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ヒエラルキーの逆転劇を目の当たりにして、今みんなが生きている社会でのポジションはあくまでも“暫定”であることを痛感した『逆転のトライアングル』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:19/27
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Triangle of Sadness
  製作年:2022年
  製作国:スウェーデン
   配給:ギャガ
 上映時間:147分
 ジャンル:コメディ、サバイバル
元ネタなど:なし

【あらすじ】

モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤ(チャールビ・ディーン)と、同じくモデルだが人気が落ち目のカール(ハリス・ディキンソン)。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。

船内はリッチでクセモノの乗客たちがバケーションを満喫している。そんな彼らをもてなすのは、客室乗務員の白人スタッフたち。旅の終わりに振舞われる高額チップを夢見ながら、乗客のどんな希望でも必ず叶えるプロフェッショナルだ。そして、船の下層階では、料理や清掃を担当する有色人種の裏方スタッフたちが働いている。

ある夜、船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態の中、人々の間には生き残りをかけた弱肉強食のヒエラルキーが生まれる。

そして、その頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった―。

【感想】

身を置く環境が一変したことで、それまであったヒエラルキーが真逆になってしまうという映画。まさにトランプの「大富豪」における“革命”のような設定がよかったです!

<地位とスキルが一致しない面白さ>

個人的に強く感じたのは、見出しにも書いた通り、今の世の中のヒエラルキーは“暫定”でしかないということです。

最初の舞台は豪華客船。そこには様々なセレブが乗っています。聞けば、有機肥料や兵器などで財を成した“超”がつくお金持ちしかいません。普通に生活していれば、彼らは何不自由なく、悠々自適に過ごすことができるでしょう。

それに警笛を鳴らすかのようなアクシデントを取り入れたのが本作です。嵐に見舞われた挙句、通りすがりの海賊に手榴弾を投げ込まれ、豪華客船は海の藻屑となりました。そこから運よく無人島に流れ着いた生存者たちを待ち受けていたのが、食べ物も水もスマホない大自然でのサバイバル。

生き残ったのは一部のスタッフと乗客たち。金でブイブイ言わせていたセレブたちですが、誰も食糧を獲れず、火さえ起こせません。富豪も実業家もクソの役にも立たないんです(笑)みんなかなりの財を築いた人たちなので、それなりの交渉術やビジネスセンスは持ち合わせていたのかもしれませんが、完全に無効化されてるところが面白いんですよね。

<逆にトップに踊り出たのがまさかのトイレ係>

そんな中、みんなのピンチを救ったのが、豪華客船でトイレ係をやっていた女性です。彼女はひとりで魚を捕まえ、火も起こせるというサバイバル能力抜群の強者でした。無人島において生き抜くためには彼女の力が必要不可欠であり、自らここのキャプテンであると言い張ります。船ではヒエラルキー的に最下層にいたであろう彼女が、サバイバルな環境においては、誰も生き残る術を持たないが故に、一気にトップになるんですよ。この逆転劇には爽快感さえありました。

<実はサバイバル下において役に立つ意外な要素>

資産も社会的地位もサバイバル能力とは何の関係もなく、身を置く環境ひとつ変えるだけで、今いるポジションさえ無意味になるいうのがこの映画のポイントですが、実は現実社会でもサバイバル下でも共通して役に立つ要素がひとつあったんです。
それが、“見た目のよさ”です。

あくまでも性別が異なる人々と集団で生活する前提ではありますが、そのような場合、人との関わりは避けて通れません。ですが、その集団における権力者に見た目のよさを気に入ってもらえたら、寵愛を受けれられるんですよね。個人的な繋がりを持つ代わりに守ってもらえるというように。そこが盲点だったので、気づいたときには「なるほどなあ」と感心してしまいました。金もビジネスセンスも大自然の中では無価値に等しいけれど、顔ってやっぱり大事ですね(笑)

<今年トップクラスの汚さ(笑)>

それにしてもこの映画、設定は面白いんですけど、とにかく尺が長いです。2時間半近くもありますから。てっきり、最初の30分ぐらいで無人島に着いて、そこから後はサバイバルを楽しむもんだと思っていましたが、実際は尺の半分を過ぎるまでは、豪華客船内の淡々としたシーンが続きます。もっとテンポよくできたらよかったのになあと思う部分もあるんですが、ちょうど半分あたり、船が嵐に見舞われるシーンがあまりにも衝撃的すぎて笑っちゃいました(笑)もうね、汚物の嵐なんですよ。嵐の真っ只中を進む豪華客船は、とにかくひどい揺れがずっと続くんです。それで乗客全員が重度の船酔い。あまりにも気持ち悪すぎたのか、上からも下からもバッシャバシャ出ちゃって、今年観た映画の中で一番汚いシーンでしたね。むしろ、よくそんなに吐けるなってぐらい吐いてて、もう笑うしかありませんでした(笑)

<どんなスキルも持っているに越したことはない>

本編とは関係ないのですが、この映画を観てふと思ったことがあります。それは、お金に余裕のある人の中には、家事の一切をアウトソーシングする人もいるんでしょうけど、そういう人たちはいざ自分でやるとなったら何もできないんだろうかということです。もし自分でやらざるを得ない状況に陥ったとき、どうするんだろうなってのは感じました。普段は使わなそうなスキルでも、ある程度は持ち合わせておいた方が、いかなる状況にも対処できそうだなとは思いました。

<そんなわけで>

当たり前だった自分のポジションがアクシデントによって一変しちゃうサバイバル映画ってことで、個人的には楽しめました。最後のオチはやや都合がいい気もしましたが、極限状態に陥った人々のやり取りは観ていて飽きませんね。

個人的には、例えばトイレ係の女性が客たちから虐げられた上で、その仕返しに今度は彼女が客たちをコキ使うようになるというスカッとする仕返しストーリーみたいなのが好きなんですが、この映画の話もこれはこれで面白いのでオススメです!


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