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【雑記】Netflixドラマ『ブラック・ミラー』シーズン6と…

SF色の濃い『世にも奇妙な物語』みたいなNetflixアンソロジーシリーズ『ブラック・ミラー』
(厳密には今シーズンに限らずSFがそこまで濃くないエピソードもあるのだけど)

配信開始と前後してNHKで『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』やフジテレビで『世にも奇妙な物語'23夏の特別編』が放送されるというシンクロニシティ。

現代より少し先の近未来のテクノロジーが引き起こすちょっとダークな物語。
決して荒唐無稽ではなく「あり得そう」と思わせる絶妙な塩梅。
それが『ブラック・ミラー』の醍醐味。

近年はAIの目覚ましい進化によりSF作品はもはや単なる絵空事ではなくなってきた。
例えば公開中の映画『M3GAN/ミーガン』

高性能AI搭載人形が暴走するホラーとブラックコメディの中間のような作風はまさしく。

近年この手の“AIが暴走しちゃう”系の佳作はたくさんあるが、その中でも屈指の出来だった金字塔を挙げるならHBOドラマ『ウエストワールド』になるか。

少なくともシーズン2までは鉄壁。
(シーズン3以降はストーリーの方向性が根本的に変わる)

こうなってくるとビジネス分野で「未来予測は良質なSF作品の中にあるのではないか?」と考えたくなるのも自然な流れ。
書店のビジネス書コーナーに堂々とSFの名を冠した本が並ぶように。
例えば『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』

Google中国社長の経歴を持つ人工知能学者と新進気鋭の小説家(こちらもGoogle勤務歴あり)の共作。
2041年の未来予測を短編小説のフォーマットで語っているのだが、2022年12月に翻訳版が出た時点で既にいくつかのエピソードには時代が追い付きつつある。

よりビジネス書然としているのが3月に出版された『SF超入門』

副題が

「これから何が起こるのか」を知るための教養

なのでもうそのまんまw

そんなわけで個人的に『ブラック・ミラー』にはそういうテクノロジー批評性を求めているわけだが、その点で『ジョーンはひどい人』はシリーズの中でもベスト級に好きだった。
(逆にそこがピークで残り4本はそこまでハマらなかったかなぁ…)

主人公が勤めるのは「ストリームベリー」という架空のグローバル動画配信サービス企業。
赤文字のSが大きくなりあの音でアプリが起動するし、どう見てもネットフリックスのセルフパロディw

仕事から帰宅後に今日から配信開始したという新ドラマを観たら何から何まで自分の過ごした今日一日そのまま。
翌日以降もそれが続く=なぜか自分の人生が即座にドラマ化されて全世界に配信されていく。
この時点で完全に世にも奇妙w
ツカミはOK

主演女優を訴えようとすると「彼女は顔を貸しただけで映像はディープフェイクで作られている」、つまり法律的にはその女優の責任は問えないという展開に。

世界最高峰レベルの『カワシマの穴』w
まぁでも近い将来これは実現しそうだよな。
必ずしも本人が演じる必要が無くなる時代。
もちろんそれは俳優・役者の身体性という魅力と裏表の関係になるわけだが。

では、そもそもこのドラマ(劇中劇)は誰が脚本を書いて撮っているのか?
なんとここで出てくるのが今をときめく(?)生成AI。
脚本家も撮影スタッフも俳優もいなかった!
いやはや脚本家ストライキの真っ只中に超絶ブラック…

もちろん本作の脚本執筆も撮影もストライキが起こる前なので、揶揄したり皮肉ったりしているわけではない。

さらにこれは究極のパーソナライズと称してユーザーの一人ひとりの嗜好に合わせた専用の作品を作る構想の実現に向けた実験プロジェクトだったことが明らかに。
ビッグデータを分析してユーザーの好みを知り、それに合わせたオーダーメイド作品を生成AIで量産していく。
とんでもなくメタな自己言及。
(もちろんNetflixが実際にその方向に進むのかは不明だが、技術がこのままどんどん進化すれば不可能ではないと思えてくる)
もうこの辺りで痺れまくり。
「おもしれえええ!」となってましたw

メタな自己言及といえば『全力!脱力タイムズ』の2023/6/16(金)放送回。

「番組内で使ったVTRに恣意的な編集があったのではないか?」という自身が散々やってきたボケをメタ的にイジる総集編。
編集前の素材をどんどん開示w
上に貼った『カワシマの穴』の感想noteでも触れた合成映像も検証対象にw
追及するヒコロヒーと追及される有田の映像が実は編集によって合成されたものだったというオチも美しい。

さらに同日に配信限定で公開された『SIX HACK』の“検証”

「なぜあのような番組が出来上がってしまったのか?」をフェイクドキュメンタリーと再現ドラマで描くという見事すぎる仕掛け。
大森時生プロデューサーの作家性や突然の放送休止の全てが集約・昇華。
この企画を許したテレビ東京もNetflixに負けず劣らず狂っているw

『ジョーンはひどい人』の物語はここでも終わらず、終盤はさらにSF色が濃くなって決定論と自由意志の話に。
SF作品ではお馴染みのテーマ。
見ず知らずの人の結婚式に乱入して教会で💩するというギャグ展開からあそこにカーブしていくとはw
ストーリー上のどんでん返しとしても効いていて本当に惚れ惚れ。

奇しくもシーズン6配信開始の翌日に劇場公開された映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』と『ザ・フラッシュ』もマルチバースを舞台に同様のテーマを扱っていた。

この2本は決定論に対する主人公のアプローチが全く異なっていたのも興味深い。

単なるSF作品に留まらず

  • テクノロジー批評

  • メタな自己言及

  • 決定論と自由意志

を兼ね備えて同時代の様々なコンテンツと接続している『ジョーンはひどい人』
いやー、本当に素晴らしかった!

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