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【読書メーターまとめ】2024年3月に読んだ本

 来年度からの大学院進学も決まり、一旦、読みたい本をジャンル問わず手に取っていった一カ月であった。
 コミック版の徳川家康をようやく読み終える。壮大な人生、また苦労続きの人生である。人生の成功とは何か?家康は幸せだったのか?考えさせられた。


2024年3月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3971ページ


■徳川家康―コミック (20) 威嚇の城の章 (歴史コミック (20))

読了日:03月02日 著者:横山 光輝

本巻のタイトルは、「威嚇の城の章」。大坂城あるがゆえに、牢人が集まり争いの元になるという構図を描く。そして、いよいよ大坂の陣の主役の一人である真田信繫が登場する。70代を迎え、戦乱を知る数少ない存在となった家康。平和を築くための家康の努力を描く。自身の今までの人生を走馬灯のように思い出す中で、戦乱の世の苦悩を思う姿は印象的であった。主戦論というのは、勇ましくて皆が乗りがちで簡単な道である。片桐且元の苦悩などを見てもそう思わされた。時代の変革期には、時代の変化に乗れない人が多くいるのはいつの世も一緒である。

■徳川家康 21(戦争と平和の章)―コミック (歴史コミック 31)

読了日:03月02日 著者:横山 光輝

いよいよ大坂冬の陣。家康は、最後まで和平を求め、二条城からなかなか動かない。大砲の威力により、女性陣主体の和議が成立する。この巻からの秀頼や淀の方の描き方は、ちょっと今まで読んできた小説とは異なっていてまた面白い。戦を求める牢人衆の動きを抑えることができない秀頼。また和平を望む淀の方。家康は74歳になり、いよいよ夏の陣を迎えることになる。ラスト2巻も楽しみである。

■はじめての人におくる般若心経

読了日:03月03日 著者:横田 南嶺

現存の人物でもっとも敬愛している方の一人、円覚寺の横田南嶺老師の書。円覚寺の日曜説教の際にサインをいただく。花園大学の講義が基になっており、かみ砕いて何度も空の思想について説く。我執を含む執着からの解放、自分中心の物の見方からの解放が肝である。「自分が変われば世界が変わる」という言葉も気に入った。お釈迦様の言葉の引用も多い。「すべてのものは移ろいゆく怠らず勤めよ」という最後の言葉が心に響く。無常だからこその精進だ。般若心経を唱えることで力が沸くというのもわかる。羯諦以下の真言は唱えていて本当に元気が出る。

■ポートレイト・イン・ジャズ

読了日:03月03日 著者:和田 誠,村上 春樹

図書館で村上春樹特集をしており、ふと本書を見つけ手に取る。学生時代、一時ジャズが好きで、よく聴いていた。今思うと、ちょっと背伸びをしたかったのかなとも思う。本書は、空き時間に少しづつ読もうしていたが、文体とイラストに惹きこまれ、一気に読み終える。最近あまり聴いいていなかったジャズがとにかく聞きたくなった。紹介されるプレーヤーの中で、文面として一番好きなのは、Miles Davisのところ。バーで聞きたい音楽ときかれ、FOUR&MOREと答えるくだりやWalkinに惹きこまれる下りは最高だ。

■下天を謀る(下) (新潮文庫)

読了日:03月09日 著者:安部 龍太郎

大和郡山100万石取り潰し騒動以来の高虎と家康の縁の深さを軸に描く。クライマックスは、大坂夏の陣。先陣として、数多くの一門・重臣を失い呆然自失とする高虎の姿は、涙を禁じ得ない。そして自ら敵陣に突っ込む姿は、彼の若かりしときの猛者ぶりを彷彿とさせる。私が藤堂高虎に興味を持ったのは、本書あとがきにもある「自己変革の名人」であるところである。秀長に見出され、豪勇無双の武者から、領国経営ができる大名に、そして、家康のブレーンに自己成長・自己変革していく姿は今後の人生の道標になるであろう、もっと知りたい人物である。

■徳川家康 22(孤城落月の章)―コミック (歴史コミック 32)

読了日:03月10日 著者:横山 光輝

大坂夏の陣を描く。狡猾に大坂方を追い詰めていく家康像が多いように感じるが、本書では最後まで和平を望み、淀殿・秀頼を生き延びさせる道を模索し、苦悩する家康を描く。死に場所を求め、集まってくる牢人衆を抑えられない大野修理や秀頼。また豊臣方の動きを使い天下を望む伊達政宗の姿など、最後まで目を離せない展開である。苦悩する家康の様子は、とても天下統一を成し遂げた天下人の者とは思えない。トップに立つ人間とは、想像よりも自分の思い通りに行かず、このように意外に苦悩に満ちたものではないかと考えさせられた。

■グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学

読了日:03月10日 著者:釘原 直樹

人が集団になった時の行動についてもっと知りたくて手に取る。集団的浅慮など話も興味深かったが、群集となった時の行動、とりわけ後半の危機発生時の集団の心理や行動の話が面白かった。航空機事故や震災など危機的な状況では、今までによく学習された行動、つまり自分が慣れ親しんでいる行動の枠組みで行動するという。家族など慣れ親しんだものの存在が重要だ。また正常化偏見や群集の没個性化の話も考えさせられることが多かった。それにしても、科学的な理論とするのにいろいろなアプローチで考えないといけないのだと改めて考えさせられた。

■徳川家康 23 立命往生の章 (歴史コミック 33)

