”聖職”と”労働”と”アマチュアリズム”と”客”と”プロ”
”聖職者”なのか”労働者”なのか
教員の労働時間削減を目指す動きは加速していて、業務内容の改善や部活動の地域移行などが進められている。
働くものとして、社会を生きるものとして権利や健康を主張し、守っていくことはとても重要なことであるし、より良い労働環境を求めていきたい。
ただ、業務内容の削減や、労働時間の厳守を主張するがあまり聖職としての教員から遠のき、労働者としての教員となることを私は危惧する。
そもそもなぜ教員が聖職として在るべきかといえば、それはアマチュアリズムに帰化する。アマチュアリズムの対義はプロサラリーである。
例えば医者が、患者からの報酬によって治療内容を変えるというようなことは基本的にあってはならないし、治療途中で「ここからは時間外労働になりますので、追加治療をご希望の場合にはオプション料金が発生します。」とあってはならない。
それと同じように教員が、生徒からの報酬に応じて教育内容を変えるようなことがあってはならないのは言うまでもない。
それがアマチュアリズムであり、対義はプロサラリーだ。
権利や報酬について主張することは労働者であれば当然であるが、ある特定の職業においてはそうあってはならない。
故に聖職である。
”プロフェショナル”なのか”プロサラリー”なのか
〜プロアスリートのSNSがみていられない件〜
近年、ソーシャルメディアの普及や新型コロナウイルスの影響もあってかプロアスリートが個人のSNSアカウントや動画チャンネルで発信する流れが加速している。
一般的にはファンサービス的な観点から好意的に受け取られており、世の中の積極的に情報発信すべきだという風潮と相まって、球団や所属団体などが選手に対して積極的な発信を促すケースさえある。
ただ、私はプロアスリートが闇雲に個人のSNSアカウントや動画チャンネルで情報発信すべきでは無いと考えている。
はっきり言って恐らくほとんどのプロアスリートが向いていない。
”プロフェッショナル”と”客”
先日、格闘家の青木真也さんがこんな事を言っていた。
山口周さんもこのような主張をしていて、なぜ講演会などではこれほどまでに質問や意見が出ないのか疑問であった。一方でテレビ局やラジオ局に猛烈にクレームを入れる人もいる。これは権力で対人関係を図り、発言をコントロールする人間の弱さだと。猛烈なクレームを入れる人というのは立場が顧客として作り手よりも上だと思っている人達なんだと。
つまり、私がほとんどのプロアスリートは闇雲に個人のSNSアカウントや動画チャンネルで情報発信すべきでは無いと考えるのはファンのために発信しているからだし、ファンが求める発信をしているからだ。「客のくせに何言ってんだ」「うるせぇバカうんこ食ってろ」って言えるだけの思想信念主義主張を持ち合わせていないかだ。
あるプロ野球選手は個人の動画チャンネルで試合後にその日のプレーについての発信をしていた。しかし、試合に負けたその日は配信を見送ってしまったし、チームメイトをゲストに呼んで再生回数を稼ぐ選手もいるし、その辺のインスタグラマーっぽい発信を続けている選手も散見する。
勿論、SNSや動画チャンネルをどのような目的で使うかは個人の自由であり、他人がどうこういう話ではない。
ただ、今回の文脈でプロアスリートのSNSについて述べるならばプロフェッショナルとしての発信ではないという事である。ファンや登録者に主導権を握られ、客の立場が上になってしまっている構造が窺える。山口周さんが言うように構造的に誹謗中傷が生まれやすい状況になっている。
プロフェッショナルとして自らの思想信念主義主張を発信するための動画チャンネルならば試合に負けたとしても、思うようなパフォーマンスが発揮できなかったとしても、発信するべきだし、それができないのなら安易にSNSや動画チャンネルの開設などはするべきではないというのが私の意見である。
”アマチュアリズム”と”聖職者”
プロスポーツとはアマチュアリズムであり、プロフェッショナルである。客に自らの表現の主導権を握られてはならない。
教育者とは聖職者であり、アマチュアリズムである。プロサラリーでも労働者でもない。
今後、働き方にまつわる権利を主張する事はますます加速していくだろう。
アマチュアスポーツも学校というものから切り離されていけばいくほど経済的な問題は浮き彫りになる。
スポーツと教育に携わる者として整理しておきたかった。
11月19日青木真也は負けた。その夜、彼は一本のnoteを書き上げている。
菅野雅之
PS:アスリートのSNS論みたいなのはずっとモヤモヤしていて、そのきっかけとなったのはサッカーのクリアソン新宿:井筒さんと、鎌倉インターナショナルFC:河内さんの対談動画がきっかけでした。とても興味深い内容になっています。
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