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女子高生が刺して撃って殴って蹴る、日本のアクション映画の歴史を変えた『ベイビーわるきゅーれ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:22/226
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★★

【要素】

アクション
女子高生
殺し屋
ヤクザ

【元になった出来事や原作・過去作など】

なし

【あらすじ】

女子高生殺し屋2人組のちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)は、高校卒業を前に途方に暮れていた。明日から“オモテの顔”としての“社会人”にならなければならない。

組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。突然社会に適合せざるを得なくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど、社会の公的業務や人間関係など、理不尽な日々に揉まれていく。

さらに、2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。それでも殺し屋の仕事は続き、しかもヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃって、さあ大変。

そんな日々を送る2人が、「ああ、大人になるってこういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語。

【感想】

世間で話題になっててずっと気になってた映画、ようやく観れましたー!7月30日公開だったけど、異例のロングラン上映で助かりました。いやこれ、想像以上に面白いですよ?!この映画は次の3つの点で、ものすごく秀逸な作品だと思いました。

<女子高生×殺し屋というギャップ>

もしも、女子高生が殺し屋だったら……?そんな妄想の世界を見事に現実に落とし込んだのがこの映画です。

そもそも女子高生っていうのは、何をやってもギャップになる神がかった存在ですよね。女子高生起業家でも、女子高生探検家でも、他の誰がやるよりも目を引きます(なんで女子高生だけこんなパワーがあるのかはいつも不思議なので、いつかちゃんと考えてみたいですけど)。

それが、今回は殺し屋です。洋画やアニメならまだしも、邦画の実写ではありそうでなかったんじゃないですかね。それも、世界観がファンタジーなどの非現実な設定ならともかく、舞台はあくまでも現実の日本。彼女らはバイトの面接も受けるし、メイドカフェで萌え萌えキュンもやる。

そんな中で、ちさととまひろの女子高生らしいセリフやけだるさ感が妙にリアルで日常を感じるんですよ。その一方で、殺し屋として人を刺して撃って殴って蹴るという非日常があるので、そのバランスがものすごく心地いいんですよね。やっぱり面白い物語にはギャップがつきものですね。

ただ、割とすぐに女子高生は卒業しちゃうので、どうせなら学園生活を挟みながらの殺し屋稼業も観てみたかったですけど。

あと、ちさとがちくわをくわえてるシーンがあるんですが、元ネタがわかる人は笑えるかもしれません。演じた髙石あかりは『鬼滅の刃』の舞台で禰󠄀豆子役だったそうなので(笑)

<ヤクザ×メイドカフェというギャップ>

もしも、ヤクザがメイドカフェに行ったら……?そんな妄想の再現もメチャクチャ面白かったです。

ヤクザの浜岡一平(本宮泰風)と浜岡かずき(うえきやサトシ)は、新たなシノギを探してメイドカフェを訪問。極道の世界に生きる彼らが、頭の中お花畑のメイドカフェにいるっていうだけで笑えるのに、そこで言葉にするのも恥ずかしいメニューを頼み、メイドといっしょに萌え萌えキュンまでしちゃうところが最高におかしくて。

何がそこまでツボるかと言ったら、これを「芸能界喧嘩最強の男」とされる本宮泰風さんがやっちゃうギャップなんですよ。いつも悪い役が多い彼が、そこまでするんだっていうところに笑いました(笑)

<日本のアクション映画を変えるアクション>

そして、何と言ってもこの映画の最大のウリはバトルシーンですよ!特に、冒頭のコンビニでの戦いと、最後のカチコミは本当に圧巻です!!個人的には『ファブル 殺さない殺し屋』以上のすごさだと思いましたし、『るろうに剣心 最終章 The Final』に匹敵するぐらいの興奮っぷりでした!!その目にも止まらぬ速さでの技の連続に、「邦画のアクションもここまでやれるんだ!」と驚きましたね。あのスピード感は往年のジャッキー・チェンの映画を彷彿とさせます。監督のインタビューによると、最後の格闘シーンは、「映画の殺陣にはない"実戦の間合い"」らしくて。。。

でも、これはやっぱりまひろ役を演じた伊澤彩織さんご本人がスタントパフォーマーだってのも大きいと思うんですよ。普段アクションをやっていない女優さんが撮影のためにちょっと特訓して、多くのシーンはスタントダブルに任せるっていうのとは違うのではないでしょうか。

中国や香港のカンフー映画だって、ジャッキー・チェンやドニー・イェンは
役者であると同時に武術家でもあるから、本格的なアクション映画になると僕は思っています。やっぱりその道のプロがやった方が映えますよね。

<その他>

あと、これはそこまで本編の話には関係ないのですが、タイトルにも使われているからか、本作のBGMにはちょいちょい『ワルキューレの騎行』のアレンジ版が使われているので、耳馴染みのある方も多いかと。ちょっと意識して聴いてみてもいいかもしれません。

それにしても、本作の監督を務めた阪元裕吾さんは、まだ25歳という若さ。その才能にうらやましさも感じますが、こういう洋画みたいに振り切ったアクション映画、日本でももっと増えたらいいなって思います。もっと製作費をかけて壮大なものになった邦画のアクションも観てみたいですね。


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