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普通になりたかった主人公が唯一したことがただの不倫という結局普通じゃないことで笑った『暗殺の森』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:17/18
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Il conformista
  製作年:1970年
  製作国:イタリア・フランス・西ドイツ合作
   配給:コピアポア・フィルム
 上映時間:110分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
第二次大戦前夜のローマ。哲学講師でファシストのマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、パリに亡命したクアドリ教授(エンツォ・タラシオ)の身辺調査を依頼される。クアドリは大学時代の恩師であり、反ファシズム運動の精神的支柱だった。

マルチェロは婚約者ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と共にパリに赴き、クアドリと彼の魅力的な若妻アンナ(ドミニク・サンダ)に接近する。だが、組織からクアドリを暗殺せよという新たな指令が下った。

【感想】

午前十時の映画祭13」にて。1970年のイタリア・フランス・西ドイツ合作映画。日本に初めて紹介されたベルナルド・ベルトルッチ監督作品であり、ドミニク・サンダが日本において人気女優になるきっかけとなった作品らしいですね。確かにドミニク・サンダは美しかった。。。

<フィクションの世界において普通を求める稀有な主人公>

肝心の内容なんですが、個人的にはなかなか滑稽な話に思えました。これ、突き詰めればいろいろ示唆に富むんでしょうが、見え方としては結局マルチェロが不倫しただけなので(笑)彼はとにかく"普通"を求める男でした。多くの人がみんなと違っていたいと思う中で、彼は同じになりたがっていたんです。なぜかといえば、それは彼が13歳のときに経験した出来事が関係しています。当時のマルチェロは同性愛者の青年リーノ(ピエール・クレマンティ)に襲われ、抵抗する中で射殺してしまうんですよ。そのことがトラウマとなり、特別でない自分を取り戻そうとしているんですね。その手段として、当時の"普通(=多くの人がやること)"であったファシズムの受け入れや中産階級の女性と結婚を決めたんです。価値観が多様化した現代の感覚からすれば、「普通になるために選ぶのがそれかよ」って感じではありますが、劇中の舞台は1938年、今以上に画一的な価値観が蔓延していたと思われる時代です。

<恩師の妻とのあれやこれや>

そんなとき、マルチェロは反ファシズム運動の精神的支柱であるクアドリ教授の身辺調査を依頼され、妻と共に彼の元へ行きます。大学時代の恩師ということですが、卒業以来会っていなそうな中で、さすがに突然すぎる連絡だと思いますし、政治情勢的に怪しさしかないと思うんですけどね、、、よく教授も訪問をOKしたなって。そこで教授の若妻アンナ(教授とは親子ほど歳が離れているっぽく、公開当時のドミニク・サンダはなんと19歳)と出会うんですが、もう会ったその日にイチャつくんですよ。別に面識はありません。強いて言えば、マルチェロはアンナににた娼婦を見たっていう話をするんですが、そんなこと話したところで「ふーん」ですよね、普通は。いや、むしろ失礼に当たるかもしれません。にも関わらず、マルチェロはアンナに心奪われていますし、アンナもなんかすごく誘ってくる表情や仕草をするんですよ。何なんですかね。久しぶりに若いイケメンが来てメスとして反応したんでしょうか。いやー、イケメンと美女の成せる業ってのは昔から変わらないんだなとしみじみ思いましたね(笑)

<薄情なマルチェロ>

やがて、マルチェロのミッションがクアドリ教授の身辺調査から暗殺へと変わります。クアドリ教授とアンナが車で別荘へ向かう道中、待ち伏せしていた暗殺実行部隊によって教授はメッタ刺し。いっしょにいたアンナは、事の一部始終を見届けるために後をつけていたマルチェロに助けを求めるものの、マルチェロが何にもしないんですよ。かばうこともしなければ、自分で手を下すこともしない。ただ泣き叫ぶ彼女をじっと見つめるのみで、彼女がどうなろうが、何かをする気配がまったくありませんでしたね。まあ、あそこで変に助けに入っても自分の立場が危うくなるだけでしょうし、かといって自ら手を下すにはアンナに気持ちが入っちゃっていますし、実際には動けない状況ではあったと思うんですけど。それに、ただでさえ普通になりたいっていう想いがあるので、マルチェロが何かする理由はないですよね。映画の登場人物として魅力的かと言われたらまったくそんなことはないですけど(笑)

ラストはもうマルチェロのこれまでの人生を全否定するかのような終わり方で、なんか「ご愁傷様」って感じでした。ただただ不運としか言いようがない。。。そうなると、今回マルチェロがやったことって、人妻とチュッチュしただけなんじゃないかっていう。。。(笑)

<そんなわけで>

すごく雑に言えば、ノーリスクで綺麗な人妻とイチャついた男の物語っていう映画でしたね。マルチェロはマルチェロで抱えているものがあり、普通になりたいけどなれない男の末路っていうオシャレな言い方もできるんですけど、結局不倫にしか目がいきませんでした(笑)


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