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女性を助けるためとはいえ、中絶が違法とされていた時代に無資格で中絶を行っちゃダメだろと複雑な気持ちになった『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:25/31
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Call Jane
  製作年:2022年
  製作国:プレシディオ
   配給:アメリカ
 上映時間:121分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:中絶を手助けしたとされる実在の団体「ジェーン」

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1968年、アメリカのシカゴ。
裕福な家の主婦として生きるジョイ(エリザベス・バンクス)は何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子供の妊娠によって心臓の病気が悪化してしまう。唯一の治療は、妊娠をやめることだと担当医に言われ中絶を申し出るが、中絶が法律的に許されていない時代、地元の病院の責任者である男性全員から「中絶は反対だ」と、あっさり拒否されてしまう。

そんな中、街で偶然「妊娠?助けが必要?ジェーンに電話を」という張り紙を見つけ、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。その後、ジョイは「ジェーン」の一員となり、自分と同じ立場で中絶が必要な女性たちを救うために立ち上がる!

【感想】

人工妊娠中絶にまつわる実話ベースの映画です。女性を救う活動という点においては賞賛したい気持ちはありますが、とはいえ素人が医療行為を行っていることに複雑な気持ちを抱く内容でしたね。

<主人公の生きづらさにやるせなくなる>

この映画、まず主人公ジョイの行き詰まり感に同情したくなります。彼女は2人目の子供を妊娠中に心臓の病気が悪化してしまうのですが、それを治療するには妊娠をあきらめる、つまり中絶するしか道がないというじゃないですか。なのに、当時のアメリカでは中絶は違法とされているため、誰も引き受けようとしない。中絶しないと母体は助からないのに誰もやってくれないって、、、それって死ねって言ってるようなものでは。。。そもそも、本当に中絶しか道がないのかっていうのも甚だ怪しい気もしたんですけどね。。。

<闇医者みたいなアンダーグラウンドな団体「ジェーン」>

そんなときに知った中絶サービスを提供する「ジェーン」という団体。ここでは、お金さえ払えば誰でも密かに中絶してくれるます。映画では600ドルでしたね。当時の日本円でいうと20万円ちょいって感じですが、果たして高いのか安いのか判断しづらいですね。ゴリゴリの営利団体っていうわけでもないですし、整った設備の中での施術ではありません。でも、高度な技術が必要される内容なので、、、う~ん、適正価格がわかりません(笑)

そこにはいろんな人が電話をかけてきます。避妊せずに望まない妊娠をしてしまった人やレイプされた人など、年齢や人種は問いません。ただ、お金を払えることが条件なので、それができない人はお断りをしていましたけど。そんな状況を目の当たりにして、メンバーの中にはもっと門戸を広げるべきだと主張し、正規料金で施術を受ける人を増やす代わりに、週2名まで無料枠を作ったりもするなど、恵まれない女性への支援にも力を入れていました。

そんな中、途中で問題が発覚します。施術を担当していた男性医師は、医師どころか医学部にも行っていないド素人だったのです。もともとそのニセ医者の手伝いをしていたジョイは、「そんな人でもできるなら自分にもできるのでは」と考え、なんと彼女が施術を引き継ぐことにします。以前、ニセ医者から「カボチャのタネをほじくりだす要領で」と言われいたこともあって、ジョイが家でカボチャを使って練習するシーンは滑稽でしたね。一時期、彼女の家には大量のパンプキンパイが作られていましたから(笑)

<女性の自由のために戦ったと言えば聞こえはいいけれど>

結果的に、「ジェーン」では数年の間に12,000人の女性を施術したそうです。しかも、死亡者はゼロ。選択肢が限られている女性のために戦った崇高な団体という見方もできなくはないですが、個人的にはちょっと受け入れがたかったですね。。。だって、リスクが大きすぎですよ。死人が出なかったのは本当にただ運がよかっただけじゃないですか。いつ人が死んでもおかしくない内容ですし、体内に傷がついて別の病気を発症する可能性だってあったわけですよね。普通の人はやろうとしなかったことをやり抜いたことで多くの人が助かったという事実は確かにありますけど、これはやっちゃいけないのではと思いました。でも、こういうのって資格があっても下手な人はいますし、資格がなくても上手い人もいるから、資格ってスキルの保証にはならないよなあとも感じます。

<そんなわけで>

設定自体は面白かったですし、こういう歴史があったことを知れる点においては有意義な映画だと思います。ただ、中絶というセンシティブな内容なのに妙にポップな雰囲気だったのと、患者と向き合う話よりかは、途中から中絶がルーティンみたいになって淡々としていたのは、個人的にはちょっと違和感ありましたね。


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