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子供にとって本当の家族とは決して生みの親とは限らない寂しさがあった『コット、はじまりの夏』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:12/12
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:An Cailin Ciuin(The Quiet Girl)
  製作年:2022年
  製作国:アイルランド
   配給:フラッグ
 上映時間:95分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『Foster』(2022)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中でひとり静かに暮らす9歳の少女コット(キャサリン・クリンチ)は、赤ちゃんが生まれるまでの夏休みを遠い親戚夫婦のキンセラ家のもとで過ごすことに。

寡黙なコットを優しく迎え入れるアイリン(キャリー・クロウリー)に髪を梳かしてもらったり、口下手で不器用ながら妻・アイリンを気遣うショーン(アンドリュー・ベネット)と子牛の世話を手伝ったり、2人の温かな愛情をたっぷりと受け、一つひとつの生活を丁寧に過ごしていくうち、はじめは戸惑っていたコットの心境にも変化が訪れる。

緑豊かな農場での暮らしに、今まで経験したことのなかった生きる喜びに包まれ、自分の居場所を見出すコット。いつしか本当の家族のようにかけがえのない時間を3人で重ねていく―。

【感想】

原作小説は未読です。各レビューサイトでの評点が高いので観てみたたのですが、結論から言いますと、すみません、個人的にはハマらずで。。。(笑)詩的な雰囲気の映画で淡々と話が進んでいくため、ドラマチックな展開が好きな身としては好みのジャンルではありませんでした。でも、ラストシーンは心が押し潰されそうになりましたね。

<家庭に恵まれないコット>

あらすじや予告だけだと、美しい情景はわかるものの、イマイチ話がつかみづらいですよね。まず、前提として主人公コットは家庭に居場所がないんですよ。虐待とまではいかないものの、ほぼネグレクトに近い状態です。もちろん、コットに問題があるわけではなく、両親がコットにあまり関心がない様子でした。なのに、新しく生まれる弟を含めて5人兄弟っぽいので、両親は何を考えて子供を生んでいるのか理解に苦しみますけど。ちなみに、他の兄弟も特別愛されているかと言うと、そういう感じでもないんですよね。。。父親はギャンブルにご執心で、母親は出産で忙しく、コットは親戚夫婦に預けられることになります。別にコットが問題児っていうわけではまったくないんですけど、おそらく一番年下であることと、あとはよく食べるから食費を浮かせる意味もあって預けたんだと推測されます(家庭自体は裕福ではなさそうなので)。

<昭和の日本のような牧歌的な日々>

そんな両親のもとで育ったからか、コットはとにかく大人しいんです。その上、大人の顔色を伺うところがあるので、最初に親戚夫婦の家に着いたときも警戒して心を開きませんでした。ここらへんが原題でもある『The Quiet Girl』たるゆえんなのでしょう(邦題もそれでいい気がしますがw)。それでも、アイリンはコットが家庭で居場所がないことを悟って常に優しく接し、ショーンも口下手で不器用ながらもコットと徐々に絆を深めていきます。優しい母親にちょっと取っつきづらい父親と、まるで昭和の日本のような家庭を観ているようでしたね。実は、アイリンとショーンには暗い過去があって、それゆえにコットに人一倍愛情を注げるっていうのも腑に落ちやすい設定です。

<コットの隠れた本心に感動>

無事に弟も生まれたので、最終的にコットは元の家に帰ることになり、アイリンとショーンに自宅まで送ってもらうんですが、家に着いたら着いたで相変わらずコットに対する両親の接し方は愛がないんですよ。そんなコットを不憫に思いながらも、アイリンたちは帰路に着くんですが、ラストシーンにおけるコットのあのセリフは、、、うん、マジで泣く人はメッチャ泣くと思いますね。。。自分は涙こそ出なかったものの、ここで号泣する人がいるのは痛いほどわかりました。彼女のあのセリフ、、、ああ、コットにとって家族と思えるのが誰だったのか、心が絞めつけられるようでした。後ろから実の父親が走ってやってくるところで物語は幕を閉じますが、あの後、父親は何て言ったでしょうか。きっとロクなことを言わないばかりか、下手したら手をあげていたかもわかりません。そんな解釈の余地を残す映画でした。

<そんなわけで>

淡々とした映画ではありますが、子を持つ親の目線でみると、我が子にはいっぱい愛情を注ごうと思える作品でした。コットを演じたキャサリン・クランチ、あれで公開時12歳だそうです。なので、撮影時はもっと若いですよね。なんというか、もう出で立ちが完成されてますよね。バッチリメイクして、顔だけ見せられたら、20代だと言われても気づかないかもしれません。それぐらいあどけなさと大人っぽさを併せ持つ強烈な魅力を持つ子役でした。


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