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鑑賞ログ|無駄な抵抗


安井順平氏

とても好きな役者さん。
今は朝ドラ「ブギウギ」に出演していて注目を集めているけど、わたしは5年前から好きだもんねー。

安井さんとの(一方的な)出会いは過去のnoteをご覧ください。

簡単に言うと、小林賢太郎さんのコントライブに出演されていたのを見て一目ぼれしたって言う感じです。
そしてその中で(個人的に)一番笑えて、安井さんのブラボー感が伝わるのが、このコントです。他のも全部好きだけど。

改めてみたけど面白い。面白過ぎる。
演者さんの演技力も、賢太郎さんの脚本も…

イキウメ

安井さんの所属する劇団で、前川知大さんが主宰・作・演出。

安井さん好きになってから、イキウメ作品も全部見ている。
と言っても3作だけだけど。

今回の「無駄な抵抗」もイキウメのメンバーは全員出ているものの、イキウメではなくて、世田谷パブリックシアターの主催公演である。

松雪泰子、池谷のぶえなど、豪華キャスト×イキウメなので、胸を躍らせながら世田パブへ向かった。

無駄な抵抗

あらすじは以下。

その駅は半年前に電車が停まらなくなった。どの電車も通過するだけ。住民は困惑しながらも、隣の駅まで行くなり、他の交通手段を使うなりして日常を守っていた。駅ビルは寂れ、駅前の広場は活気を失った。
占い師として活躍していた桜(松雪泰子)は地元に戻ってカウンセラーとして再出発する。クライアントとして現れたのは、同級生の芽衣(池谷のぶえ)だった。
芽衣は、かつて桜に言われた言葉に強く影響を受けていた。その言葉が自分の性格と人生を決定づけ、苦しんでいると言う。あれは予言であり、呪いだったと。
駅前広場で始まる対話は、次第に芽衣を取り巻く奇妙な運命を明らかにしていく。
幼い頃の父の態度、叔父との関係、予言を避けるためにした選択、母の残した手紙、芽衣の入れ込むホストの出生の秘密。叔父が探偵まで雇い、芽衣を監視していたこと。
二人は、芽衣を苦しめているものが何なのか、そして芽衣の心に深く刺さった桜の予言をどうするべきなのか、考える。
広場では、関係者たちが二人の会話に聞き耳を立てている。

https://setagaya-pt.jp/stage/2140/

毎回のことだが、特に前情報などを入れずに、劇場に向かうので、どんな物語が繰り広げられるか、ドキドキしている。

そして、始まった途端から、いやセットを見た瞬間から、頭をフル回転させて、物語についていくのである。

何も芸をしないピエロがストーリーテラーとなって、現実と虚構を行き来する。

「無駄な抵抗」

とは何に対してなのか。
それを知りたくて確認したくて、前のめりになる。

イキウメ伝統のお家芸――シームレスに往来する登場人物たちの会話と人生――が今回も存分に繰り広げられていく。
それが次第に重なり合っていくのだが、こちらのキャッチ力を試されているような感じがして気が抜けない。これが無駄な抵抗・・・?

電車が止まらない駅で、それぞれに何かを抱えた人たち。
紐解くと、とても複雑で恐ろしくて、顔を覆いたくなるような事実が露見していく。

この作品はソフォクレス作『オイディプス王』の要素を取り入れた物語である。ギリシャ悲劇のひとつで、上に述べたような顔を覆いたくなるような出来事の連続である。

「オイディプス王」からのインスパイアとは知らずに見ていたけれど、後半一気に暴かれる事実へ向けて畳みかけるパワー(特に松雪さんと池谷さん)は凄まじかった。激しくて、哀しくて、しょうがなかった。

なのに、ずっと聞いてたいと思った。

そして、最後は、無駄な抵抗の意味が理解できた気がした。

山鳥という名前

池谷さん演じるのが【山鳥芽衣】という歯科医の女性。
髪が短くて、かなり男性的な発声だったので、男女どちらを演じているのか一瞬迷った。
その理由も、芽衣の生い立ちをすると頷けるし、池谷さんがこの役を演じる覚悟のようにも感じた(作中で説明があったわけじゃないし勝手な解釈だが)。

山鳥

という珍しい苗字だが、この名前は他の舞台でも使われている。

今年の5月にあったイキウメの公演「人魂を届けに」でも、篠井英介さん演じる森の奥に住む女性の名前も山鳥だった。

さらには、2021年の「外の道」では、山鳥芽衣という名の役を池谷のぶえさんが演じているのだ。

名前は一緒だが設定も家族構成も全然違う。
敢えて同じ名前にしたのは理由があるのか…?

気になる。

松雪さんが美しすぎて

舞台上の松雪さんは去年「世界は笑う」で拝見した。
その時もお美しくて、素敵だったけど、それ以上の感情はなかった。

だけど今回は、劇場のキャパ(シアターコクーンは遠すぎた)と座席位置もあってか、肉眼と肉声を拝めたとあって、その感動もひとしお。

「白鳥麗子でございます」から好きで、あの儚さと強さを兼ね備えた、最強の女優の1人だと思っている。

その素晴らしさが堪能できた。

声ぇええええ。好きぃ。

声が良いのよ。ほんと。

どちらかというと太めで重みのある声を出す池谷さんに対して、線は細くて不安定だが響きと音のキーがドンピシャな松雪さん。

この二人のやりとりはしびれたね。

元占い師で現カウンセラーという役もハマっていた。衣裳も真っ黒だけどデザイン性のあるスカートでもちろんお似合いで。もっと目の前で見たかったなぁ。浄化されました。

最後のカーテンコールも、ずっと見入ってしまった。
安井さんよりも(笑)

作品自体は重めだけど、笑いどころも多く作られていたし、それぞれの役者さんが本当に光っていた。
たった10人で、セットチェンジなしで、空間が常に埋まっていた。
目の保養になる作品でした。

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