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子供の可能性を最大限に引き出そうとする小林先生の姿勢に感銘し、戦時中にも関わらず天真爛漫すぎるトットちゃんにほっこりした『映画 窓ぎわのトットちゃん』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:64/171
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:東宝
 上映時間:114分
 ジャンル:アニメ、伝記、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『窓ぎわのトットちゃん』(1981)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃん。新しく通うことになったトモエ学園の校長先生は、出会ったばかりのトットちゃんに優しく語りかけた。

「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」

トットちゃんの元気いっぱい、すべてが初めてだらけの日々が始まるーー

【感想】

原作小説は未読です。いえ、家にはあったと思うんですけどね。小学生の頃に夏休みの課題図書のひとつに入っていたため、母親が買ってきてくれた記憶があるんですが、興味がなかったので積読のまま30年以上が過ぎてしまいました。。。(笑)でも、映画自体はとても面白かったです!これはお子さんがいる家庭なら、ぜひ観ていただきたい作品ですね。

<トモエ学園という最高の環境>

かつて自由が丘に存在していたトモエ学園という学校が本作の舞台です。あまりにも問題児で前の小学校を退学させられたトットちゃんは、母親に連れられてそこの門を叩きます。使わなくなった電車の中を改装して教室にし、授業も一律の時間割はなく、生徒がやりたい順番で各々好きなことを学べる自由な環境が特徴的な学校です。それは校長である小林先生の教育方針によるものなんですね。「どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。それが大きくなる間に、いろいろな、まわりの環境とか、大人たちの影響で、スポイルされてしまう。だから、早く、この『いい性質』を見つけて、それをのばしていき、個性のある人間にしていこう」と(『窓ぎわのトットちゃん 新組版』(2015)より引用)。その手段のひとつとして、リトミック教育も積極的に取り入れていました。

<トットちゃんの人生を語る上で小林先生は絶対に外せない>

この映画はトットちゃんの日常を描いているので、一番目立つのはやっぱりトットちゃんなんですが、彼女を導いた小林先生も、むしろ個人的には彼の方が印象に残りました。この小林先生がね、素晴らしいんですよ。初めてトットちゃんに会ったとき、とにかく彼女の話を「全部」聞きましたから。おしゃべりなトットちゃんには話したいことがたくさんあります。でも、時間を気にすることなく、途中で遮ることなく、ネタが出尽くすまで徹底的に耳を傾けていました。さらに、実際の学校生活でもほとんど生徒の自主性に任せて、のびのびと育てていいます。だから、今でいう普通の生活になじめない子たちも、活き活きとしていました。小説のあとがきに目を通すと、トットちゃんのクラスメイトたちは、その後各方面で活躍されている方も多いようです。僕も小林先生のような方の下で学んでみたかったですね。子供を愛し、信頼する姿勢がずば抜けているんですよ。そういう方だから、終盤でトモエ学園が空襲によって焼き払われてしまっても、「次はどんな学校を創ろうか」と前向きでいられるんでしょう。

そんな小林先生がいたからこそ、トットちゃんも救われたと思います。彼女は底抜けの明るさとかわいい笑顔、そして誰よりも優しい心を持った子でとても愛くるしいけれど、あの個性的な性格は親目線でみるとなかなかに手を焼きそうなのも事実(笑)普通の生活だったらそのよさを引き出せないまま埋もれてしまったところを、小林先生との出会いとトモエ学園での生活が変えてくれました。

<平和が脅かされる戦時中の日本>

今回の物語のほとんどは、戦時中であることがウソのように牧歌的な学校生活と、アニメらしいファンタジーな表現があって、とても癒されます。ただ、時代は第二次世界大戦真っ只中。平和一辺倒ではなく、徐々に戦争の黒い影が忍び寄ってきて生活が一変していきますし、トットちゃんもペットのヒヨコやクラスメイトとの死別を経験するというネガティブな部分も描かれているので、平和なシーンとのギャップが強く見ごたえもありました。

<そんなわけで>

日本人ならぜひ観て損はない映画かなと思います。戦争中の話ではありますが、あまりそこに引きずられることなく、個性的な小さな女の子が成長していく姿を観るのは実に微笑ましいひとときでしたから。原作小説を読んでいなくても楽しめましたが、他のクラスメイトの描写が少ないので、本を読んでいた方が、「あのキャラクターはこれか!」という発見やエモさにはつながるのではないかと思います。

なお、唯一ツッコミたかったのがラスト。青森の疎開先へ向かう汽車の中で、トットちゃんが幼い弟を抱えて電車の扉を開け放ったのはさすがに危険すぎやしないかって思っちゃいました(笑)


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