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人は罰を受けない限り永遠にハメを外し続けるんだなと思った『インフィニティ・プール』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:31/41
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Infinity Pool
  製作年:2023年
  製作国:カナダ・クロアチア・ハンガリー合作
   配給:トランスフォーマー
 上映時間:118分
 ジャンル:スリラー
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
高級リゾート地として知られる孤島を訪れたスランプ中の作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は、裕福な資産家の娘である妻のエム(クレオパトラ・コールマン)とともに、ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。

ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビ(ミア・ゴス)に話しかけられたジェームズは、彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。

それが悪夢の始まりになるとは知らずに……。

【感想】

予告に惹かれて鑑賞した世にも奇妙な設定のリゾート・スリラー映画。監督を務めたブランドン・クローネンバーグは、あのデヴィッド・クローネンバーグの息子。親子そろってホラーやスリラー映画を手がけているわけです。

<人間の負の部分をモロに映し出した映画>

この映画は、SFチックな設定を通じてある教訓を伝えてくれます。それは、「人は罰を受けない限りハメを外し続ける」というもの。予告を観ればおおまかな設定がわかります。舞台となる島の法律では、過失による事故でも人の命を奪った者は死刑になります。ただ、大金を払って自分のクローンを作り、それを死刑の身代わりにさせることができるんですね。実際にいくらかわからないのがちょっとモヤるところではありますが、いわば自分の命を金で買っているようなものですね。で、クローンが処刑された後は本人へのお咎めは一切なし。また元のリゾート生活を楽しんでいいのです。

夜道で現地の人をひき逃げをしてしまったジェームズは、クローンを作って事なきを得るものの、罪の意識に苛まれることになります。ところが、実は同じように死刑を免れた観光客が他にもいたんですよ。最初はとまどうジェームズでしたが、彼らといっしょにいるうちにだんだんと罪の意識が薄れてきたのか、今度は別の犯罪行為に手を染めます。それでまた捕まっちゃうんですけど、例のクローンによってお咎めなし。ジェームズたちはどんどん感覚が麻痺してきて、酒にドラッグに乱交にとやりたい放題の日々を過ごします。人は罰を受けないと永遠に堕ちていくというのを目の当たりにしたような気分でしたね。。。人としての正しさはいづこへ。。。

<やっぱりミア・ゴスのインパクトはデカい>

この連中の中で特に発言権が強いのがガビなんですが、彼女がまた強烈なキャラクターでした。演じたミア・ゴスは『X エックス』シリーズ(2022-)でもスプラッターな役どころだったから、なんかもうそういうイメージついちゃってますね(笑)今回もいろいろ体当たりな演技をかましてくるんですが、彼女が出てくるだけでインパクトが全然違うからすごいです。実際にああいうタイプの女性がいたら、相当距離を置いてしまいます、僕は(笑)

<問題を起こすのが観光客という構図>

しかも、この映画を観ていて気づいたのは、ガビたちってただの観光客なんですよね。「現地の人に自分たちが優位であることを見せつけてやろう」ってガビが言っちゃうぐらいですから、観光地で傍若無人に振る舞う白人たちっていう構図になってるんですよ。まあ、観光客ってその地域の人間じゃないから責任意識が低くなって、普段はしない失礼なことを平気でやるようになっちゃうっていうのは、別に白人に限らずどんな人種でも起こりうる話ではありますけれども。最後、休暇が終わったら何事もなかったかのようにしれっとしてるのにはちょっとイラつきましたね(笑)監督は何か意図があって、リゾート地を舞台に好き放題やらかす観光客を描いたんでしょうか。

<気になった点>

全体的にスリリングな展開で楽しめる映画でしたが、個人的には気になった点がふたつありました。ひとつは、結局なぜジェームズが巻き込まれたのかがよくわからかったことです。ガビは最初から目を付けていたようですが、その理由が謎でした。

もうひとつは、身代わりにされたクローンたちです。仕組みはわからないのですが、どうやら記憶も引き継がれるようなので、もう本人そのものと言っても過言ではないんですよね。下手したら、実は処刑されたのは本人で、生き残っているのがクローンかもしれません。そんなセリフもあったんですけど、「悪い冗談はやめて」みたいに軽く受け流されてしまってそれっきりだったので、もし続編があるならここらへん掘れそうですよね。

<そんなわけで>

けっこう好みが分かれる内容だとは思いますけど、個人的には面白かったです。ジェームズを演じたアレクサンダー・スカルスガルドは、あのステラン・スカルスガルドの長男ですが、顔や雰囲気、声のトーンがお父さんに似ているのも注目ポイントです(笑)


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