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子供の残酷さが超能力によってこれ以上ないほど不気味に描かれ、親目線で見るといたたまれない気持ちになる『イノセンツ』


【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:88/114
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:De uskyldige(The Innocents)
  製作年:2021年
  製作国:ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン合作
   配給:ロングライド
 上映時間:117分
 ジャンル:サイコスリラー
元ネタなど:漫画『童夢』(1980-1981)

【あらすじ】

緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少女イーダ(ラーケル・レノーラ・フレットゥム)と、自閉症で口のきけない姉のアナ(アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ)は、同じ団地に暮らすベン(サム・アシュラフ)、アイシャ(ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム)と親しくなる。ベンは手で触れることなく小さな物体を動かせる念動力、アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能力を秘めていた。

夏休み中の4人は大人の目が届かないところで、魔法のようなサイキック・パワーの強度を高めていく。しかし、遊びだった時間は次第にエスカレートし、取り返しのつかない狂気となり<衝撃の夏休み>に姿を変えていく─ 。

【感想】

元ネタはまさかの日本の漫画です。あの大友克洋先生の『童夢』。残念ながら電子書籍では配信されていないようなので漫画は読めていませんが、あらすじを見る限り、『AKIRA』(1988)を思わせる描写が多そうです。まあ、この映画自体はそんな派手さはないんですけどね(笑)

<親目線で観るとより一層怖い>

話としては、超能力を使える子供たちが、最初は遊びだったのに徐々にエスカレートしていって、最後には取り返しのつかない事態になってしまうというものです。この映画の印象的なところとしては、やっぱり子供のよくも悪くも素直な部分というか、加減を知らない怖さを描いているところだと思いました。そんな子供たちが、人智を超えた力を持っているとどういうことになるのか、子供がいる親の目線で見ると気が気でないです。

<ホラー映画よりも怖いと感じる理由>

超能力って憧れはありますが、いいことばかりではないかもしれません。アイシャの持つ読心術ならまだかわいい方で、むしろ自閉症で口のきけないアナとも意思疎通が図れる点において、素敵な側面を持つ能力だなと思います。まあ、ウソがつけなくなるので、いいことばかりではないと思いますが(劇中ではそういった描写はありませんでしたが)。問題は念動力を使えるベンです。物体を移動させるだけでなく、相手の身体に致命的なダメージを与えることもできちゃうんですよね。普通の喧嘩なら、お互いに体をぶつけ合うから、何をされたら自分が痛みを感じ、何をしたら相手を傷つけてしまうかを経験によって学ぶことができるので、そうやって他人との付き合い方を体得できますよね。ところが、念じるだけで人を傷つけることができるとなると、その痛みはなかなか自分ごととして捉えにくいんじゃないでしょうか。だから、ベンは自分がムカついたとき、一時の感情の高ぶりだけで、相手にやりすぎなぐらいの致命傷を負わせてしまうんじゃないかと。しかも、超能力について親は知らないから、誰かがしつけることもできないんですよ。ある意味、無法地帯と言えそうです。加減を知らない子供たちが、行きすぎた力を持つことで訪れる悲劇が生々しく描かれており、下手なホラーよりも怖いなと思いました。

<そんなわけで>

超能力が題材にはなっていますけど、描かれているのは子供同士の人間模様で、ファンタジーやSFな雰囲気はかなり少ないですね。空想系の話が好きな人には物足りないかもしれませんが、子供たちの残酷さがよく描かれている良作だと思いました。子役の子たちは幼いのによくあんな演技できるなと感心してしまうのも見どころのひとつです。


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