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『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』を読む

本日は、木下紫乃『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP2020)の読書感想文です。

「昼スナック」紫乃ママに相談!

会社員時代、特に30代から40代前半までは、大量のビジネス書を購入して、せっせと読んできました。このような感じの本も、過去に数冊は読んでいると思います。

ビジネスの世界から距離を置くようになって以降は、ビジネス書を読む効用は、悩んだり、疲れたり、傷んだりしている心にビタミン注射をするようなもの、という結論に至り、買うことを極力控えていました。しかしながら、本書は、flierの書評を読んで、面白そうな本だという直感が働き、即amazonで注文しました。

著者の木下紫乃さんは、私と同じ1968年生まれです。慶應義塾大学卒業後、リクルートを皮切りに多数の転職、起業、週1回昼だけ営業する「スナックひきだし」の開店、三度の結婚(以上、本書プロフィールより)など人生経験が非常に豊富な方です。まさに「引き出し」の多い人とお見受けします。

著作は、本書が初だと思われますが、話題になった本です。読み始めると面白くて、一気に読了しました。私の本選びの直感は、まだまだ捨てたものではありません。(自画自賛)

どこに出しても恥ずかしい人生

本書は、スナックに訪れる仕事に悩みを抱えた客人とのやり取りをストーリーにした8編(Session)と5つのColumn、ワークシート、Bonus Sessionで構成されています。

紫乃ママが、相談に訪れた方々にかけていることばのチョイスが、どれも秀逸です。読み進めていくと、付箋だらけになってしまいました。なかでもあっけらかんとした「どこに出しても恥ずかしい人生」(Session6)という表現がとても気に入りました。

「どこに出しても恥ずかしくないツルツルピカピカの経歴」なんて、意外と面白くありません。遠目や傍目から「凄いね!」って言われたって、実際に手に取って、興味深くじっくり見てくれるとは限りません。

汚れないように、傷を作らないように、肩ひじ張って自分のキャリアを守ることで、腫物を触るように扱われる人生の方がつまらないかもしれません。たとえ、黒ずんで、何度も穴ぼこに落ちて傷だらけになっている人生でも、味わい深く感じるものです。

選んだ人生を正解にする

相談者の抱える悩みやモヤモヤが、私が数年前まで抱えていたものと似ているものが多かったので共感の嵐でした。紫乃ママが被せることばに何度も唸らされました。「そう、あの時こんな話をしたかったんだよなぁ」という妄想が膨らむ場面ばかりでした。紫乃ママは、相手に心理的安全性を与え、ガードを緩めたくなる雰囲気を作るのが上手なのだろうと推測します。

現代は、本の帯にあり、本文でも何度が引用されている

正しい選択、正しくない選択なんてない。やめた選択を「正解」にできるのは自分だけ

という表現が、しっくりくる時代だろうと思います。

正解と確信して選んだ道でも、時代の変化のスピードが速いので、自分の理想とはズレが起こるものです。仕方ありません。運命は自分の力だけで自由にコントロールができません。そのズレを直視せずに、現在と未来を犠牲に晒し続けるのは、精神衛生上よくないし、大変勿体無いことです。

行動の無い悩みは単なる妄想(P190)

という名言も発見しました。ズレや綻びを楽しめるタフさ、したたかさを持つ人ならば、大丈夫です。選んだ未来を正解にする生き方に馴染んでいきたいものです。

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