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【読書録101】致知2023年10月号「出逢いの人間学」感想

 致知の感想をnoteに書いて、今回が25回目。
致知、45年の歴史から考えると、ほんの一瞬であるが、毎号毎号、自分の生き方を考えさせられる。今回は、大好きな栗山英樹氏と横田南嶺老師の対談が掲載されるというスペシャルな号である。その記事を中心に書いていきたい。 


総リード 出逢いの人間学

 
 この10月号で創刊満四十五周年になるという致知。
四十五周年に思いを馳せ、「四時の序、功を成すものは去る」「縁尋機妙 多逢聖因」という2つの言葉を取り上げる。
 多分野の錚々たるメンバーが登場する致知であるが、彼ら彼女らの考え方の共通項を考えると、人間として大切にしなければならないことは何かというのを考えさせられる。

 致知との出逢い、また致知が出逢わせてくれた先達達との出逢いに感謝したい。

世界の頂点をいかに掴んだか

 
 侍ジャパンを監督として率いてWBC世界一を成し遂げた栗山英樹氏と円覚寺管長の横田南嶺老師の対談記事。致知でしか実現できない対談であろう。
 既に監督を退任した栗山英樹氏であるが、監督というイメージが消えないため、以下、栗山監督と記載する。

大谷選手の心構え

 対談は、WBCで大活躍した大谷翔平選手の話から始まる。
決勝戦の最終回、1点差で大谷選手の投入や守備固めで野手を2人交代したことに関して、栗山監督は、後に周囲に「もし同点にされていたらどうしたんですか」と問われたという。それに対して、こう言う。

僕があそこでほんの1ミリでも同点になるとか負ける可能性を頭に描くと、その通りになってしまうと思ったんですよ。翔平の覚悟も感じていたので、あの采配は絶対にこのイニングで終わらせるというメッセージでも在りました。

栗山監督からみた大谷選手の凄さとしてこう言う。

翔平の場合、「もしダメだったら」というマイナス思考が浮かんでいるように見えない。プラスになるんだって百%信じて行動する

なぜ、大谷選手がそのように信じることができるのかについて、栗山監督がこう評する。

自分ができないと思われることにチャレンジすると、達成できてもできなくても自分のレベルが引きあがる、能力が高まるということを知っているじゃないでしょうか。

大舞台ですら、ゴールではなく、更なる成長へのプロセスと捉えられる力は、凄い。

最近読んだ平澤興氏「生きよう今日も喜んで」のこんな言葉が浮かんだ。

現在(只今の時)は過去の終りにあらずして、新しい将来への「スタート」であり無限の可能性をはらむ自己完成への始めである。

栗山監督のチームづくり

 本対談を通じて、栗山監督のチームを一つにする力、チームづくりの力を感じる。それは、チーム全員一人ひとりが、リーダーシップを発揮する「シェアード・リーダーシップ」の考え方に沿ったものであると感じた。

強い組織というのは、全員が自分の都合よりもチームの都合を優先し、全員がチームの目標を自分の目標だと捉えていることだと思っています。

全員が、このチームは自分のチームだと思える、当事者意識を持った組織。
それを、墨筆の手紙で全員に伝える、栗山監督。

真心ってそういうものでしか伝わらないような気がしたものですから。

ベンチに座っている選手がふんぞり返るようにして傍観しているチームなのか、それとも前のめりになって声を出しながら、いつ出番が来てもいいように準備しているチームなのか。要するに、他人事にするチームは、やっぱり勝ち切らないと思うんですよ。

 今回のWBCを「勝負の瞬間への準備を全員がしてくれていた」と振り返る。そのようなチームを作った栗山監督の力を思い知った。ファイターズでの経験や古典から学んだことが栗山監督をつくりあげていったのかなと対談を読んで改めて感じた。対談相手として、横田南嶺老師を選んだことにも、栗山監督という人物が分かる。

横田老師の明るい笑顔

 一方、横田南嶺老師も、この対談に臨みWBCの試合をかなり見たり、栗山監督のことを調べたんだろうなと思う。その対談に臨む姿勢もまさに真心である。

老師の本は、結構読んでいるし、毎日のnote記事も時々拝見しているが、日々進化されているのが分かる。本対談でも新たな面を発見した。

禅宗のお坊さんって結構難しい顔をしている人が多いんですよ。私はそれが嫌でね、なるだけ明るい笑顔で生きようと思っています。批判されることもあるんですが、明るい笑顔が未来を拓く。これを信条としています。

