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"孤独からの救い"と"自由"の狭間で揺れた『アンモナイトの目覚め』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:26/74
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ラブストーリー
同性愛

化石

【あらすじ】

1840年代、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジス。人間嫌いの古生物学者メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は、世間とのつながりを絶ち、母親と2人でこの町に暮らしていた。

かつて、彼女の発掘した化石が大発見として世間をにぎわせ、大英博物館に展示されたが、女性であるメアリーの名はすぐに世の中から忘れ去られた。

今は土産物用のアンモナイトを発掘し、細々と生計を立てている彼女だが、ひょんなことから裕福な化石収集家の妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を数週間預かることになる。

美しく可憐で、何もかもが正反対のシャーロットにいら立ち、冷たく突き放すメアリー。

ある日、メアリーが高熱を出して倒れてしまうが、シャーロットの献身的な介護のおかげで無事に回復。それをきっかけに、2人の間にあ温かな感情が芽生える。

何もかもが正反対の2人だったが、お互いへの感情は次第に大きくなっていき……。

【感想】

女性同士の恋愛を描いた映画です。同性愛モノって今まであんまりハマったことがなかったんですが、これは面白かったです。いや、出ている2人が綺麗すぎるとか、濡れ場がすごかったとか、そういう話だけじゃないですよ?(もちろん、それもありますがw)

それは、物語の始まりの時点で、お互いに「好きじゃない」という状態から始まっていたからです。同ジャンルの映画だと、どちらかが一方的に好きっていうパターンが多いので、この時点で興味を惹かれたんですよ。この後、どうやって愛し合っていくようになるのかって。

特にメアリーはもともと人間嫌い。だから、都会からやってきた金持ちの女性なんて、タイプが違いすぎて余計に仲良くなんてなれなそうですよね。

でも、本当にメアリーって人間嫌いだったのかってのは、この映画を観てまず初めに感じたことです。単に人とうまく関わり合えないだけで、本当は寂しかっただけなんじゃないかなーって僕は思いました。

その証拠に、メアリーへの想いが爆発したときの濡れ場のシーンは、ものすごく獣的でエロティック。あんなに露わになって相手を求める姿は、人間嫌いとは到底思えません。むしろ、これまで感じてきた孤独を埋め合わせるかのような勢いに圧倒されちゃいます。

ちなみに、ここでのケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンの演技はすごいですよ。。。大女優2人の体当たり演技に感動すら覚えました。。。

現実の世界でもそうですが、人付き合いよりも優先順位が高いものがあるって人はけっこういると思うんですよね。オタクとかは特にそうじゃないかと。それが、シャーロットにとっては化石だっただけで。

それゆえにあまり人と関わらなくなって、余計にコミュニケーション取りづらくなっていった気がするんですよね。よっぽど劣悪な環境で育ったとか、人に裏切られ続けたとかっていうことでもない限り、社会性に特化した生物である人間が、そこまで人間嫌いになることはないのでは、、、?(僕の勘違いかもしれませんが。。。)シャーロットも特にそういう設定があったわけではないですし。

だから、一見とっつきにくそうな人、他人に興味なさそうな人でも、仲良くなったら案外面白くていい人っていうのはよく聞く話ですよね。

ただ、難しいのが距離の取り方なんですよ。シャーロットにとって、メアリーはかけがえのない人であることに変わりはないと思います。とはいえ、やっぱり彼女は化石の優先順位も高いまま。だから、自分を近くに置いておこうとしたメアリーに、シャーロットは違和感を覚えちゃったんじゃないかなと。拘束されることで、まさに棚に並べられた化石のようになることを恐れたのかもしれません。

ずっとベタベタしていたい人と、きちんと自分の時間は欲しい人、このタイプの組み合わせは難しいですね(笑)メアリーは前者ですが、それは若さゆえっていうのもあるのかも。

ケイト・ウィンスレットと言えば、僕の中では『タイタニック』のイメージは依然として残り続けていますが、今作の役どころには少しローズを思わせるところもあったかなと思います。

あれは、恵まれてはいるけれど、上流階級の見栄の張り合いの毎日に嫌気がさして、立場がまったく違う青年と一世一代の恋をするじゃないですか。今回は、人を避けて変わり映えのしない日々を送っていたシャーロットが、自分と正反対のメアリーと出会って、孤独からの脱却と燃えるような恋をするっていう話。いずれも、今まで自分が身を置いてきた世界とは、大きくことなる方向へ一歩踏み出すっていうところに、共通点を感じました。まあ、ラブストーリーって大体そういうものだったりしますけど、今回はね、「海」っていうところも同じだったので。

同性愛をテーマにしてはいますが、そこに至る人間ドラマや、カップルの価値観の違いを強く感じられるヒューマンドラマで、とても見ごたえのある映画でした。

それにしても、ポスターの2人、横顔が美しすぎる。。。


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