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愛国心と腐敗していく政治の間で葛藤する『KCIA 南山の部長たち』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:12/31
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が好きなら楽しめるかも】

韓国映画
サスペンス
アクション
史実
暗殺

【あらすじ】

1979年10月26日、大韓民国大統領直属の諜報機関である中央情報部(通称:KCIA)の部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が大統領を射殺した。大統領に次ぐ強大な権力と情報を握っていたとも言われるKCIAのトップがなぜ?

さかのぼること40日前、KCIA元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が、亡命先であるアメリカの下院議会聴聞会で、韓国大統領の腐敗を告発する証言を行った。さらには回顧録を執筆中だともいう。激怒した大統領に事態の収拾を命じられたキム部長は、アメリカに渡り、かつての友人でもある裏切り者ヨンガクに接触する。

それが、やがて自らの運命をも狂わせる哀しき暗闘の幕開けとも知らず…。

【感想】

あくまでもフィクションという体裁ではありますが、これは現代韓国史を知る上で、歴史的意義の大きい作品だと思います。なぜなら、この作品におけるパク大統領暗殺による影響もあって、その後の『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)と『1987、ある闘いの真実』(2017)にもつながっていきますから。僕は本作を含めたその3つを三部作と捉えてもいいと思っています。

さて、本作は独裁的な大統領による腐敗した政治を正すために"殺害"という手段を取った主人公がとても印象的です。大統領への忠誠や愛国心にあふれながらも、現状をよしとしない正義感の中で葛藤する彼を演じたイ・ビョンホンの演技は凄まじいですからね。決して感情を露にすることはないんですけど、表情や握りしめた拳などで内なる心の動きを表現していたのは圧巻でした。まさに、国のお役人の鑑とでも言いましょうか。

しかし、ひとりの力で巨大な力を動かすことはほぼ不可能に近く、かといって誰かに相談することもできないまさに八方塞がりな状態。それでいて、内部で敵対する人物も多い中で、あのような行動を取った背景には、彼の中にある愛国心や正義の心の強さがうかがえますね。

「とはいえ、殺しちゃダメでしょ」と言うのは簡単ですが、彼の国を想う気持ちがいかに大きかったかということに、少しでもいいから思いを馳せてみたいものです。まあ、なんだかんだで平和な今の日本にいるとなかなか難しいかもしれませんが。。。

そう、だから先に挙げた2作品と比べると、一般市民が絡んでこず、お偉いさんだけでわちゃわちゃしてる感じはあるんですよね。そこがイマイチ共感しづらい要因となっている気もするんですが、それを踏まえても見ごたえはあるかと。シリアスな内容ではありますが、さすが韓国映画、世界観というか雰囲気づくりは秀逸です。これは映画館で観ることをオススメします。

ちなみに、この映画を観るなら、先に挙げた『タクシー運転手 約束は海を越えて』と『1987、ある闘いの真実』もぜひ観ていただきたいです。どちらも民主化運動真っ只中の韓国を描いた作品ですが、一般市民が軍や警察に虐げられているシーンが多く、とても心が痛む反面、隣に国でどういうことがあったのかを知れるいい作品なので。

両方とも観て泣きましたよ、僕は。

日本だとこういう多くの民衆を巻き込んだ政治的な運動っていうのはなかなかないので、映画化もされませんよね。日本でそういう大規模なデモがあったのって、、、安保闘争ぐらいでしょうか。


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