読了日:03月10日 著者:横山 光輝

いよいよ最終巻。家康の苦悩は続く。最終巻は、伊達政宗との駆け引きや実子・松平忠輝との関係を描く。泰平とは実現できないものなのか?現代にも続く問いである。王道を求める家康の思想を理解できない周囲。戦乱の世が続いていれば尚のことである。エンディングは、ハッピーエンド。伊達政宗や松平忠輝とも心が通じる。忠輝への笛の贈り物をする話は良かった。まさに大往生。本書を読み終え、家康の人生=「厭離穢土欣求浄土」の希求と痛感した。全巻読んでよかった。徳川の世が続いたおかげで、日本に儒教が根付いたのかなと勝手に想像した。

■組織行動論の考え方・使い方〔第2版〕: 良質のエビデンスを手にするために (単行本)


読了日:03月17日 著者:服部 泰宏

組織行動論を専門とする社会科学者としての自身の「あり方」にまで深めての論考にただただ圧倒される。実践の場で叩きあげて作り出された「しろうと理論」と科学的に実証された「科学知」を対比させ「知る」とは、また「役に立つ」とはどういうことかを論じ、学者と実践家の共同研究のあり方を通じてそれを考えさせてくれる。またこれから大学院で学ぶ私にとり、第2部の組織行動論の理論がどう測定されながら、A→Bを導き出すかは頭の整理に役立った。実践の場から離れた科学に明日はあるか?ほんの少しでも架け橋になれるような人財になりたい。

■世界最高峰の経営学教室 <1 理論編> (日経ビジネス人文庫)

読了日:03月18日 著者:広野彩子

入山先生の「世界標準の経営理論」からTOP経営学者がどんなこと考えているか知りたく手に取る。想像以上に、皆さん社会課題の解決への関心が強いことには驚いた。フリードマン・ドクトリンからの脱却、ドラッカーの経営哲学への再評価など気づきが多かった。私としては、人間の「知」を創造する力に着目した野中郁次郎先生が第1章の経営でいちばん大切なことで取り上げられているのが良かった。「共通善」を目指すという主張は、後の章への導入となっている。コトラー・ポーターも含め大御所になっても知をアップデートしていく姿は見習いたい。

■世の中の見方が変わる経済学―常識のワナに陥らないために―

読了日:03月20日 著者:小峰隆夫

信頼するエコノミスト・小峰隆夫氏による高校生向けの講義をベースにした経済学の基礎。著者が特に重要と考える5つの原理は頭に入れておきたい。➀市場の作用が経済の動きを調整している➁人々はさまざまなインセンティブに応じて行動している③時には政府が政策的に介入したほうが人々は幸せになる➃費用として重要なのは機会費用である⑤物事の影響はできるだけ先の先まで考えた方が良い。エコノミストと一般の人の考え方の違いは、物事の影響の捉え方の違いという経済学の原理によるんだと再確認。まさに「常識のワナに陥らないために」である。

■世界最高峰の経営学教室 <2 実践編> (日経ビジネス人文庫)

読了日:03月27日 著者:広野彩子

理論編よりも、私の課題感にフィットしたからか興味深く読む。特に印象的だった3つの講義。➀N.パント、良きリーダーの資質に自己管理を上げ、学び続ける習慣をつくることの重要性を説く➁M.ウェイドのDX論。ミドル層の危機感の無さ。小さなことから始めると活動が最後まで小さいまま。手段が目的化し、サイロ内での変革に終始する。③U.シェーデの日本の大企業変革論。大企業社員の副業・兼業にクローズアップするのは興味深い。米国企業の寿命が短くなっているのは、投資よりも株主還元を重視と指摘し、日本企業は自虐的になるなと説く。

■髙田明と読む世阿弥 昨日の自分を超えていく

読了日:03月30日 著者:髙田 明

ジャパネットタカタの高田明さんと世阿弥、その取り合わせに手が伸びる。高田さんの経験と、世阿弥の言葉がシンクロして魅力的な書となっている。タイトルにもなっている「昨日の自分を超えていく」という考え方が良いではないか。老境に入っても革新していく。人生100年時代に必須の考え方だ。「今の自分を完成形だと思ったとき、成長は止まる」「住する所なきを、まづ花と知るべし」(どんなことも固定しないのが花だとまず心得るがよい)一度うまくいった方法を惰性で続けてもダメ。ゴールはない。自分を磨き続けるという考えに惹かれる。

■直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論

読了日:03月30日 著者:野中 郁次郎,山口 一郎

積読本となっていたがようやく読む。現象学の研究者である哲学者・山口一郎氏と野中郁次郎氏の共著。正直、フッサールの現象学はなかなか難しかった。第2部の野中氏による現象学的経営学の本質は、面白かった。本田宗一郎の「見たり、聞いたり、試したり」の三つの知恵。特に、試したりが重要だと説く。前川製作所の「跳ぶ」を可能にする10カ条。そのあたりに本質があると思う。クラウゼヴィッツが「戦争論」の中で、ナポレオンの強みの秘密を、「長い試みと熟考の末にのみ得ることのできる瞬時に真実を見抜く直観」としているのも興味深い。

最後に:1か月の読書を振り返って

 この3月は、本当、赴くままに好きな本を読んできた。
4月から大学院で学ぶ人と組織関係では、「組織行動論の考え方・使い方」これは、今後も何度も手に取りたい。社会科学における因果関係、測るとはどういうことかなど大変勉強になった。また経営学関係では、「世界最高峰の経営学教室」は前から読みたい本をようやく読めた。
 また久々の小峰隆夫さんの本は、やっぱり良い。
4月から、しばらく自分の赴くままには読書できないだろうという感覚で色々と手にする。
 こういう読書って良い。


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