、最初と最後の枚数の差で料金を支払います。

4 持ち込んだ原稿をスキャナ台に載せ、「製版モード」でマスターを製版。この時の版の製版濃度を調整することで仕上がりに大きな違いが出ます。あと、後々に詳しく説明しますが、ベタ部分が多い原稿は紙詰まりの元になるのであまり最初は用いない方がいいです。マスター代はもったいないけれど、自分が気に入るまで何度か調整してみることをオススメします。

5 「印刷モード」に切り替えて、必要な枚数を印刷。最初はスピードをゆっくりと、安定してきたら速度を上げた方が仕上がりが美しい場合も。

6 両面印刷を行なう場合は、紙送り用のプレスローラーが汚れないように、紙質にもよりますが10〜20分ほど乾かしてからの方がベター。

注意:基本リソグラフは、フラットベットスキャナーで製版する方法とデータを送って製版する方法の2種がありますが、公共施設での使用では、ほぼフラットベットを用いて製版を行ないます。それゆえに、一度自宅のプリンタ等で原版を作って置かなければなりません。

施設ごとに異なる設備内容

 同じ公共施設でも、自治体の公民館や大きな施設内の印刷室は予約がびっしりと入っていることもあります。また、生涯学習センターやボランティアセンター、子供のための実験工房のような場所が結構穴場だったりしますので、いろいろと探してみるのも一興かと。もちろん、これらの施設を使用するためには、それ相応の届け出が必要なので、自己判断・自己責任でお試しください。また施設が充実している場所もあれば、印刷機だけがポロンと放置されているサビシー場所もあります。また、かつて、自分が住む東京のマンションの真横にあった区民センターでは、最新型のリソグラフを配していて「マスター:100円/印刷1枚1円」と掲載、魅力的だったのですが、区民センターを根城にする地元の有力者オバサマ(スタッフではない)が、「この使用に関してはスタッフがすべて作業しますが、スタッフへの労力を考えて基本的には外部の印刷を行わないようにしています。こちらを使いたければ、ボランティアとして作業に参加してください」と謎のマウントを取られたことがあります。「いや、そうまでして使いたくないので」と丁重にお断りさせていただきましたが、公の機材は基本的にその場所の住民のために用いられるべきものなので、いろいろと交渉して使ってみてください。
 また、僕は4年ほど前から京都に住んでいますが、京都は公共施設があまり充実していない……いや、最悪な状況です。この手の印刷室はもちろん、公共プールや図書館にいたっては、ほぼないに等しい。東京の目黒区に住んでいたころは区民プールが自転車で10分圏内に5つくらいあった経験からすると、「同じ税金払っとるのになんじゃこりゃ」ですが、子供のころから「区民プールなんてない!」と思っている京都人には、その不便さ、知らず知らずに公益施設を使う権利を放棄している状況なのです。しかしそんなダメダメな自治体であっても、「ひと・まち交流館 京都」(京都府京都市下京区梅湊町83-1/河原町五条下ル)のような最高な場所があるので驚きます。他の公共施設にはあまり置かれていない「二色刷り」のリソグラフが常置されている上に、インクドラムはたしか6色ほど用意。紙折機や断裁機、ソーターまで用意されているのです。それで、予約が取れないか、といえば、もう誰も使っていないから規模を縮小しはじめているのですよ、皆さん! もうどういうことなんですか! もっと使おうぜ、公益施設。

 
 先に述べた通り、ここ最近では、ここ日本においてもリソグラフ・スタジオというのが日本の各地に産まれはじめています。東京はある種のブームとなって、この4、5年ほどの間に10か所を超えるスタジオが誕生していますが、地方においてリソグラフスタジオが動き始めていることをご存知でしょうか? 自分が知ってるだけでも、仙台、長野、新潟から、つくばや神奈川、浜松、岐阜や富山、金沢、名古屋、四日市、神戸や鳥取、広島、福岡……と各所に、リソグラフを用意したスタジオやアートスペース、書店ができているのです。
 もちろん、京都の僕のスタジオ(hand saw press Kyoto:京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1F ホホホ座内/oda@handsawpress.com)にご連絡いただいても結構です。まずは一度触って、試して、その仕上がりと面倒臭さをご堪能いただければ幸いです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?