構造化手法を整理する(2)本質を見抜くための手法を整理する

正解のない問題を解くには、本質を見抜く必要があります。そしてこれまで、本質を見抜くために必要となる、以下のような概念化の手法を紹介してきました。

[これまでに紹介してきた概念化の手法]

 キーワードを洗い出す
 概念モデルを組み立てる
 概念モデルを活用して、具体と概念の両面から考える
 概念モデルを眺め、概念を言葉にする

しかし、これですべてではありません。これ以外にも本質を見抜くための手法はあります。
私自身現在、以下の4つの手法を使っています。

[その他の概念化の手法]

1. 「なぜなぜ…」を繰り返して、根本原因を洗い出す
2. 適切に質問して、様々な角度から意見を出す
3. 他人に自分の考えを説明し、議論を戦わせる
4. 概念モデルを作成し、試行錯誤を繰り返す

このうち4の「概念モデル」は、これまでも紹介してきた手法です。

1の「なぜなぜ…」は日本の製造業の十八番で、皆さんにも馴染みが深いはずです。この手法では、具体と概念の両面から考えることを意識しましょう。

2の「質問」と3の「議論」は、概念化に向けた検討の「起点」として有効です。池に小石を投げ込むように、起点を中心に波紋(=議論)が広がるはずです。これが概念を深める上で欠かせません。概念を深めるには、対象物を様々な角度から考えることが重要なのです。
ちなみに、2は自分ひとりで自問自答できますが、3は他人の協力を仰がなければなりません。その意味で、2は3よりも使い勝手が勝ります。ただし、2で自問自答するには、日頃からの訓練が必要です。

ひとつ、例を挙げましょう。
チームで、高級デパートの服飾ビジネスについて議論していたときのことです。

私たちは服飾ビジネスの市場を「洋服にどのくらいお金をかけるか(かける、かけない)」と「普段はどのようなスタイルが多いか(ビジネス、カジュアル)」という2軸で構造化し、事業展開の方向性について意見を戦わせていました。

・ 洋服にお金をかける + ビジネス  = 丸の内派(イタリアンクラシック)
・ 洋服にお金をかけない + ビジネス = 新橋派(2プライススーツ)
・ 洋服にお金をかける + カジュアル = 表参道派(デザイナーズ)
・ 洋服にお金をかけない + カジュアル = 渋谷派(ファストファッション)

「丸の内派や表参道派はブランド力がカギを握るので、うちのようなデパートには敷居が高い」
「でも集客には欠かせないので、ブランド直営にしろ、委託販売にしろ、うちのデパートの中に店を構えてもらわないといけません」
「そうなると、利益率は見込めないな」
「新橋派や渋谷派は論外でしょう。郊外型のショッピングモールならまだしも、都会の一等地では赤字になってしまいます。客層も違うし、仮にそんな客層が増えたらブランド力はガタ落ちです」

すると、あるメンバーが次のように言ったのです。

「デパートのオリジナルブランドは、このセグメンテーションの中でどう表現されるのでしょうか?」

この発言をきっかけに、私たちは、デパートのオリジナルブランド戦略と各マーケットセグメントとの関係を議論し始めました。
その結果、クールビズによって誕生した「ちょいおしゃれオヤジ」に向けたビジネスカジュアル戦略を立てることに成功しました。

これは、「2.適切に質問して、様々な角度から意見を出す」もしくは「3.他人に自分の考えを説明し、議論を戦わせる」が本質を見抜くのに貢献した、典型的なケースです。
ひとそれぞれの立場の違いや目の付け所の違いが概念化には欠かせないことは以前にもお話しましたが、それは2や3のケースです。

なお、1から4の手法は、ケース・バイ・ケースで使い分けましょう。
慣れないうちは、使い分け方がわからないかもしれませんが、慣れれば無意識でできるようになります。そして、これを繰り返しているうちに、自然と本質を見抜く力が身に付くはずです。

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