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キノコに含まれる長寿ビタミンとは

最新の栄養学の知識を深めるために参考にしている、マコーラ博士とグレガー博士のお二人が同時期にニュースレターで同じテーマを配信していたのが、あるキノコ成分についてでした。
冠動脈疾患、脳卒中、そして死亡リスクを低減させることが実験で示唆されていることから、『長寿のビタミン』と呼ばれています。さらに、研究では認知症のリスクを著しく減少させることが示されています。

この長寿ビタミンの正体は、エルゴチオネインです。
エルゴチオネインについて、調べてみました。

エルゴチオネインとは

エルゴチオネイン(EGT)は、強力な抗酸化活性を持つ希少なアミノ酸の一種です。EGTは、さまざまな微生物、特にキノコ子実体を含む真菌類、放線菌によって合成されますが、植物や動物には合成されず、それぞれ土壌および食品から摂取されます。
近年、EGTを細胞内に取り込むトランスポーターがあることがわかり、注目を集めています。このトランスポーターは、特に酸化ストレスの影響を受ける赤血球に多く発現するようです。
近年、特に脳・中枢系や老化に 伴う疾患に対する効果が期待され注目を集めています。

長寿ビタミン

加齢研究の専門家であり、カリフォルニア大学バークレー校の生化学および分子生物学名誉教授であるブルース・エイムズは、ビタミンの新しいグループの位置づけとして、『長寿ビタミン』というカテゴリーを提案しています。
長寿ビタミンの定義は、「ビタミンのように生命 維持に必要不可欠ではないものの、長期的な健康維持に不可欠で食事から摂取しなければならない化合物のこと」です(1)。

エルゴチオネインの働き

EGTERGは抗酸化作用に優れているため、活性酸素による細胞のダメージを抑えます。認知症予防、肌老化の予防、生活習慣病の予防が期待されます。

1.脳機能のサポート

EGTは年齢と共に減少するようです。観察研究によると、認知機能に軽度の問題がある高齢の被験者は、認知機能に問題のない被験者よりもエルゴチオネインのレベルが低いことが判明しました(2)。EGTが人間の認知機能をサポートする潜在的な能力を調査する二重盲検ランダム化比較試験で、EGT5mgを摂取したグループは、認知機能速度が摂取しなかったグループと比較して有意に改善していることが示唆されました(3)。

2.抗酸化作用

紫外線による肌の老化を光老化と言います。日常的に紫外線を浴びると、しわや色素沈着をもたらし、皮膚がんの発生にも関連しています。光老化は、紫外線を浴びた時間と強さに比例します。
肌に弾力を与えるコラーゲンを分解する酵素があります。この酵素は紫外線によって活性化されるため、紫外線により肌は老化していくのです。EGTはこの酵素を抑制する働きが確認されています(4)。

3.心血管系への働き

3200人を対象としたスウェーデンの実験で、EGTが心血管系リスクと死亡率の低減において、最も優れた代謝マーカーであることがわかっています(5)。

エルゴチオネインを多く含む食品

EGTは身体では作られないため、EGTを得るためには外から補う必要があります。
キノコで生合成される成分ですが、調べてみると、特に『タモギダケ』に多く含まれるようです。

キノコ別エルゴチオネイン含有量


タモギダケは、黄金色をしたキノコで、英名をゴールデンオイスターマッシュルーム(Golden Oyster Mushroom)と言います。北海道や東北地方に自生する食用キノコです。
タモギタケエキスは、中高年の記憶力や注意力を維持する機能として機能性食品に登録されており、錠剤や粉末製品が販売されています。

タモギダケ

エルゴチオネインの化粧品としての利用

EGTは、抗酸化成分として有名なビタミンA、E、C、コエンザイムQ10よりも活性酸素を抑える働きが強いことがわかっています。
その優れた抗酸化作用により、加齢や紫外線などの酸化ストレスから皮膚を保護することから、化粧品原料としても注目されています。

まとめ

EGTはキノコに僅かに含まれる成分で、製品化において、生産性の向上と安定供給を目指し、長瀬産業株式会社、日立製作所、日立プラントサービスが共同開発を進めています。
生産プロセスの実用化が実現できれば、原料コストも下がり、EGT含有サプリや化粧品が多くみられる日がくるのかなと期待しています。

【引用文献・資料】
1.長瀬産業:エルゴチオネイン~安定・安全かつ強力な天然抗酸化物質~
https://www.nagase.co.jp/enterprise/nagase-bio-innovation-center/document/4_NAGASE_BIO-INNOVATION_Ergothioneine_JP.pdf

2.Cheah, I., Feng, L., Halliwell, B. Lim, K., Tang, R. 2016, ‘Ergothioneine levels in an elderly population decrease with age and incidence of cognitive decline; a risk factor for neurodegeneration?’, Biochemical and Biophysical Research Communications, Volume 478, Issue 1, pp. 162-167.
https://www.realmushrooms.com/ergothioneine-supplement-guide/

3.健常者および軽度認知障害者に対するエルゴチオネイン含有食品の認知機能改善効果-ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験-
https://www.hokkaido-bio.jp/healthy-do/material/32

4.The Antiaging Activity of Ergothioneine in UVA-Irradiated Human Dermal Fibroblasts via the Inhibition of the AP-1 Pathway and the Activation of Nrf2-Mediated Antioxidant Genes
https://www.hindawi.com/journals/omcl/2020/2576823/

5.Ergothioneine is associated with reduced mortality and decreased risk of cardiovascular disease
https://heart.bmj.com/content/106/9/691

6.化粧品原料への利用
https://nagasebiotech.com/ja/cosmetic-ja/

7.長瀬産業ニュースリリース
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/04/0419.pdf


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