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タル・ウィルケンフェルド: 楽器に触らなくても上達はできる


ベーシストとして有名なタル・ウィルケンフェルド。しかし、実は彼女は最初、ギターを弾いていました。もちろん、ベース奏者にとってそれは珍しい道ではありませんが、とにかく彼女は高校時代に6弦ギターを徹底的に勉強し始めたのです。

それから間もなくベース・ギターをメインとするようになり、やがて彼女は最も尊敬されるベーシストのひとりとなりました。結局のところ、誰もがジェフ・ベックやチック・コリア、ハービー・ハンコックに求められ、共演できるわけではないのですから。

ただし、ウィルケンフェルドは、彼女が演奏を始めた14歳のとき、両親から1日に30分しか練習することが許されていませんでした。

「学業に専念する環境で育っただけなんだけどね」

しかし、そうした "制限" が彼女の楽器への愛を止めることはありませんでしたし、長い目で見れば上達の妨げになることさえなかったのです。

「ギターに恋をして、ギターに集中したかった。だけど私の限界は1日30分。週に何回だったかも覚えていない。毎日だったかもしれないし、週に5日だったかもしれない」

当然、どんな楽器でも卓越した演奏ができるようになるには、日々の練習に多くの時間を割く必要があるはずです。そして、若いウィルケンフェルドはすでに、スター・プレイヤーを目指す決意を固めていました。だからこそ、時間の制限に対する解決策が必要だったのです。

「頭の中で指板をイメージする方法を学んだの。そうして一日中、頭の中で練習していたのよ」

重要なのは、その方法が非常にうまくいったということで、さらに重要なのは、この方法が誰にでも勧められる優れた方法だということでしょう。単に時間を節約するためではなく、楽器を完全に理解するための実に有用なアイデア。

「私も以前は、フレットボードでただ練習をしていただけだった。でも、ここ(実際の指板)で練習しているだけだと、何がより重要で必要なのか、必ずしもわからないから。
頭の中のプロットが大切なのか、それとも運動神経が大切なのか。だから頭の中でやってみれば、自分にはプロットが大切だとわかる。だから、時間を制限されたおかげでその方法を学べてよかったよ」

とはいえ、時間的な制約はやはり難題。ウィルケンフェルドは結局、休憩を挟みながら超短時間の演奏で上達を目指していきました。

「早く学ぶという点では、楽器を持っている30分間は、短い時間で多くの情報を吸収しなければならなかったから、集中的にやることが多かったわ。
30分でも、2、3分弾いて、1分止める。そしてまたやる。そして、1回目と2回目では大きな違いがあることに気づいた。ただ繰り返すだけの練習だと、そんなに変わらないのにね。
その1分の休憩の間私の脳が、"ちょっと冷静になれ、情報はもう十分だ" って語りかけるの。少なくとも私にはそう感じられたわ」

ウィルケンフェルドは若い音楽家たちに、どうすれば上手くなり、音楽と自分の楽器をより深いレベルで本当に理解できるようになるか、アドバイスを求められることも多いのです。

「それは、指板と演奏を頭の中でイメージできるようになることと大いに関係がある。何よりもまず、自分がなぜ音楽を演奏しているのかを理解することだと思う。表現したいことがあるからとか、表現そのものや芸術そのものが好きだからとか。それがこの旅を始める大きな理由なんだ。
"なぜ "は本当に重要だと思う。ライフスタイルは様々で、その中にはたくさんのことが詰まっているからね。だから、もしあなたが目的を持っていないなら、もしあなたが目的の中心にいないなら、そのギザギザのライフスタイルのすべてが、おそらくあなたを襲ってくるでしょうね。
楽器を続けることが正しいという確信とは、自分がまさにやりたいことをやっていて、この表現でそれをやる目的が何なのかを知っているという、自分の内面から来るもの。そうでなければ、ただ風に吹かれている葉っぱのようなものよ」


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