君がいてくれたから
君はいつも神社の階段の上から顔を覗きこむように待ってくれていた。
学校から一緒に帰るのは恥ずかしいから、誰もこないであろう、お互いの帰り道で君は私を待ってくれていた。
神社の前を通るたび、「今日は待ってないよね…」と、諦めた気持ちになるようにと自分に言い聞かせた。君がいなくても落ち込まないように。
君が待っていてくれると、嬉しくて心があったかくなった。「なーんで?!いるの?!えーー!」なんて口では言うけれど、心の中ではいつも安心していた。
「私は君に愛されているなぁ」と。
隅田川の河川敷を一緒に歩く。「なんでいつもいるの?!」とか、「そんなに私のこと好きなの?!」とか言って君を茶化すと、
「ただいただけだよ」と君は言う。
一緒にいる時の大半は、茶化して笑い合っていることばかりだけど、たまに真剣な話もする。
「英語劇、間に合うかね」
「中間の勉強進んでる?」
「志望校決めた?」
私が志望校の話をした時、君は私に
「本当は一緒の学校に行きたいけど、自分の行きたい学校は男子校なんだ。大学附属で女子校もあるけどね。」
と、さびしそうにポツリと話した。
「男子校か…。でも附属なんだよね?じゃあ大学で一緒になればいいじゃん」
さびしさを吹き飛ばすように私が明るく振る舞うと、
「たしかに!大学で合流できる。あと4年半後だね」
君は嬉しそうに言った。
「同じ大学行こうな。落ちるなよ〜」
「落ちないよ。たぶん」と、私は笑いながら君の顔を見た。
日も沈み、少しずつ薄暗くなっていく道で、私は君の腕をぎゅっと掴みながら、
「この時間がずっと続いてほしい」
と、心から願っていた。
その日、君は私を家まで送ってくれた。私の腕を大切にぎゅっと包み込みながら。
19年経った今も色あせることのない思い出。君のあたたかいぬくもりが、今も大好きです。
君に出会えて私は幸せです。
自身の経験を踏まえて、心が軽やかになる言葉や文章を発信できたらと思います。 ホッとひと息つける、憩いのページとなりますように😊 ほんの少しであっても、皆様の温かいお気持ちは大きな励みになります。