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父と娘の絆を描いているはずなのに、父親がひどすぎてまったく絆が感じられなかった『フラッグ・デイ 父を想う日』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:174/198
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

   原題:Flag Day
  製作年:2021年
  製作国:アメリカ
   配給:ショウゲート
 上映時間:112分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:回顧録『Flim-Flam Man: A True Family History』(2004)

【あらすじ】

1992年、全米にショッキングなニュースが流れる。アメリカ最大級の贋札事件の犯人であるジョン(ショーン・ペン)が、裁判を前にして逃亡したのだ。

彼にはジェニファー(ディラン・ペン)という娘がいた。父の犯罪の顛末を聞いたジェニファーは、こうつぶやく──「私は父が大好き」。

史上最高額の贋札を非常に高度な技術で偽造したジョンとは、一体どんな男だったのか?父の素顔を知っても愛情は変わらなかった娘との関係とは?ジェニファーが幼い頃から「平凡な日々を見違えるほど驚きの瞬間に変えた」父との思い出は宝物のように貴く、だからこそ切ない日々が紐解かれていく──。

【感想】

アメリカで実際に起こった贋札事件を題材に、父と娘のやり取りを描いたヒューマンドラマでした。さぞかし泣ける感動ストーリーなんだろうなと思いきや、、、正直ちょっと拍子抜けしてしまう内容でしたね。

<父は娘を愛していたのか>

犯罪者の父ジョンと、そんな父が大好きだった娘ジェニファー。設定からして感動しそうではあるんですが、そうならなかったのは、父親がクズだった以上に、娘と向き合っていなかったからじゃないかと思いました。いや、彼なりに娘たちを愛してはいたのかもしれません。実際にかなりかわいがっている様子でしたし。でも、結局は表面的な愛情だったんじゃないですかねえ。

そう思う理由は、ジョンの自分勝手さにあります。彼は平気でウソをつくような人でした。自分は起業家で手広く事業を手掛けていると言ったり。仕事がないのに「仕事が決まった!」と言ったり。とにかく口から出まかせを言う人なんですよ。おそらく、ジョンは人生の優先順位として、家族が一番ではなかったんじゃないかと僕は思います。彼が生まれたフラッグ・デイというのは、アメリカの国旗制定記念日のことらしいですね。そんな日に生まれたもんだから、「自分は生まれながらにして祝福されていると感じ、特別な存在として成功する当然の権利があると信じていた」と公式サイトにも記載があります。根拠なしに「自分は何かすごい人なんだ」と思い込み、それゆえに自分の人生にしか興味がない人だったんじゃないでしょうか。

でも、実際に何かすごいことができるわけではありません。だから、口から出まかせだけを言っては、自分の特別感を肯定していたのでしょう。そんな姿が、娘には眩しく映っていたのかもしれません。まあ、実際に家族を大切に想っていたかどうかは本人にしかわかりませんが、映画を観る限りでは、家族への愛よりも、自分の目先のことだけしか見えていない印象でした。

<娘は父を愛していたのか>

一方の娘はどうでなんでしょう。小さい頃は父親のことが好きだったのはよくわかります。また、高校生ぐらいになってからも、家出をして父親の家に行くぐらいには、彼のことを信頼していたんでしょう。娘は娘で不遇な環境にいますが、一念発起してジャーナリストとして活躍することになります。大人になった彼女はいろいろ分別がつくようになり、ウソばかりつく父親に愛想を尽かすこともありました。そりゃ、「人は変われる」なんて言いながらも、結局自分は1mmも変わっていませんでしたからね。それっぽいことを言うだけで、中身がまったく伴っていない空虚な人間が、いくら父親とて、ひとりの人間として信頼に値しなかったんでしょう。

とはいえ、そんな父親でも、幼い頃にたくさんの思い出をもらった娘からしたら、やっぱり憎むに憎めませんよね。いくら愛想を尽かしたとはいえ、心の中では父親を信じたい気持ちがずっと残っていたんじゃないかと思います。それは最後の彼女の言動を見れば一目瞭然。何だかんだで、娘は父のこと好きだったんだと思いますよ。まあ、第三者から見れば、親子の絆なんてあったもんじゃなく、ただただ父親に振り回されてばかりで不憫にしか思いませんでしたけど。

<そんなわけで>

自分勝手な父親のクズエピソードをずっと観ているだけの映画でしたね(笑)いや、これでね、「父親の行動の裏に隠された真意に全米が泣いた!」とかっていう話なら、もっと楽しめたかもしれませんけど(笑)ただ、どんな人物であれ、生みの父親はこの世にひとりしかいないわけで、娘の中にある複雑な想いを考えると、自分も子供には誠実であろうと思いますね。

ちなみに、今回の父親と子供たち、実の親子なんですよね。ショーン・ペンと娘のディラン・ペン、そして息子のホッパー・ペン。なかなか興味深いキャスティングだと思いました。


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