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顧客目線で、競争優位性を構造化する(2/2)

【ポイント】

  • ビジネスの議論でKBF(=KBF:Key Buying Factor)を引き出したいが、これがなかなかうまくいかない。提供側は、顧客が抱える課題や不満、活用シーンなどを理解できていないためである。

  • お客様の「片づけたい用事」に着目して質問を工夫すれば、検討チームはお客様の活用シーンを追体験し、お客様の気持ちに近づくことができる。「お客様が不自由に感じることはないか?」
    「お客様が本当にうれしいのは、どんな瞬間か?」
    「手に入れたいのになかなか手に入らないもの、それは何か?」
    「自分たちならもっと簡単に提供できる、そんなものはないか?」


自分たちのビジネスの可能性を探ろうと思えば、KBF(=KBF:Key Buying Factor:お客様にとっての代えがたい価値)に着目しないといけません。
ところが、一足飛びには行きません。
そこで私たちは、まずは差別化要因を洗い出すための質問を繰り出すことになります。
例えばこんな感じです。

「皆さんが提供する価値は、他社が提供する価値とどこがどのように違うのですか?」


差別化要因が明らかになれば、次のステップとして、その中から「お客様が自分たちの商品を選ぶ決め手」を拾い出す作業に移ります。
例えばこんな質問ではいかがでしょうか。

「これらの差別化要因の中で、競争優位性を担う決定打はありますか?」


ところが、この拾い出し作業は簡単ではありません。なぜなら、提供側は、顧客が真に求めている価値を見落としていることが多いからです。
そんなときに私が繰り出す最初の質問は、お客様の「片づけたい用事」に関するものです。

「お客様は、どういう目的で購入されるのですか?」
「お客様は、どうやって使っておられるのですか?」
「そのとき、お客様が不自由に感じることはないでしょうか?」
「お客様が『よかった』『助かった』と感じるのは、どんな瞬間でしょうか?」

このような質問を通じて、うまくいけば、メンバーはお客様の活用シーンを追体験し、お客様と目線を共有することができます。
根気よく続けるしかありません。

次の質問は、優先順位付けに関するものです。

「お客様が本当にうれしいのは、どんな瞬間でしょうか?」
「お客様は、何に対してならもっとお金を払ってもよいと思うでしょうか?」
「お客様は手に入れたいのに、手に入れるのにとても苦労するものがあるとすれば、それは何ですか?」

これらの質問に答えるうちに、お客様の優先順位が浮かび上がってきます。
そして最後に繰り出す質問は「お客様が自分たちの商品を選ぶ決め手」に直結します。

「皆さんはこれを提供できるでしょうか? どうやって提供すればよいですか?」
「皆さんの中に、これを解決するためのヒントや足がかりはないですか? 提供側の目線で考えているがゆえに何か見逃してはいませんか?」
「他社は苦労するのに皆さんならもっと簡単に提供できる、そんなものはなですか? それはどのような根拠によるのでしょうか?」
「それを他社が真似しようとすると、どれほどの期間、どれほどの投資が必要ですか?」



ひとつ例を挙げます。

ある音響機器メーカーは音声圧縮技術に着目していました。しかし圧縮された楽曲は、彼らが追い求めている「美しい音質」からは程遠いものでした。
結局、この技術を商品化することはありませんでした。

ところが、あるコンピューターメーカーは「我が社のスマート端末にこの技術を採用すれば、電車での移動中や屋外で退屈な時間を過ごす多くの人たちは、いつでもどこでも、気軽に好きな音楽を楽しめるようになるぞ」と考えました。彼らは常日ごろから顧客の行動を観察し、顧客の目線で「今、何が不満なのか」「何があればもっと豊かに暮らせるのか」をモデル化していたのです。

彼らはこのシナリオを実行に移しました。しかも、スマートで心地よい操作性、コンテンツをダウンロードするという発想、コンテンツをクラウド上で管理するというやり方でサービスの質を格段にアップさせることにも成功し、シナリオにさらに磨きをかけました。

ご存知、iPod誕生の話です。

「競争優位性を見つける」という発想から「いまある差別化要因を、顧客目線から輝かせる」という発想に切り替えるだけで、競争優位性の議論には新たな発想が生まれるはずです。


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