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[書評]岡崎かつひろ『お金に困らない人が学んでいること』は学び本来の価値を教えてくれる書だった!

今すぐに学びを再開したい! この瞬間から学び始めたい! 岡崎かつひろ氏の著作『お金に困らない人が学んでいること』はそう思わせてくれる好著でした。題名に「お金に困らない人~」とありますが、本書は「お金持ちになりたいなら、学びなさい」とただそれだけを教えるものではありません。学びの意義や楽しさ「も」示してくれます。もちろん「社会的成功にとって学びは大事」という考えのもとに実践的な具体論も述べられますが、そこに収まらないのがこの本の骨頂です。

「人生偏差値」を上げることで人は豊かになる

なぜ学びは必要か? この問いに答えるのは、案外困難です。子どもに聞かれたら何と応じますか? 将来のため? 大人になって苦労しないため? 良い会社に就職するため?

そこそこ多くの人は、これらどの答えにも不十分さを感じると思います。岡崎さんがおもしろいのは、そんな自己投資的な学びの意義をしっかり肯定しつつ、別の次元で「学びの価値」を訴えてやまない点です。たとえば彼は、学びの一側面に「人間を豊かにする」点をあげています。本書の「人生偏差値を上げる」という個所です。

「これからの時代、学力偏差値に代わるものがあります。それが『人生偏差値』です。人生偏差値とは、その人の魅力そのものです」
岡崎かつひろ『お金に困らない人が学んでいること』すばる舎、84㌻

生き方を深めたり豊かにする上で「学び」は欠かせません。しかも、学ぶことでビジネスの成功可能性も高まります。理想論に聞こえるでしょうか。この本を読めば、指摘がユートピアではなく「現実」であることがわかります。

簡単にですが、以下で人生偏差値を高める手法の大枠を紹介しましょう。

経験・読書・人からの学びに利点

人生偏差値を上げるのにまず役立つのが「人並み以上に経験を積む」「頭がおかしいと思われるような(それくらい)特別な経験をする」ことです。また、「誰にでもできることを、誰にもできないくらい、一生懸命やる」ことです。そうして得た「経験」は、あなたの強みになります。ビジネスにおいて武器にもなります。凡百の本を読むより「経験」せよ――真理を突いた指摘です。しかし、ただ「ボーッ」としていても、感じたことは良質な経験にはなりません。岡崎さんはそこを見逃さず、あらゆる「もの・こと」を良い経験に落とし込む術(すべ)を明示しています。いわば"経験の良質化"です。詳しくは本書を手に取って確認してください。

その上で彼が大事にしているのが、「本を読む」と「人と交流する」です。両者もまた、人生偏差値を上げます。先に、読書について触れましょう。

一般にもよく言われることですが、読書は「コスパ最強」の自己投資です。「読書はもっとも効果的かつ短時間に、良質な知識を得ることができる」(同100㌻)と本書にも書かれています。「本を書く」という作業について岡崎さんは下記のように明記していました。

「著者が経験したことを1冊にまとめていく。まさに石から水を絞り出すような行為です。出し惜しみすることなく、知識や体験を本のなかに詰め込んでいきます」
同101㌻

著者の持っているものが渾身の一滴に凝縮されたものが「書籍」です。安価で読めるのですから、実践しない手はありません。ちなみにこの本では「読書術」や「知識を定着させる方法」「知識を実際に活かす方法」についても細やかに触れられています。

これに加えて岡崎さんが重視しているのが「人と交流すること」です。たとえば、異業種の人と話すことが大事だと彼は言います。

「ふだんの自分のコミュニティの外の人たちに出会うと、いかに自分の能力がまだまだなのか、自分のつくり出している結果がたいしたものではないか、ということを思い知らされます」「まだまだ未熟だと思うから成長できるのです。頭を叩かれるような経験をしたほうが人生偏差値も上がり、より魅力的になれます」
同109-110㌻

また、彼は「メンターを見つけて、その人をフルコピーすること」も推奨しています。「学び」の語源は「まね(真似)び」、「真似る」から来ていると言われますが、メンターを徹底的に真似ることで成長が加速すると彼は言います。日本の伝統芸能でも、まず「型」を習うでしょう。そこには「まねび=学び」の神髄が表われていて、だからこの本でも「型」論に触れられています。私も少し前に以下のツイートをしたのですが、似た趣旨でした。

「本を読む」こととともに「人と交流する」もやはり大事です。

ちなみに岡崎さんは、メンター選びのポイントまで提示しています。

私は、人生偏差値を上げる要素を3つに要約するとしたら「人・本・経験」になると思いました。これは、ライフネット生命保険創業者で現・立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏が、学びに重要な要素3点を「人・本・旅」としていることにも通じると感じました。

本書から伝わってくる「学ぶことの楽しさ」

学びは、必要性こそ認識されているものの、蔑ろにされがちです。一方、本書でも述べられているとおり、いわゆる"お金持ち"とされる人たち、社会的成功者たちの多くは学びを怠りません。学びの量と年収にはかなりの相関関係すらあります。

なぜ、彼らは学べるのでしょうか。理由の一つは、「学び自体が明確に楽しいから」です。

この本はおおまかに2つのことを伝えるためにできています。1つは「どうしたら学びを効果的に成果に変え、その結果、お金に困らない人生を手にすることができるのか」というテーマです。もう1つは「学ぶことの楽しさ」です。プロローグで岡崎さんがそう明言しています。私はこの目的にまさにハマって、冒頭に書いたとおり「今すぐに学びを再開したい! この瞬間から学び始めたい!」と思ったのでした。学びの楽しさに目覚められるのも、本書の魅力です。

お金持ちになりたい人も、そうでない人も、また学びに興味がある人も、ない人も、ぜひこの本を手に取ってみてください。「学び」の新しい側面に目が見開かされるでしょう。



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