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『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』紹介


『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』
メアリアン・ウルフ:著
小松淳子:訳

他にも言語学系の本は読んだんですが、「読み物として面白いな」という感覚になった本を紹介したくなりました。
中学生の頃から、理系ノンフィクションが好きで、『イヴの七人の娘たち』『生物と無生物のあいだ』『銃、病原菌、鉄』あたりは特にわくわくしながら読んだ覚えがあります。
今回紹介する本も、その手の本に近い雰囲気で読むことができると思います。

版元ドットコムより転載

http://www.intershift.jp/book_P_w.html


文字文明の歴史を紐解き、子供の読みの発達を扱い、最後にディスレクシアについて取り上げている。

基本的には英語について触れられているため、子供の言語発達やディスレクシアについては日本語とは事情が異なるところもあるだろうけれど、まったく参考にならないとは思わない。
世界史の最初の方にときめくなら、まず面白く読んでしまえると思う。楔形文字、ヒエログリフ、亀甲文字など……そしてアルファベットの歴史に至る。

人が文字(文章)を読むことについて真剣に考えることって、当たり前すぎてなくなってしまっていることに気付かされる。
日本でも、「裕福な家庭は蔵書が多く、言語能力が高い」という話がよく挙げられるけれど、貧困家庭である場合に言語能力が富裕層と他の点でどうして劣ってしまうのか、というのが明らかに書かれている。貧乏でも頑張れば勉強できる、というのはやはり現実的ではないのだ、と気付かされる。
ディスレクシアというのも、日本ではまだ馴染みのない言葉だろう。日本はよく「識字率100%」を誇らしげに語る。しかし、本当にそうなのか? 日本でもLD(学習障害)と思われる児童は一定数存在する。どうしてディスレクシアが発生し、そしてディスレクシアによって子供自身がどう変わるのか、についても触れている。

本書で何より面白いと思ったのは、デジタルテクノロジーがあがることにより、リテラシーが下がるのでは? という話だ。実際、Twitterを見ていても140字程度の内容ですら読み間違え、リプライや引用リツイートで突っかかる人をよく目にする。ましてや、ツイートで参照されているニュース記事など目を通すことがない。当たり前に文字を読み流している我々にとっても、「読む」ということを再考させるきっかけとなるだろう。

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