有名

みすごしますか

スポーツ、料理、美術… 様々なジャンルの専門家から新たな知識を得る機会に恵まれることがある。専門知識の量に「なんでそんなに知ってんの?」と、いつも圧倒される。そこには、自分の可処分時間を徹底的に投入できるだけの「好き」がベースにあるのだろう。リスペクトというよりは「グレイト!」と言いたい。だが、気付いたことがある。

専門家は、情報や知見のメモリーカードであり、人を変える力はほぼない。「人を変える」というのは、行動喚起させるだ。もちろん、受け手にその準備ができていて化学反応を起こせば行動するだろうが、かなり稀なケースだ。その場ではハイな気分になるけど、行動を起こすにはハードルが高い。

特に専門家ほど、一般的な人に伝える力が圧倒的に不足している。天才だったり、ひとつのことに盲目的になっている人は、一般人の感覚がわからず、結果、伝える力が乏しい場合もある。

たとえば、心療内科の医師。中には、診察で適当な対応をするだけ。真剣に悩んでいる人に怠けているだけと決めつける。心を扱う仕事なのに、人の心が分からない医師がいる。医師の国家試験では、倫理や道徳や面談を重視して欲しいんだけどな。

そういった専門家は、伝えることに関しては専門家ではないはため、伝える力を持ち併せていると、テレビなど特に生放送・配信のメディアでは重宝される。

たとえば、テレビは、誰でも簡単にみられるメディアなので、小さな子どもからお年寄りまで、難しいことでも理解できるよう、わかりやすく咀嚼してあげるのが仕事だ。その場でわかりやすいコメントが出るとありがたい。

一見、「テレビって、簡単じゃん、幼稚じゃん、誰でも作れそうじゃん」という錯覚に陥る人もいる。しかし、たとえば、学校の教科書は自分で理解しようという姿勢がないと、とっつきにくい。教科書は、エンターテインメントではないので、おもしろおかしくしようという工夫はほとんどない。なので、自分の理解力、つまり情報素材を料理する力が求められる。にんじんをそのまま齧って、素材の良さを感じることもできるが、ポトフにすれば、もっと美味しくいただける。

テレビの情報が、わかりやすいのは、そのように、かみ砕いているからこそだ。同じ情報でも、教科書や論文に書いてあるのは理解できないけど、テレビだったらわかった気になる。そう思ってもらうには、どうしたらいいかつねに設計されている。

商品やサービスを扱う人は、当然思い入れが強い。しかし、自分と相手との温度差があるため「この良さ、あなただってわかるでしょ?」「いや、初めて知るものだから、まだよくわからないよ」という齟齬が生まれやすい。

世の中には、数えきれないほどの、ハウツー本や自己啓発本で溢れている。ほとんどの人は情報発信者の権威や知名度で選びがち。しかし、その人が成功して有名だからと言って、自分も同じレベルまで理解できるかというと、全く別の問題。なぜなら、自分とその人では、生きてきた環境も性格も異なるから。

人気者の有名人に教えてもらったところで、自分も人気者になれるかは別の話。人気があるから、有名だから、知名度があるから、と、権威だけで選ぶ行為は、タレント性を売り物にしているキャラクター商法に乗って、お金を使ってしまうのと同じようなこと

発信者の知名度が高いと、「見たことあるから」という安心感から、入りやすい。だけど、大切なのは「自分が理解できるかどうか」にある。

もちろん、有名人が言っているから、ということで自分の理解が深まるなら、それはそれでいいと思う。しかし、自分が理解できていないのに、買うのは、作り手の狙いにまんまとハマっていることになり、理解するという目的から外れることもある。

noteの世界でもそうだ。無名な発信者が出す膨大な情報の中にだって、核心をついたものもある。溢れる情報は、素材であって、そのレベルでは価値はないと思う。血肉にして、行動して初めて価値が生じる。発信者が無名だからと言って見過ごしがちだが、そこをとらえるられるかがポイント。情報素材はどんどん無料になっていくから、知識力(量)よりも、自分で見つけ(検索し)て、咀嚼して、腑に落とす、という力だったり、サポートするサービスの価値は、ますます上がっていくんだろうな。


この記事が参加している募集

沖縄出身のお笑い芸人さんが命名してくれたペンネーム/テレビ番組の企画構成5000本以上/日本脚本家連盟所属/あなたの経験・知見がパワーの源です