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映画によって傷つき、映画によって救われた青年を描いた、スティーヴン・スピルバーグの実体験に基づく映画『フェイブルマンズ』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:18/36
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:The Fabelmans
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配給:東宝東和
 上映時間:151分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:映画監督「スティーヴン・スピルバーグ」(1946-)

【あらすじ】

両親に連れられ、初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年(マテオ・ゾーヤン)。母親のミッチェ(ミシェル・ウィリアムズ)からプレゼントされた8ミリカメラを手に、家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親のバート(ポール・ダノ)はその夢を単なる趣味としか見なさない。

青年となったサミー(ガブリエル・ラベル)も、相変わらず映画を撮り続けていた。そんな中、一家は父親の仕事の都合で西部へと引っ越すことに。

そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく―。

【感想】

ハリウッド映画と言えば、僕はもうスティーヴン・スピルバーグが真っ先に思い浮かびます。そんな彼の自伝的映画となったのが本作です。知られざる彼の生い立ちが知れる有意義な作品でした。

<スティーヴン・スピルバーグって?>

あまりにも有名すぎる方なので言わずもがなだとは思いますが、一応軽く書いておきます。もうね、超有名な映画を世に出し続けている映画監督ですよ。1946年生まれなので現在76歳。でも、今でも精力的に活躍し続けていらっしゃいます。代表作としては、『ジョーズ』(1975)や『未知との遭遇』(1977)、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)、『E.T.』(1982)『ジュラシック・パーク』(1993)、『シンドラーのリスト』(1993)など、エンタメ作品からシリアス寄りのものまで幅広い映画を手掛けています。

監督作品の全米生涯興行収入は2018年現在で計46億3660万ドル(約4974億円)に達しており、歴代1位を記録しているほど(ウィキペディアより)。ちなみに、プロデュース作品でも同じく1位だったそうですが、2018年にマーベルのケヴィン・ファイギに抜かれたらしい(10年で抜いちゃうケヴィン・ファイギもすごいですけどw)。

<自身のトラウマと向き合う映画>

さて、この映画についてですが、やっぱりまずは映画好きな人はぜひ観てもらいたい作品ですね。スティーヴン・スピルバーグの作品って、本当に多くの人に観てもらっているので、そんな方の生い立ちについて知って損はないでしょうし。でも、制作にあたってスティーヴン・スピルバーグ本人はかなり慎重になっていたそうなんですよ。それは、自分の過去を語ることになるからってのもそうだと思いますけど、映画を観て思ったのは、心の傷を再びえぐり出すことになるからだろうなと感じました。彼の両親は離婚しており、そのことが後の映画制作に大きな影響を与えたというほどらしいんですよね。きっと、本人にとってもトラウマでしょうし、そこと向き合わないといけないのは精神的に大きな負担がかかります。だから、慎重にならざるを得なかったんじゃないかなと僕は考えています。

実際の離婚の原因はわかりませんが、本作では母親がきっかけになっていました。まあ、きっかけというだけで、母親がそうなってしまったのは父親との相性の部分も大きいとは思いますけど。劇中でのサミーの過程は、父親は天才エンジニアで、母親がピアニストなんですが、父親の仕事は母親にはまったく理解できない領域なんですよ。でも、そんな父親は母親にぞっこん。自分が理解できない人に崇められているという居心地の悪さは、母親の精神的ストレスになっていったんじゃないかと、子供たちも話していました。思えば、スティーヴン・スピルバーグの作品って、家族を描いたものが多い印象です。自身の経験が糧になっているっていうのは、まさにその通りかもしれません。

<好きなものが嫌いになる瞬間>

そして、サミーが何気なく撮っていた家族旅行の映像記録を編集しているときに、偶然映り込んでしまった光景によって母親の裏切りが発覚してしまうんですよ。これは思春期の彼にとってはとてつもない衝撃だったんじゃないかなと思います。実は僕も昔、飲み会の様子をビデオに残したことがあるんですけど、本当に偶然よくないものが映っていたりするので、カメラの前では不用意な言動は控えた方がいいなと肝に銘じていますが。。。

つまり、サミーは大好きな映画によって傷つく経験をしてしまったわけです。自分がカメラをまわしてさえいなければ、知らずに過ごせたかもわかりません。そこで彼は一旦映画から離れ、カメラをまわすことを辞めてしまいます。あんなに好きで、"趣味"と言われていしまうことを嫌がるほどだったものから距離を置くというのは相当辛いだろうなというのは想像に難くありません。

<結局映画によってしか救われない>

でも、カリフォルニアの高校に移り、ユダヤ人ということでいじめに遭う日々の中で、結局彼を支えてくれたのは映画しかありませんでした。最近観た『銀平町シネマブルース』や『BLUE GIANT』もそうですが、情熱を注げるものこそが、いつだって自分を助けてくれるんですよね。特に、映画に携わる人は映画によってしか救われないんじゃないでしょうか。そこに映画の魅力というか美しさみたいなものを僕は感じました。

サミーはプロムにおいて、卒業する同級生たちの思い出ムービーを流します。その中で、いじめの主犯格だった男の子をフィーチャーした映像を流すことで少し打ち解けることができるんですが、王道ながらも個人的な好きな展開でしたね。まあ、なんでいじめっ子をフィーチャーしたのかはわかりませんけど。僕だったら自分をいじめてくるやつの映像なんか絶対に映したくないですけどね!(笑)サミーは「5分でも友達になれたら」と思って撮ったようですが、かっこよく撮ることでいじめられないようにするっていう魂胆はあったんじゃないかなって思います。そのいじめっ子も、ハリウッド映画の学園モノにはお決まりのスポーツマンタイプだったので、かっこよく持ち上げられればそれで満足という単純な思考だったのかな。。。(笑)結局いじめていた理由もわかりませんし、あんまり根本的な解決になっていないようにも思いますが、結果オーライということで。

<ラストの某有名映画監督からのアドバイスが刺さる>

ラストの展開もよかったですね~。まさかすぎる人の登場ですよ。役柄としても、演じている人としても。役柄的には、スティーヴン・スピルバーグだけでなく、黒澤明や宮崎駿にも影響を与えたという某有名監督なんですが、彼の言う地平線の話がすごく参考になりました。曰く、地平線は上にあっても下にあっても面白い画になるけど、真ん中だけはクッソつまんねぇと。僕はオーソドックスが好きなので、写真を撮るときも何かとすべて真ん中にしてしまう癖があるんですが、以後気をつけようと思いました(笑)

<そんなわけで>

あのスティーヴン・スピルバーグの半生が知れる貴重な映画です。映画によって人生救われるのは、観客だけでなく、作っている本人もそうなんだなということをしみじみ感じました。映画が好きな方は必見です!


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