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【感想】劇場映画『おいしい給食 卒業』

2019年10月、私の心を掴んで離さない1本の新ドラマが始まった。

私は給食が好きだ。
給食のために学校に来ていると言っても過言ではない。
なぜなら、母の作るご飯が不味いからだ。
うちの家族は頑張っている母を傷つけないように「美味しい、美味しい」と食べる。
たまに出前になった時、父は涙を流して喜んでいる。
だから、給食は私にとって一日で最も充実した食事だ。
だが、そんなことは決して周りに知られてはならない。
教師が生徒以上に給食を楽しみにしているなどと知られたら、私の威厳は失墜する。
なので、ただ心の奥底で給食を愛するだけ…

何度耳にしても素晴らしい前口上w

1人の教師と1人の生徒がどちらがより美味しく給食を食べられるかを競って闘う。
…それだけw
本当にそれだけである。
2本作られた劇場版も基本それだけ。
マジでそれだけw

なので先に断っておく。
本作『劇場版おいしい給食 卒業』が映画として素晴らしいかと問われたら、私の答えは否である。
普段noteに映画の感想を書く際に褒めポイントに挙げることの多い撮影や編集に何か秀でたものがあるかというと正直まぁ普通。
映画に詳しい人に「2時間ドラマで十分」と斬られたら返す言葉も無い。

ただ、それを以って「語るに値しない駄作」とドラマ版を含めて切り捨てるのは違う。
なのでシリーズ完結への感謝と、シーズン1終了後にコロナ禍に突入したことで本シリーズの持つ意味合いが変容していったのではないかという時評として書き残したいと思う。

繰り返しになるが、本シリーズは毎話ただ給食を食べるだけの物語である。
いや、「ただ食べる」ではなく「全力で食べる」が適切な表現かw
バカ方面に突き抜けた『孤独のグルメ』
主演の市原隼人の全力コメディ演技はじめそこで一点突破してくる潔さが魅力。
余計なことはしない。
テレビコント的な演技・演出をエクストリームにやり切った快作。

まぁ正直見てもらった方が早いw
1話30分という短尺でもし合わなくてもすぐ離脱できるので。
これ書いてる時点ではシーズン1がTVerで無料配信中。
サブスクならAmazonプライムやU-NEXTに。
シーズン1には『大豆田とわ子と三人の元夫』の大豆田唄役でお馴染み豊嶋花も出演。

好きな男子のためにコッペパンを机の引き出しに大量保存している女子生徒役w

シーズン1から約3ヶ月後に劇場版第1弾。
(確か劇場版の製作自体はシーズン1開始時点で決定していたはず)
2020/3/6(金)公開なので世の中がコロナ禍に突入した直後。
ちなみに安倍首相の要請で全国の小中高が臨時休校になったのが2020/3/2(月)

あれ?俺もしかして『おいしい給食』でちょっと感動してる?w
劇場版では教育委員会が悪役で登場して給食に何かしらのピンチが訪れるという本来なら壮大なコントのはずが妙に現実とリンク。
この傾向は今回の劇場版第2弾でより顕著になっていく。

ネタバレ防止のため詳細は伏せるが、劇場版のエンディング的に続編は無いだろうと思っていたら昨年まさかのシーズン2。

相変わらずのバカっぷりw
中3設定でカムバックした神野ゴウ役の佐藤大志くんの成長ぶりにもびっくり。

そして今回の劇場版第2弾でシリーズ完結。
諸事情で映画館に着いたのが上映開始時刻ギリギリになってしまったのだが、満席の場内を見渡して思ったのは

え?年齢層高くない?w

勝手に「親子連れや学生が多くて35歳の男が1人で観るのは浮くだろうな」と覚悟してたのですが全然そんなことないw
実は本作の舞台は1980年代前半。
自分も含めて給食の存在自体がノスタルジーなのに80年代に食べていた世代の方々はさらにストライクということなのだろう。
それにしてもキー局ではなく地方局とBSで放送されていた作品がここまでの人気コンテンツになったというのも凄い。

で、前述の通り良く言えばテレビドラマ版と変わらないテンションの、悪く言えば映画というよりは2時間ドラマな作品を鑑賞。
僕は本シリーズのファンだし、そもそも給食という設定的に映画になったからといってスケールがそんなに大きく出来るとも思っていなかったので期待通り。
満席の劇場でしっかり笑いも起きてた。

ただ、観ながらふと

  • 今って給食も黙食らしいからこんなにワイワイしながら食べてる光景って無いんだよなきっと…

  • そう考えると映画館で「みんなと一緒に」本作を見れてるこの状況って実は結構幸せなんじゃないか?

と急に思えてきて涙腺がw
連ドラのシーズン1が始まった時はこんな世の中になるなんて思ってなかったし、まさか「給食をみんなと一緒に楽しく食べる」というシンプルだったはずのテーマがこんな重みを伴うとは。
作り手サイドにもそんな意図は当初は無かったでしょうが、結果的に2020年代初頭という時代と添い遂げた作品になったなぁと。
終盤の給食センター便りの手紙のシーンなんかを見るに恐らく製作陣もある程度はこの辺り意識的だったんじゃないかなと思う。

劇中の給食描写が再び「あるある」に戻る日が来ることを願って。

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