見出し画像

葛飾北斎の生き様を描いた『HOKUSAI』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:85/96
   ストーリー:★★☆☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★☆☆☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
伝記映画
葛飾北斎
江戸時代
浮世絵

【あらすじ】

腕はいいが、食うことすらままならない生活を送っていた葛飾北斎(柳楽優弥)は、ある日、人気浮世絵版元(プロデューサー)の蔦屋重三郎(阿部寛)に目を付けられる。

しかし、絵を描くことの本質を捉えられていない北斎は、なかなか重三郎から認められない。さらには、喜多川歌麿(玉木宏)や東洲斎写楽(浦上晟周)など、ライバルたちにも完璧に打ちのめされ、先を越されてしまう。

“俺はなぜ絵を描いているんだ?何を描きたいんだ?”もがき苦しみ、生死の境まで行き着き、大自然の中で気づいた本当の自分らしさ。北斎は重三郎の後押しによって、遂に唯一無二の独創性を手にするのであった。

ある日、北斎は戯作者・柳亭種彦(永山瑛太)と運命的な出会いを果たす。武士でありながらご禁制の戯作を生み出し続ける種彦に共鳴し、2人はよきパートナーとなっていく。

70歳を迎えたある日、北斎は脳卒中で倒れ、命は助かったものの肝心の右手に痺れが残る。それでも、北斎は立ち止まらず、旅に出て冨嶽三十六景を描き上げるのだった。

そんな北斎のもとに、種彦が幕府に処分されたという訃報が入る。信念を貫き散った友のため、怒りに打ち震える北斎だったが、「こんな日だから、絵を描く」と筆をとり、その後も生涯、ひたすら絵を描き続ける。

描き続けた人生の先に、北斎が見つけた本当に大切なものとは…?

【感想】

んー。。。なーんか、淡々としすぎてて、全然入ってこなかったですね、この映画。。。(笑)邦画では珍しい文化人の伝記的な映画だと思って期待したんですけどね。

<葛飾北斎という人物>

葛飾北斎といえば、『富嶽三十六景』で有名な江戸時代の浮世絵師です。以下、ウィキペディアでサラッと見た情報ですが、アメリカの雑誌である『ライフ』が1999年に行った企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインした人物だそうですね。

厳密にいえば違うかもしれませんが、一般の感覚からすると、彼はいわゆるアスペそのもので、絵に対してはずば抜けた興味と集中を示すものの、それ以外には無頓着です。その証拠に家は汚く、衣類もみすぼらしい。茶すら自分では淹れず、人に対してもそっけない態度で、人に会っても一礼すらしたことはないそう。

画工料は通常の倍だったそうですが、お金はそこらへんに放っておいたため、米屋などが請求に来たら勝手に取っていくほどで、そのため貧しかったらしいですよ(笑)

<映画で描かれていた彼>

そんな人物ではあるんですが、映画でわかるのは「三度の飯よりも絵が好き」ということだけなんですよ。他の要素は、観ればまあそうだろうなと思うんですけど、大して触れられていないので、彼の要素はだいぶそぎ落とされていたんだなーって思いますね。なので、キャラクターとして印象に残るかというと、あんまり、、、って感じです。

まあ、基本絵ばっかり描いていたようなので、史実のままにしすぎると、物語として成立しないかもしれませんね。やはり、物語の魅力的な人物というのは、いかに他人と関わるか、ということかもしれません。

唯一、教訓になりそうだなと思ったのは、彼が大成した理由のひとつに、戦うフィールドを変えたってことが挙げられます。もともと人物画を書いていたんですが、それではライバルに勝てず、風景画を描いたことで今の地位を築いたので。もちろん、天才的な絵の才能があることが前提ですけど。

<表現の自由がない生きづらさ>

様々な絵師が存在した当時の時代背景は、今考えると恐ろしいですよね。浮世絵は当時の娯楽そのもの。それが「政に悪影響だ」と幕府から弾圧されるというのは、楽しみを奪われるようなものですよ。今だったら、国から漫画やアニメ、ゲームなどが規制されるもんでしょうか。

そんな表現の自由もへったくれもあったもんじゃない中、「ただ描きたい」という理由だけで、欲望の赴くまま筆を走らせた彼の強い想いは、むしろ尊敬と感謝の念を持って然るべきかと思います。彼が描き続けたからこそ、その後の画家に大きな影響を与えたし、そこから今の娯楽につながった部分もあるだろうから。

<総じて映画としてはいまひとつ>

人物としては偉大ですし、絵もすごいです。ただ、映画として観たときに、やや物足りないっていう印象はありますね。それは北斎のキャラクターが思った以上に普通だったことと、物語が淡々と進みすぎていたってのが大きいです。また、全部で四章立てになってるんですが、二章と三章で一気に40年も時が流れるので、ちょっと唐突すぎるんですよねー。これ、ナレーション入れたり、誰かの回想みたいな形で進めた方が、もっとわかりやすかったんじゃないかなーって思います。

でも、最初に書いた通り、こういう文化人の伝記映画って、邦画ではあまり観ないから、今後もっと増えて欲しいんですよね。黒澤明とか手塚治虫とか、観たいですよね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?