見出し画像

結果を残せていないことに焦りを感じるジョナサン・ラーソンに共感しつつ、演じたアンドリュー・ガーフィールドのマルチっぷりに驚く『tick, tick... BOOM! : チック、チック...ブーン!』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:18/265
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★

【要素】

ミュージカル
自伝映画
ジョナサン・ラーソン

【元になった出来事や原作・過去作など】

・ミュージカル
 "tick, tick... BOOM!"(1990)

【あらすじ】

舞台は1990年のニューヨーク。ウェイターをしながら、アメリカのミュージカル界での大ブレイクを狙い、作品を創作中の若きミュージカル作曲家、ジョナサン・ラーソン(アンドリュー・ガーフィールド)。ブレイクのチャンスとなる公演を目前に控えたある日、ジョンはさまざまな要因によるプレッシャーで焦りを感じていた。

ニューヨークを出て、芸術活動を広げることを夢見る恋人のスーザン(アレクサンドラ・シップ)、夢をあきらめて経済的な安定を追い求める友人のマイケル(ロビン・デ・ヘスス)、さらにはエイズのまん延で破滅的な影響を受ける芸術界。

残された時間で一体何をすべきなのか?刻一刻と期限を迫られる思いのジョンは、人生の岐路に立たされ、誰もが避けられない問いにぶつかる。

【感想】

ジョナサン・ラーソンという人物をご存知でしょうか。あの有名なミュージカル『レント』の生みの親ですね。本作は、彼の自伝的ミュージカルである"tick, tick... BOOM!"を映画化したものです。ネトフリでも配信していますが、これは映画館で観て欲しいですね(2021年12月15日で都内の上映は終了でしたが)。

<共感できるジョンの姿>

ジョナサン・ローランは恵まれた才能の持ち主ではありますが、30歳を目前に控えて焦っています。なぜなら、様々なミュージカルの楽曲を手掛けたスティーヴン・ソンドハイムやビートルズのメンバーは、その年頃にはもう成功を収めていたから。彼らと比較して、自分はまだ何もできていないことに焦りと苛立ちを感じているんですよ。この気持ちはよくわかりますね。決して競争するものではないけれど、仕事でもスポーツでも、やっぱり他人の成功を見てしまうと、「自分は何をやっているんだろう」って思うことはありますから。特に、仕事なんかだと30歳前後の人なら共感しやすいんじゃないでしょうか。才能ある人物と言えど、行き詰っていた頃があることに親近感を覚えます。

<アスペっぽい性格>

とはいえ、そんなジョンもあれだけのミュージカルを生み出せるだけあって、その性格はなかなかのアスペと言いますか、作曲への没頭っぷりは半端じゃありません(笑)曲がどうしても書けなくて、他のことに手がつかず、電気代も払わなければ、恋人のスーザンの進路についてもほぼスルー。それにしびれを切らして口論になるものの、それすらも「歌にできないか」と考えてしまい、余計に彼女を怒らせる始末でした(笑)

<圧倒的な歌唱力>

劇中で使われる歌のほぼすべてはジョナサン・ラーソンが作ったものです。ミュージカル映画というだけあって、ソロからデュエット、大合唱まで、様々な歌が聴けるのは映画の『レント』(2005)と同様で面白いです。ただ、今回は映画館の音響設備がよかったこともあってか、より歌のクオリティが高く感じられました。特に、カレッサを演じたヴァネッサ・ハジェンズのパフォーマンスは圧巻です!声量がとんでもないんですが、ずっと笑顔で歌い続けられるところがすごいなって。彼女は歌手でもありますから、歌に関しては本業なんですよね。

<マルチすぎるアンドリュー・ガーフィールド>

でも、今回一番驚いたのは、ジョンを演じたアンドリュー・ガーフィールドです。『アメイジング・スパイダーマン』(2012)でスーパーヒーローもやりつつ、『ハクソー・リッジ』(2016)で戦争モノも出て、『沈黙 -サイレンス-』(2016)で神父も演じていて、かなり幅広い役を演じてきてますよね。それでいて、この映画では歌まで披露している上に、これがまたうまいってんだから、彼のマルチっぷりに驚きですよ。もともと舞台がキャリアのスタートだからこそ成せる業なんだろうなって思いました。

<その他>

ミュージカル映画好きな人は観て欲しい作品です。伝記的な映画って淡々としていることが多いんですが、これは歌と踊りがあるおかげで、メチャクチャ面白いエンターテインメントに仕上がってます!


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?