見出し画像

伝えようとする想いがあれば言葉も文化も超えられると思った『アジアの天使』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:120/138
   ストーリー:★★☆☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★☆☆☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
ロードムービー
家族

【あらすじ】

妻を病気で亡くした小説家の青木剛(池松壮亮)は、8歳になるひとり息子の学(佐藤凌)を連れて、兄(オダギリジョー)の住むソウルへとやって来た。「韓国で仕事がある」という兄の言葉を頼っての渡韓だったが、いざ到着してみると、兄がいるはずの住所には、知らない韓国人が出入りしていて中にすら入れない。

やがて帰宅した兄と再会できたはいいものの、あてにしていた仕事は最初からなかったことが判明。代わりに韓国コスメの怪しげな輸入販売を持ちかけられ、商品の仕入れに出向いたショッピングセンターの一角で、剛は観客のいないステージに立つチェ・ソル(チェ・ヒソ)を目撃する。

元・人気アイドルで歌手のソルは、自分の歌いたい歌を歌えずに悩んでいたが、若くして亡くなった父母の代わりに、兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)と喘息持ちの妹・ポム(キム・イェウン)を養うため、細々と芸能活動を続けていた。

そんな矢先、韓国コスメの事業で手を組んでいた韓国人の相棒が商品を持ち逃げしてしまう。全財産を失った兄弟に残された最後の切り札はワカメのビジネス。どうにも胡散臭い話だったが、他に打つ手のない剛たちは、藁をも掴む思いでソウルから北東部にある海沿いの江陵(カンヌン)を目指す。

同じ頃、ソルは事務所から一方的に契約を切られ、兄と妹と3人で両親の墓参りへと向かうことに。運命的に同じ電車に乗り合わせた剛とソルたちは、思いがけず旅を共にすることになる。

【感想】

正直、想定とだいぶ違ったかなという印象の映画でした(笑)

<韓国映画ではなく日本映画>

なんか違ったな~って思った理由は、この映画、韓国人俳優も多く、舞台も韓国なので、韓国映画の中に日本人俳優が出ているっていう形なのかなって思ったんですよ。なので、韓国映画特有のあの豊かな感情表現やテンポのいい進み、大号泣ってぐらいの感動があるかと。でも、監督が日本人ですし、そりゃ邦画だよねっていう(笑)

<根底に流れるものは何なのか>

この映画の中では、日本と韓国の仲の悪さに言及されています。日本人を嫌いな韓国人と、韓国人を嫌いな日本人が、いずれも60~70%ずついるという状況ですね。その中で、言葉もまったく通じず、たまたま電車が同じだったというだけで、2つの家族が旅を共にするというシチュエーション。想像しただけで、気まずいですよね。

でも、ここで描かれているのは、そういう垣根を超えた人間の優しさなんです。国も文化も違うけれど、お互い辛いときは涙を流すし、同じ病気で大切な人を亡くしているし、それによって同じ悲しみを味わっています。いっしょじゃんって。そこに日本人、韓国人っていう分類はナンセンスなんですよ。結局、同じ人間なんだなっていうのを一番強く感じる映画でした。

<大切なのは伝えようとする意志>

本作では、ほぼ言葉が通じないため、コミュニケーションは表情や身振り手振りによって行われるんですが、この「何よりも伝えようとする意志や想い」っていうのが大事で、それさえあれば、大抵のことは何とかなるんだなっていうのも伝わってきました。ビジネスだとそうはいかないかもしれませんが、日常会話なら大体何とかなりそうですよね。とはいえ、英語だけはカタコトながらも使用されていたので、やっぱり英語は大事だなっていうのは思いましたが(笑)

<韓国側に寄りすぎな印象>

これは別に外交上の問題とかそういうの全然関係ないんですけど、2つの家族を描いている割には、どちらかと言えば、ソルたち韓国側の家族に重きが置かれて、青木たち日本人側はそれに引っ付いているだけっていう印象を受けたので、もう少し青木一家にも焦点を当てて欲しかったなとは思います。オダギリジョーの役とかもっとネタにできそうなのに、ただ好き勝手やってる兄というだけで、ちょっともったいない気がしました。

<スマホを使えばいろいろ防げたのでは>

あと、言葉がまったく通じないという設定も、今ならスマホを使えばいくらでも言葉は調べられるんじゃないのかって思ったので、例えばこれが、スマホが出る前の時代ならまだしも、現代なので、そこは違和感がありますね。。。何のためのスマホだよって。

<天使の存在>

タイトルにもありますが、天使の存在がかなり謎めいていました。夢とか希望とか、そういうものの象徴でもなさそうなので、一体あれは何だったのでしょうか。個人的には、「小さい頃にお化けを見たことがある」というレベルのオカルト話で、単に共通の話題のためのネタでしかないのかなって思ってるんですけど。しかも、その天使の見た目が完全にギャグっていう(笑)

<その他>

全体的にいいお話ではあるんですけど、流れが淡々としていて、せっかく人種を超えた人間本来の優しさを描いている割には、2つの家族が交差するエピソードが弱く感じられてしまったので、僕個人としては、あんまりハマれませんでした。もっと韓国映画らしいドラスティックな展開があった方が、僕は好きです。

それにしても、ポスターの構図が『シン:エヴァンゲリオン劇場版』にちょっと似ていますね(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?