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吉岡里帆のアニメ制作に込める熱い想いと魂を揺さぶる演技がよかった『ハケンアニメ!』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:44/76
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ヒューマンドラマ
アニメ制作

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 辻村深月『ハケンアニメ!』(2014)

【あらすじ】

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した斎藤瞳(吉岡里帆)。だが、気合いが空回りして制作現場には早くも暗雲が…。

瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城理(柄本佑)は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」と思うものの、日本中に最高のアニメを届けたい気持ちは強い。そんなワケで目下大奮闘中。

最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督(中村倫也)の復帰作だ。王子復活に懸けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの有科香屋子(尾野真千子)。しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。

瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い“想い”をぶつけ合いながら “ハケン=覇権” を争う戦いを繰り広げる!

その勝負の行方は!?アニメの仕事人たちを待つのは栄冠か?果たして、瞳の想いは人々の胸に刺さるのか?

【感想】

アニメの制作現場におけるすったもんだを描いた映画でした。原作小説は未読ですが、テンポよく進んでいく観やすい内容でよかったです。

<働いている人に共感されそうな設定>

本作では2つのアニメの制作現場を並行して描いており、知られざるアニメ制作の裏側が垣間見えたりするんですが、そのどちらも胃がキリキリする気持ちになります。『サウンドバック 奏の石』では、モノ作り優先の瞳がビジネス優先の行城プロデューサーと反りが合わずストレスを感じるところに共感できました。『運命戦線リデルライト』では、こだわりの強い王子監督と放送局との間で板挟みになる有科プロデューサーの気苦労にまたまた共感できます。アニメを作る上で耳にする「あるある」を盛り込んではいるものの、自分の仕事を振り返ってみると、似たようなシチュエーションに思い当たる節がありまして。というか、これどんな場面でも起こりうる話だったりするわけで、社会に出て働いている人にはちょっと胃が痛く要素かもしれません。その分感情移入しやすくはあるんですけど。

<アニメに対する熱い想いはみんないっしょ>

でもね、そりゃ人間ですから考えていることに違いはあっても、最終的には「いいアニメを届けたい」という想いは同じなんですよね。特に監督2人のアニメに対する並々ならぬ想いが身に沁みますよ。王子がイベントで語った熱いアニメ愛。そんな彼に憧れて、公務員からアニメの世界に転職した瞳。特に瞳は、王子を超える監督になってアニメを作ることで、幼い頃の自分と同じような子供を救えると信じて日々精進しています。だから、行城に振り回されても、最悪名前すら覚えてもらえてなくても、今こうして監督という立場でアニメ制作ができていることがうれしいと語気を荒げて言うシーンは、吉岡里帆の迫真の演技も相まってとても印象的でしたね。

<コンテンツは現実を生き抜く元気を与えてくれる>

「アニメは魔法を超える力を与えることができる」と言うのは瞳のセリフですが、アニメに限らず、創作物って現実を生き抜く力を与えてくれますよね。僕にとってそれは映画だったりするんですが、面白い作品を観ると、「また明日もがんばって生きよう」って思わせてくれるんですよ。漫画だったりゲームだったり、それは人によって違うとは思いますけど、そういうコンテンツって現実を生き抜く元気を与えてくれるんですよね。そんなコンテンツを作り上げる人たちの生き様がビシビシ伝わってくるのが、この映画のいいところですし、2人の監督は自分自身がそれを実体験として得ているんですよ。だから、あそこまで強くアニメを作り続ける力があるんだと思いました。

ちょっと話は脱線してしまいますが、この作り出す勇気、作り続ける気力、どこから湧いてくるんでしょうね。アニメって小さい頃は観ている人も多いですし、それに影響されて将来はアニメを作りたいって思う人もたくさんいるはずです。でも、そう願っていてもそこに行きつけない人もいるじゃないですか。僕もアニメじゃないですけど、作りたいなあとは思ったものの、いざ始めようとすると、その作り出す気持ちが弱かったことを思い知りました。まあ、料理が好きな人も全員がシェフにならずに、食べることを専門にしている人もいますし、結局は好みというか嗜好の違いなだけなのかもしれないんですけどね。観ることと作ることは全然違いますから。

<そんなわけで>

アニメ制作の裏側を知ることができる興味深い映画です。劇中で使用されている2本のアニメも、最終回の数分ぐらいしかちゃんと流れないのに面白かったですし、人気声優さんも起用しているので、アニメ好きな人の方がより楽しめると思います。


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