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仔犬の咳~ケンネルコフ~

新しくワンちゃんをお迎えして、これからの新生活に胸躍らせていたら…

あれ?咳している?!!

今回は仔犬でよくみられる『ケンネルコフ』についてお話します。
よくみられる病気ですが、酷くなると肺炎にもなる病気です。

一緒にみていきましょう!!

ケンネルコフって?

ケンネルコフは仔犬の呼吸器感染症で、高罹患率ですが死亡率は低いといわれています。
1つの病原体が原因ではなく、細菌やウイルスが複合感染して発症する病気です。
アニコム『家庭どうぶつ白書2023』の仔犬の病気では、消化器に次いで多い病気になっています。

原因となる主なウイルスや細菌は下記の通りです。

【ウイルス】

・犬アデノウイルス
・犬ヘルペスウイルス
・犬パラインフルエンザウイルス

【細菌】

・ボルデテラ(Bordetella bronchiseptica)←原因菌として最も多い
・ストレプトコッカス(Streptococcus zooepidermicus)
・マイコプラズマ(Mycoplasma cynos)

20173356043 (cabidigitallibrary.org)から引用

これらのウイルスと細菌が複合感染することで症状がでます。

症状

ペットショップからのお迎えやペットホテルに預けた後、旅行に連れて行った後など、環境が変わることによりストレスを受けた仔犬での発症が多いのが特徴です。

主な症状は『』。
咳が続くことで吐き出すような仕草もみられます。

その他に、目ヤニ膿性の鼻水食欲不振などの症状が出る場合もあります。
治療が遅れ重症化すると肺炎を併発する場合もあります。

治療

・ネブライザー療法
・抗生剤
・気管支拡張剤
・抗炎症薬(ステロイド)

  • ネブライザー療法
    吸入療法の一つで、機械により薬剤をミストにし吸入させることで鼻腔内や気道内に作用させます。

当院では抗生剤(ゲンタマイシン)、気管支拡張剤、去痰薬などを混ぜて吸入しています。
通常、ゲンタマイシンは腎毒性があり使用には注意が必要ですが、ネブライザーでこの毒性が出るのは稀です。

通院頻度は毎日通院してもらうのが理想ですが、難しいようなら週2回は通院してもらっています。
症状が軽快した後、もう1週間はネブライザー療法を実施することがすすめられています。

  • 抗生剤
    ボルデテラが原因として最も多いことからテトラサイクリン系アジスロマイシン系の抗生物質が選択されます。特にドキシサイクリンが第一選択になります。
    アンピシリン系は薬剤抵抗性の菌がみられますが、アモキシシリン・クラブラン酸カリウムはそれが少ないです。
    その他に、サルファ剤でも効果があったとする報告もあります。
    一方で、成犬でよく使用するエンロフロキサシンは6か月未満の仔犬には推奨されていません

・ドキシサイクリン
・アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム
・サルファ剤

  • 気管支拡張剤
    抗生剤との併用が推奨されています。

・アミノフィリン水和物
・テオフィリン

  • 鎮咳薬(咳止め)
    咳が頻繁にみられる場合は投与を検討します。
    ベトルファノールはシロップの中に溶かして使用できますが、適用外の使用となるので、飼い主さんへの適切な説明が必要です。
    また、投与量が多いと鎮静がかかるので注意が必要です。

・ベトルファノール
・ジフェンヒドラミン塩酸塩・dl-メチルエフェドリン塩酸塩・アンチピリン・無水カフェイン混合液

  • ステロイド
    0.25~0.5mg/kgを1日1回、5日を超えない日数での投与をすすめる報告もありますが、賛否両論あります。
    メリットとデメリットを考慮の上での投与が推奨されます。

  • その他
    ケンネルコフは免疫が低下している仔犬での発症が多いことから、下痢や嘔吐、食欲不振などの症状がみられる場合は対症療法を実施します。

予防

ワクチン接種が予防の一つとしてあげられます。
ワクチンに含まれるウイルスの免疫は獲得できますが、ケンネルコフはウイルスや細菌の複合感染なので完全な予防は難しいかもしれません。
多くは成長するにしたがって免疫力が上昇し、自然に回復することがあります。
過度なストレスを避け、安静にすることも必要ですね。

今回は以下の論文を参考にしました。

https://www.cabidigitallibrary.org/doi/pdf/10.5555/20173356043

余談ですが、この論文の中で『マヌカハニー』もすすめられていました(笑)

ワンちゃんもマヌカハニーで免疫力が上がるみたいですね!
面白いです!

今回は以上になります。
お役に立てれば幸いです。

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