【読書録88】致知2023年6月号 「わが人生の詩」感想
「わが人生の詩」
この文言から、どんな記事が書かれているのかあまり想像できなかったが、心に響く記事が多かった。
特に古市佳央氏の「事故の日から紡いだわが人生賛歌」は、涙無くしては読めなかった。
人や言葉との出逢いが人生を変える。
具体的には、ものごとの受け止め方、受け容れ方が変わるというのが今号を読んでの一番の収穫であった。
今回は、3つの記事について書いていきたい。
事故の日から紡いだわが人生賛歌
16歳の時にバイク事故で重度熱傷全身41%、手術33回切除した皮膚1.5キロという痛苦を味わった講演家/歌手の古市佳央氏へのインタビュー記事。
事故からの苦難に満ちた回復と講演家になったいきさつなど、涙なしには読めない話である。
外見が別人同然となり、不自由な体と痛みになえながら、支えとなったのは、優しく接してくれた看護師さんとおばあ様やお母さまを中心とした家族の力。
同級生は絶句して部屋をでて2度と来なかったという。退院後も世の中の冷たさを実感しながら過ごしたという。
そんな古市さんの転機が、リハビリメイクの発案者の香月玲子さんとの出会い。彼女の出会いから講演の道へとすすむことになる。
講演の後、たくさんの人に「古市さん、生きていてくれてありがとう」と言われこう感じたという。
苦難を受け入れて生きるために、何が大切かと聞かれこう答える。
「僕は何でも受け止めてくれる家族や仲間がいたから乗り越えられた」という古市氏。
家族の力は偉大である。そして、そんな時に受け止めてくれる人。そういう人になりたい。
他にも良い言葉、良いエピソードがたくさんある。
入退院を繰り返した後、23歳で起業した際に外観をカバーするために信用を大事にしたという。
これは、人としての基本である。そんな古市さんだから成功できたのだろう。
また事故時の輸血が原因でC型肝炎になった体験を通じて命をいただいていかされていることに感謝したという。
そんな受け止め方をできるからこそ、良い出逢いがあるのか?良い出逢いによって、そんな受け止め方ができるようになるのか?
わからないが、どう受け取るかによって、その人の幸福度は変わってくる。
プラス受信というとありふれたことばであるが、経験からどう学ぶか、どう受け止めるかで人生は大きく変わってくる。
インタビューの最後の言葉も深く私の心に突き刺さった。
物事の捉え方によって人生が変わる。
何が起こるかは、因果応報であるが、それをどう捉えるか、そこに人間の主体性があるように感じた。
日本一への軌跡の詩
今年一月に日本一の栄冠を共に掴んだ、駒澤大学陸上競技部監督の大八木弘明さんと岡山学芸館高校サッカー部監督の高原良明さんの対談記事である。駒澤大学は、歴代五校目となる駅伝三冠を達成し、岡山学芸館高校は、岡山県勢で初の全国制覇を成し遂げた。
一番、印象に残ったのは、高原監督が、選手達に話したという、白駒妃登美さんの「天命追求型の生き方・目標達成の生き方」という考え方である。
最近、結局これに尽きるのではないかと思う。
いま求められていることに全力で取り組む、そしてその経験から得られたことから学び成長していく。それしかない。
お二人のコーチ・監督になって取り組んだことは共通している。
一つが、「規則正しい生活に戻すこと」。食生活や挨拶などの日常の生活態度。
もう一つが、「情熱をもって本気で取り組むこと」。
大八木監督は、「選手はやっぱり、大人の言葉ではなく、行動を見ている」と言う。
また「日本一から遠ざかっていた十三年間は驕っていたつもりは一切ありませんが、どこか安定志向に陥っていたのだと思う」という。
指導者の本気度。
とても重要なのだなあと感じる。
大事な時に力を発揮する選手の共通項として、高原監督は、コツコツ努力していることを挙げて、「コツコツが勝つコツだ」という。
またチームは「三年力」と言う。
この2点は、スポーツのみならず、会社組織においても当てはまると思う。
お二人の対談を聞くと、リーダーの本気度と目の前のことに全力で取り組むことの重要性を思い知らされる。
スポーツのみならず人生全般に当てはまる真理であろう。
よき人善き言葉との出逢いが、わが人生を導いてきた
ノーベル賞受賞者の大村智氏と日本童謡館館長の大庭照子氏の対談記事である。
大村先生の経歴が興味深い。研究者として突き進んできたのではなく、一度、工業高校夜間部の教員として働き始めてから、学び直して、大学⇒大学院と働きながら、勉学に励み、研究者の道に進んだという。
昼間は大学で勉強、夕方からは墨田工業高校で教え、授業が終わると、大学の研究室で実験に打ち込むという生活でした。
ノーベル賞学者の中ではかなり異色の経歴である。そんな経歴に大変親近感が湧いた。
父親から、研究者の道を歩むことに対して、「お前の経歴だと一流の研究者になれない」「日本はそういう社内なんだ」と反対されたことに対しての考え方が素晴らしい。
自分がやりたいこと、こうありたいと思うことがあるのであれば、自分で道を切り開けばよい。今の時代の方がより時代の変化のスピードが早いのだから尚のこと、以前の道以外にもたくさんの道があるのである。自分の心に素直になりたい。
そんな大村さんのお話で共感したのが、北里研究所の副所長になった頃から、大勢の前で話をしなくてはいけないとの事で、人間をつくるための勉強を真剣にやり始め、そのために様々な本を読み、出逢った言葉や教えを書き留めてきたという話。
紹介される次の言葉は、印象的。
とても良い言葉である。
また北里研究所が資金難に陥ったときに、出逢った自分を支える言葉として紹介する、山田方谷の言葉も素晴らしい。
自分のやるべきことに全力を尽くしているからこそ刺さる言葉と出逢うのであろう。
読書と実践、その二つの柱である。
そんな大村先生が、人生を豊かにする基本として3つの言葉を挙げる
老師や論語、やっぱり中国古典は、日本人にはあるのかなと思う。少し中国古典を読み進めたい。
それに対して大庭さんのエピソードで印象的だったのは、お母さまが86歳で自殺し、ご自身も乳がんが見つかるという試練に直面したことに対しての受け止め方である。
私にとっての今という時はどんな時であろうか。
4月にまさかの異動先。昇格とはいえ、なかなか難しいポジション。これにどう向き合うか。真正面から向き合って、自分がやりたいようにやるしかあるまい。
自分を成長させる試練。そんな捉え方をしたい。
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