「ご機嫌おじさん」を信条とする私も、老師のこの信条に大変共感する。

師匠からは、「修行僧というのは麦を踏むのと一緒だ。踏めば踏みつけるほど強くなる。」と指導されてきた老師は、いまの時代に合わせて修行をこう例える。

 このやり方はもうダメです。踏んだら何も出てきません。いまはいかにして芽を育てるか、時には添え木をしながら、丁寧に育てていかないといけない。

その背景にあるのが、論語のこの言葉だ。

「之を知る者は之を好むものに如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず。」
とにかくいまやっていることを楽しむ。その楽しさをどう教えられるかということにいま私は努力しているところなんです。

 その背景に老師のこんな考え方があるのではないかと思う。

我われは仏心とか仏性とか言いますけど、もっと平たく言えば、その人の持っている無限の可能性や素晴らしさ。それをこちらが手を合わせて拝む、つまり信じる。先ほど監督が信じて待つという表現を使われましたが、こちらが何かをしてあげようと思うよりも、相手が良い方向に芽を出していくことを信じて拝む。その心で一人ひとりに接していく。

 小学生のときから禅と出逢った横田老師は、様々な禅僧の教えとの出逢いを通じて、「人生ってのは目に見えない糸で全部繋がっているんではないか」と言う。

 考え方が人物をつくり、人生を彩っていくのである。

プロとして監督として

 最後に、栗山監督が、王貞治さんとの話で感動した2つのエピソードを紹介したい。

1つは、ダイエー監督時に生卵をぶつけられるという事件に遭遇した時の王さんのエピソードである。
 王さんは、生卵をぶつけられ、怒るのではなく、「これを見ろ。プロは勝たなきゃいけないんだ」と諭したというが、その真偽を栗山監督は王さんに聞いた際、首を縦に振り、こう答えたという。

文句を言いたいくらい真剣に応援してくれる人たちがいないと、我われプロ野球は成り立たないんだ。そういう人たちに喜んでもらうために野球をやるんだ。それを忘れちゃいけない

 もう1つは、「もしもう一回人生があるとしたら、王選手になりたいか、王監督になりたいか、どっちですか」と聞いた際の王さんの答え。

ホームランを打つのも良いけどね。監督はたくさんの選手のためになれるんだよ

栗山監督は、この二つのことばから、プロとして監督として責任をしっかり果たさなければいけないと感じたという。

人のために役立つこと、それは人間として究極の目標ではないだろうか。

人と出逢って何を学ぶか、その人の日頃の経験や問題意識から生じるのであろう。一日一日を大切に生きること、それが、出逢いの価値を最大化するのではないか。お二人の対談からそんなことを考えた。

【連載】人生百年時代を生きる心得

 
 あまり連載のことは、書かないが、今回は、栗山監督と横田老師の対談について多く書いたので、もう一つは、連載記事からの学びとして、社会教育家の田中真澄氏の連載を取り上げる。
 
 「倒産を招かない生き方は老後の人生設計にも役立つ」

玩具メーカーを経営し、倒産の憂き目にあった、野口誠一が、倒産で苦しむ中小企業経営者達と互いに励まし再起を誓おうと創設した「八起会」。
 その八起会の会社を潰さない五つの指針「八起五則」を老後の人生にも役立つ心得として取り上げる。

 「早起き」「笑顔」「素直」「感謝」「いい出会い」

 私自身、素直に共感でき、どれも大切にしたい習慣、指針である。各々の、項目の解説も納得感ある。

「早起き」 早起きして心の余裕を持って時間を有効活用し、昼間の仕事で能率をあげるための生活上の第一の習慣
「笑顔」 人間関係を円滑にする基本的な習慣として大切なものであり、人づきあいや社内外で仕事をする場合、明るい雰囲気の下で行うためにも欠かせないもの
「素直」 自分の欠点を認める心の素直さであり、自我を抑えて、常に自分を向上させる努力を図る姿勢を維持するためにも必要なもの
「感謝」 自分の存在を支えてくれるすべての協力者に対して、謙虚に感謝する気持ちを持ち続けること
「いい出会い」 以上の4つの要件を満たしていけば、自分を支えてくれる人々との素晴らしい出会いが待っていること 

 私自身の人生の指針にもしたい。

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