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マフィアというより経済感覚に秀でたビジネスマンだったマイヤー・ランスキーの半生を描いた『ギャング・オブ・アメリカ』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:17/31
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

伝記映画
犯罪映画
サスペンス
マフィア

【原作・過去作、元になった出来事】

・人物(マフィア)
 マイヤー・ランスキー(1902-1983)

【あらすじ】

1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーン(サム・ワーシントン)は、伝説的マフィアであるマイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル)の伝記を書くことになる。出された条件は、「俺が生きているうちは、誰にも読ませるな」ということ。

インタビューが始まり、ランスキーは自らの人生を赤裸々に語り出す。それは、半世紀以上におよぶ、ギャングたちの壮絶な抗争の記録だった。貧しい幼少時代、ラッキー・ルチアーノと出会い、やがて殺し屋集団《マーダー・インク》を組織し、ついにはアル・カポネやフランク・コステロと肩を並べる存在まで上りつめ、巨万の富を築いたランスキー。

インタビューが終わりに近づいた頃、ストーンはFBIが3億ドルともいわれるランスキーの巨額資産を捜査していることに気づく。捜査協力を強いられたストーンは、ある“決断”を下すことになるが……。

【感想】

実在したマフィア、マイヤー・ランスキーの半生を描いた伝記映画です。僕は初めて知った人物ですが、マフィアの中では有名だそう。ちなみに、このマイヤー・ランスキーを題材にした映画は過去にもいくつか出ています。予習のために観ようかとも思ったんですが、今では手に入りづらいものもあり、過去作は結局観ませんでした。

モブスターズ/青春の群像』(1991)
バグジー』(1991)
ランスキー アメリカが最も恐れた男』(1999)

<マフィアというよりビジネスマン>

マフィアと聞いてどんな人物を想像しますかね。ドラッグを売りさばき、ドンパチやって、人を殺すことに何の躊躇もない。僕はそんなところですけど(笑)

マイヤー・ランスキーもマフィアなので、作中では直接手を下しはしないものの、怖い面はあります。でも、実際の彼は身長160cm前後と小柄だったようで、腕っぷしで勝負するタイプではなく、完全に頭脳派なんですよ。とにかく数字に強く、経済感覚に秀でており、いかに利益を上げるかをよく考えていました。映画では触れられていませんが、少年時代に満足な教育を受けられなかったことにコンプレックスがあったらしく、生涯読書家だったという一面も。

そんな彼は、カジノ経営で成功していました。その手腕を見込まれ、キューバでもカジノ建設に携わり、莫大な売上を生んだとのこと。アメリカでは犯罪者でも、キューバでは要人扱いっていうのがすごいところです。

また、それまでは金を貸した相手に返済能力がなくなったら、ゴロツキを派遣して殺しちゃうのが常でした。でも、それだと結局貸した金は戻ってこないまま。そこでランスキーは、ゴロツキの代わりに会計士を派遣し、数字を学ばせて利益を出す方法を教えました。こっちの方がはるかに回収しやすいですよね。マフィアではありますが、やってることはまさに財務専門のビジネスマンといったところでした。

<黒でも白でもなくグレーな世の中>


当然、足はつかないようにしてはいますが、彼もれっきとした犯罪者です。そこは疑いようのない"黒"ですね。でも、彼の起こした賭博産業は年間2,500億ドルも売り上げ、200万人の雇用を生んでいます。この経済効果だけを見れば、"白"と言えなくもないんじゃないでしょうか。まあ賭博なんでね、それだけ人生を破綻させている人を増やしていることにはなると思いますが。

しかも、彼は夫でもあり父でもあったんですよ。仕事ばかりしていて、妻からは愛想を尽かされていましたけど、自ら事業を起こし、拡大させていく姿がかっこよかったのか、長男からは尊敬されていましたね。

ただのマフィアといっても、彼の事業や実績、家族との関わりを考えると、一概に白黒はっきりつけられないなと思います。それこそ、本人も言っていましたが、「この世は黒でも白でもなく、グレーの濃淡で決まる」というのは、なんと説得力があるんだろうと。確かに褒められたことばかりではないですけど、彼の持つすべての要素を色で表すならば、黒に近いグレーといったところでしょうか。

<残された謎>

そんなランスキーなので、さぞ莫大な資産を築いていると思うでしょう。噂では3億ドルもあったとか。ところが、現在に至るまでそんな資産は見つかっていないんですよ。映画では描かれていないんですけど、いろいろ調べていくと、むしろお金には困っていたようなんです。例えば、彼の長男は身体に障害を持っており、養護施設に入れていたそうなんですけど、そこの医療費すら支払いがままならず、安いところに移っているんです。でも、結局そこも追い出されてしまい、長男は貧窮のうちに亡くなってしまったとか。だから、メディアが騒いでいる3億ドルの資産なんてものは、彼の身内からしたらちゃんちゃらおかしいデマでしかないと考えているようです。

<そんなわけで>

マフィア映画ではありますが、実際にはビジネス映画の要素もあって、個人的には楽しめました。アクション要素はないですが、暗いサスペンス映画が好きな人には向いているかもしれません。

ちなみに、ランスキーの孫が「マフィアグッズ専門店 Japan Meyer Lansky」を展開しているそうです。ホンマかいなって気もしますけど、興味あれば覗いてみてください(笑)


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