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主人公のデブっぷりに圧倒されるけど、娘を想う父親としてのギャップが感動的だった『ザ・ホエール』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:31/55
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:The Whale
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配給:キノフィルムズ
 上映時間:117分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:舞台『ザ・ホエール』(2012)

【あらすじ】

恋人アランを亡くしたショックから、現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズ(ホン・チャウ)に頼っている。

そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリー(セイディー・シンク)との関係を修復しようと決意する。

ところが、家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた……。

【感想】

ポスターと中身のギャップが激しすぎる映画でした。子供がいる人が観ると、いろいろ思うところがあるかもしれない内容です。

<チャーリーを演じた俳優の姿にびっくり>

この映画でまず驚くのが、チャーリーの姿ですよ。僕も最初に予告で観たときは気づきませんでしたが、演じているのはまさかのブレンダン・フレイザーなんですよね。『ハムナプトラ』シリーズで主人公を演じた人ですよ!!もちろん、特殊メイクでああなってはいるんですけど、一時期リアルに激太りした写真も目にしていたから、ガチであそこで太ったのかと思いました(笑)特殊メイクによる変身シーンは以下で観ることができます。

本作では、もはや自立で歩くこともままならず、身のまわりにあるものはマジックハンドで取るような生活をする人物として描かれていますが、とにかくあの見た目のインパクトはヤバいですよね!見た目だけでなく、演技もよかったので、これは第95回アカデミー主演男優賞を受賞するのも納得です。

<娘を想う父親としての姿に感動>

そんな圧倒的に太ってしまったチャーリーが、長らく連絡が途絶えていた娘との関係を修復するというのがこの映画の目的です。なんで関係が崩れたのかといったら、これはもう10:0でチャーリーが悪いですね。妻子がありながらも、アランという恋人を作って家庭を捨てたわけですから。それが娘のエリーの人格形成にも影響を与えてしまいます。劇中でそこに対する謝罪がなかったのは、謝ってしまったらアランとの恋愛が悪いことだと認めてしまうことになるからでしょうね。いや、家族からしたら悪いことなんですが、チャーリーからしたらそれは素敵なことだったから、悪いことにはしたくなかったんじゃないかと思います。

とはいえ、チャーリーも罪の意識がなかったわけではなさそうなんですよ。エリーのことは常に気にかけていて、別れた妻に常々様子を確認していたようですし、実は物語の後半で"ある事実"も発覚します。ここが感動ポイントで、娘を持つ身としてはとても共感度が高いところでしたね。自分の命に代えてでも娘の幸せを願う父親の姿っていう、あの見た目からは想像できない優しさにギャップを感じました。さらに、娘の書いたエッセイにまつわるエピソードもすごく印象深かったです。"素直であること"こそ、その人の本当の姿であるというメッセージは刺さりますね。人としてどう生きていくかっていうことを伝える意味合いもこの映画には含まれているんだなと感じました。

<実は出てくる人が全員孤独>

また、よくよく考えるとこの映画、出てくる人全員が孤独を抱えていることがわかります。チャーリーはあんな見た目だから友達もいない上に、アランを追って家を出て行っちゃったために、家族にも見放されている状況です。娘のエリーは父親に捨てられたことで人間不信に陥り、学校にも友達がいません。チャーリーの面倒を見ているリズは、最愛の兄を亡くしてしまって。そして、布教活動にやってきたトーマス(タイ・シンプキンス)も、あることが理由で家族から追い出されていまい、行き場がないんですよ。事情は様々なんですが、みんな大切な人との絆が切れてしまっていることが共通していたかなって思いました。だからといって、そんな人たちが寄り添ってその穴を埋めていくっていう話ではないんですけど、お互いにほっとけないのは、やっぱり何かしらシンパシーを感じていたのかもしれません。このように、チャーリーとエリーだけでなく、他の登場人物にもそれぞれドラマがあるのもこの映画の面白いところです。

<そんなわけで>

ポスターから受ける印象とはまったく異なる父と娘の絆を描いたヒューマンドラマです。舞台がチャーリーの家からまったく変わらないので、動きの少ない画で淡々とした流れではあるんですけど、キャラクターがすごくよかったです。圧倒的なデブになってしまったブレンダン・フレイザーはもちろんのこと、実は娘役を演じたセイディー・シンクの演技も個人的にはいいなと思ったので、ぜひ注目してみてください。


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