構造化することで、正解のない問題を解いてみる(2) 3つの基本形の活用方法は?

以前の演習(構造化することで、正解のない問題を解いてみる(1)「正しい分類方法とは?」)では、構造化の基本である「分類」について、自動販売機の飲料を例に使いながら考えてみました。
今回は、「構造化の基本形」の使い方を、実際の例で学んでいきましょう。

以前にも説明した通り、構造化の基本形は以下の3つです。

 ツリー型
 マトリックス型
 フロー型

ツリー型は、対象をツリー構造で整理することにより、要素の親子関係や包含関係を分析します。プロジェクトマネジメントで使用するWBS(Work Breakdown Structure)や演繹ツリーがツリー構造の代表例です。
マトリックス型は、対象を2軸の表で整理することにより、要素同士の依存関係や要素間の類似性を分析します。課題と原因のマトリックスがマトリックス型の代表例です。
そしてフロー型は、時系列や順序をもつ要素間のつながりを示すことで、要素間のつながりを分析します。業務フローがその代表例です。

それぞれの基本形には、「軸」が存在します。
ツリー型の軸は、階層構造に展開する際の展開理由です。例えばグループをメンバーに展開する場合、軸は「このメンバーはこのグループに属している」になります。
マトリックス型の軸は、マトリックスの縦軸と横軸です。課題と原因のマトリックスの軸は、「この課題はこの原因によって引き起こされている」「この原因はこの課題を引き起こしている」になります。
フロー型の軸は、矢印の上を流れるものです。例えば業務プロセスフローの軸は「この業務のアウトプットが次の業務のインプットになっている」などになります。

基礎知識がついたところで、実際の例で理解を深めましょう。

AさんとBさんは、市場や製品の分類について、議論を交わしています。

Aさん 「性能面では、我が社は負けてないよ」
Bさん 「でも、最先端の製品は価格が高すぎます。新興国の顧客では、なかなか手が出ません」
Aさん 「うちが狙うとすれば、先進国の顧客じゃないか」
Bさん 「先進国の顧客も多くは今の性能で満足しています。さらなる性能向上に高いお金を出すとは思えません」
Aさん 「だからといって『安かろう、悪かろう』の価格競争の市場に打って出ても意味がない」
Bさん 「『悪かろう』ではなく、その地域で必要十分な性能を狙うのです。適正価格で。我が社ではスクラップ扱いされている技術を再利用すれば、競争力のある価格を実現できる筈です」

さてAさんとBさんは、市場と製品をどのように分析しているのでしょうか。
実際に、3つの基本形を使って言語化してみましょう。

まず、市場ですが、ツリー型で先進国と新興国に分けています。
ツリー型の軸は、「購入先を決める際にその理由となる要素」である「性能」と「価格」です。先進国の顧客はさらに、「さらなる高性能に期待する顧客」と「今の性能ですでに満足している顧客」にブレイクダウンされています(同じくツリー型)。

一方、製品はマトリックス型で「性能」と「価格」で分析されています。
マトリックス型の縦軸は、「先端の性能」「現在の性能」「実用的な性能」という性能軸、横軸は、「高額」「普通」「低額」という価格軸です。このマトリックス表の格子状の中身を埋めるように、「先進国でさらなる高性能に期待する顧客」「先進国で今の性能ですでに満足している顧客」「新興国顧客」が要素として配置されています。

こうして分類してみると、性能や価格の基準値が気になります。
参加者の間でも基準値にズレがないかを調べ、自社製品の性能や価格と比較してみるといいでしょう。こうすれば、Bさんが言うように、スクラップ扱いされている技術を新興国に再利用することで、競争力のある価格を本当に実現できるかもわかります。

また、社内の実力も確認しておいたほうがよさそうです。
「各国で販売されている製品の価格や性能」を調査した上で、自社の実力で実現できる価格や性能によって市場をマトリックス型で分析しましょう。
これにより、ターゲットとなる国が見えてくる筈です。

このように3つの基本形を使うことで、議論が整理され、ターゲットや課題などが見えてくるのです。皆さんもぜひ、身近な課題の整理に、これらの基本形を使ってみてください。

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