概念モデルは、具体と概念の両面から考える上で有効なツール

正解のない問題を解くには、具体と概念の両面から考える方法を身に付けなければなりません。今回は、そのためのヒントについてお話しましょう。

繰り返しになりますが、代表的な構造化のパターンにはツリー型、マトリックス型、フロー型の3つがあることをお話しました。実はこれが、具体と概念の両面から考えるために有効なツールなのです。

マトリックス型は、縦軸と横軸の2軸で構成されます。
例えば縦軸が顧客セグメント、横軸が提供価値というマトリックスを思い浮かべてください。私が自動車メーカーで海外事業戦略を考えるのであれば、こんなマトリックスを作るでしょう。

縦軸 = 顧客セグメント : シニア、ファミリー、ヤング
横軸 = 提供価値 : 性能・機能、デザイン、居住性、価格、耐久性

そして、マトリックスの交点には、「それぞれの顧客セグメントがそれぞれの価値に対してどのような期待を持っているか」を埋めていきます。例えばこんな感じです。

・ 「シニア」と「性能・機能」の交点=「先行車両に衝突しない」
・ 「ファミリー」と「性能・機能」の交点=「先行車両に自動追従する」
・ 「ファミリー」と「居住性」の交点=「前後の座席を歩いて移動できる」
・ 「ヤング」と「価格」の交点=「年収の半分以下の価格」

軸を構成する要素(シニア、ファミリー、……、性能・機能、デザイン、……)は概念的なキーワードですが、交点に埋めたフレーズはどれも具体的であることに気づくはずです。

次に、交点に埋めた要素の1つである「先行車両に衝突しない」を実現する上で必要な技術をツリー型で整理しましょう。

先行車両に衝突しない - + - 先行車両との距離を測定する技術
+ - 先行車両との衝突危険性を判定する技術
+ - 危険を運転者に警告する技術

これらの技術はすべて具体的です。
その他の要素に対してもこの作業を続けると「先行車両との距離を測定する技術」は「先行車両に自動追従する」という提供価値にも有効な技術であることがわかります。つまり、「先行車両との距離を測定する技術」は、シニア層にとってもファミリー層にとっても価値を提供する、重視すべき技術なのです。

このようなプロセスで思考を深めていくと、この作業を通じて具体と概念の両面を行き来できていることに、皆さん自身が気付くはずです。つまり、構造化を繰り返すことは、正解のない問題を解く上で欠かせない作業だということです。

ビジネスの会話や議論の最中でも常にこのように対象を構造化していけば、自ずと思考回路は形成されます。その結果、皆さんは知らず知らずのうちに具体と概念の両面から物事をとらえ、考えられるようになります。
そして、より突っ込んだ議論ができるようになるでしょう。

「あなた方のおっしゃっていることは、表面上は違いますが、実は同じことですよね」
「あなたのおっしゃっている事案は、○○条件下でのひとつのケースでしかありません」
「これは、□□という条件の下では確かにそうなのですが、△△条件のもとでは違います」

このような議論さえできれば、無理な努力をしなくても結果はついてくるはずです。

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