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『となりのトトロ』にも影響を与え、当時のスペイン情勢を揶揄したけれど、伝わらなさすぎた映画『ミツバチのささやき』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:14/14
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:El espiritu de la colmena
  製作年:1973年
  製作国:スペイン
   配給:アイ・ヴィー・シー
 上映時間:99分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

1940年、内戦終結後のスペイン。小さな村に映画の巡回上映がやって来た。
6才の少女アナ(アナ・トレント)は、姉のイサベル(イサベル・テリェリア)といっしょに『フランケンシュタイン』を観て、すっかり心奪われてしまう。アナは、姉からフランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、村はずれの一軒家に隠れていると聞かされる。

ある夜、村の郊外で脱走兵らしき男が列車から飛び降りると、その村はずれの一軒家に逃げ込んだ。翌日、一軒家にやって来たアナはその男と出会うがーー。

【感想】

午前自由時の映画祭13」にて。1973年のスペイン映画。詩的要素が強すぎてよくわからず、正直個人的にはハマらない映画でしたね。。。(笑)

<主人公アナはかわいいが、全体的に平坦なお話>

この映画、『フランケインシュタイン』(1931)に魅せられた少女アナの日常を描いた、とても淡々とした内容です。姉のイサベルから、「フランケンシュタインは精霊で、村はずれの一軒家に住んでいる」と言われて、それを信じてしまうぐらいアナは純朴。しかも、実際にその一軒家に通ってはフランケンシュタインがいないかを確認するぐらい好奇心旺盛でもあります。かわいい、確かにかわいい。子を持つ親ならそのかわいさだけでも十分にこの映画を観る価値があると思うかもしれません。途中、脱走兵がその一軒家に身を潜めるのですが、アナからしたら彼がフランケンシュタインだと思っていたかもわからないですね。

ただ、そういうちょっとしたハプニングはあるものの、基本的にはそんなアナの何気ない日常が続くだけで、彼女に何か成し遂げたいことがあるわけでも、倒すべき敵がいるわけでもありません。この抑揚のないストーリー展開は、一見するとただ退屈なだけの作品に映ります。

<歴史的背景がこの作風にさせた>

でも、そのような作風になってしまったのには、どうやらきちんとした理由があるようなんですよ。それは、この映画が作られた時代が大きく関係しているみたいです。舞台となった1940年はスペイン内戦が終わった直後で、フランコ総統が独裁を敷いていた時代です。映画が公開された1973年はその独裁も終わりに近づいてきた頃ですが、かといって政権を批判することなどはできませんでした。だから、当時の芸術家たちはあの手この手で政府批判の検閲を逃れる方法を模索していたんです。

そのひとつの形が、この映画のようにまったく政治とは関係ないところで象徴を作り、密かに政治批判のメッセージ性を持たせたらしいです。例えば、アナの両親は仲が冷え切っているのだけど、それはスペイン内戦によって国内が分裂していることを表していたりとか。村はずれの一軒家のまわりの荒れ果てた風景は、フランコ政権成立当初のスペインの孤立感を表していたりとか。まあ、全部受け売りなんですけど(笑)そういう事情を知って観るのと、知らないで観るのとでは、かなり受け取り方が異なる気がしますね。僕は映画を観た時点ではそんな情報を知らなかったので、何も面白みを感じることもなく終わってしまったのですが。。。というか、普通そんなことわからないだろって(笑)アナの母親が誰かに手紙を書いているくだりとか、それが身内なのか、不倫相手なのかもわかりません。この映画から得られる情報だけじゃ、すべてが腑に落ちるというのが難しいんですよね。だから、これはもう映画というより、単に政権批判のメッセージ映像なんじゃないかとさえ思いました。

ちなみに、『フランケインシュタイン』も引用されているんですが、正直この映画である意味はあんまりなかったように感じます。僕はこの映画のために『フランケインシュタイン』も観たんですけど、あんまり本作とリンクしているようには思えなかったんですよ。いや、本当は意味があって僕のリテラシーが低くて気づけなかっただけかもしれませんけど(笑)

<そんなわけで>

かなり詩的な雰囲気が強く、暗喩の多い作品なので、好き嫌いはあるかもしれないなーと思う映画でした。なお、姉妹がメインなのと、精霊を追いかけるっていうところが、『となりのトトロ』(1988)に影響を与えたとか与えていないとか。僕はまったく結びつきませんでしたけど(笑)


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