【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位：80/82
　　ストーリー：★★☆☆☆
　キャラクター：★★★☆☆
　　　　　映像：★★★☆☆
　　　　　音楽：★★★☆☆
映画館で観たい：★★☆☆☆

【作品情報】

　　　原題：Aftersun
　　製作年：2022年
　　製作国：アメリカ
　　　配給：ハピネットファントム・スタジオ
　上映時間：101分
　ジャンル：ヒューマンドラマ
元ネタなど：なし

【あらすじ】

思春期真っ只中の11歳のソフィー（フランキー・コリオ）は、離れて暮らす若き父・カラム（ポール・メスカル）とトルコのひなびたリゾート地にやって来た。

輝く太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間を共にする。

20年後、カラムと同じ年齢になったソフィ（セリア・ロールソン・ホール）は、ローファイな映像の中に大好きだった父の、当時は知らなかった一面を見出してゆく……。

【感想】

予告から面白そうな映画だなと思ったんですけど、いざ観てみたらこれがまたポエム的な映画でして。某レビューサイトでは、ぶっ刺さるか無感情かのどちらかに分かれるなんて意見も目にしましたが、僕は完全に無感情でした（笑）

＜前に進んでいく話ではない＞

ストーリー自体はシンプルです。11歳のソフィーと30歳の父親カラムのバカンスの記録を、30歳になったソフィーが見返しているというもの。で、そのときの父親と同じ年齢になった娘が、当時は知らなかった父親の一面を見出すってあるじゃないですか。だから、僕はてっきりこのビデオに知られざるヒントが隠されていて、過去パートと現代パートを行ったり来たりしながら感動のヒューマンドラマに仕立て上げる構成なのかなと思ったんですよ（いや、お前の予想なんて知らんがなって話なんですけどw）。ところが、実際に蓋を開けてみたら、過去パートが99.9%で、現代パートは0.1%ぐらいの割合。なので、ただひたすら他人の思い出ビデオを見せられているだけだったんですよね（笑）だから前に進んでいくような話ではなく、むしろ時が止まったような話ですよ。そうは言っても「もしかしたら、現代パートに繋がるヒントが、過去の映像のどこかに紛れ込んでいるかもしれない」と思って、スクリーンを隈なく観てみるも、特段何もありませんでした。果たして、これは何の映画だったんでしょうか（笑）

＜観客に委ねる部分が多すぎる＞

劇中での説明が一切ないので、この父娘の置かれた状況に対して自信を持ってこうであると言い切れるところがないんですが、2人のセリフや仕草から、なんとなく想像はできます。カラムは妻と離婚して、娘の親権は妻にあるっぽいとか。離婚の原因はわからないけれど、DVや不貞行為といった感じではないっぽいとか。カラムはうつ病なのか、精神的に少し病んでいるっぽいとか。カラムは同性愛者の可能性があるっぽく、娘もそれに感づいているっぽいとか。まあ、どこまで行っても「っぽい」としか言えないんですけどね。だから何だっていう話ではあるんですけど、そういう状況の父娘の思い出ビデオですよってことです。

ただ、ここで気になるのは、おそらく撮ったビデオからは新しい発見は何もないんじゃないかということです。「父と同じ年齢になったソフィーが過去のビデオを見て、当時は知り得なかったことを見出す」ってことですが、肝心のビデオに何か映っているかというと、多分それはないんですよね。確かに、ソフィーの見えないところでカラムが苦しんでいるシーンはあるんですが、それは映画用のカメラで映しているだけで、ソフィーたちが撮ったビデオにはその光景は映っていませんから。とはいえ、この映画の中では描かれていないところで、ソフィーとカラム、または母親と何かしらのやり取りがあって、そのことを踏まえてソフィーがビデオを見返してみると、「きっとパパはこのときこう思ってたんだろうな」という想像ができるようになったっていうことなのかもしれません。いや、映画の外に出ちゃったらもうわからんじゃんって感じですけど（笑）

＜そんなわけで＞

かなり好みが分かれる映画だと思います。ポエム系の映画が好きな人には向いているのかもしれませんが、想像する余白が多すぎて、個人的にはあんまり読後感がよろしくなかったですね（笑）例えばですが、よくあるような「最後の生死はどうなったのか」っていう判断を観客に委ねるぐらいならいいんですが、こうもふわっとしているとスッキリしません。。。A24ってだけでいつも注目しちゃういますけど、僕の中ではA24はけっこう好き嫌い分かれますね。