見出し画像

エゴイストを観た

(映画の感想ではありません、すみません)

電車のドアが閉まって、座席からホームに目を移すと、母に似た女性が立っていた。
もちろん母ではないけれど、背中の感じとか髪がよく似ていた。
その人はホームの階段を降りてゆく誰かに手を振っていた。振り終わってからもずっと階段の上から眺めたまま、動かなかった。
電車が動き出した。
誰を見送っていたんだろうなと考えながら、車内に視線を戻す。
若いカップルがドアの近くに立っている。
男性はすごく背が高い。頭ひとつぶんよりもっと下にかわいらしい女性の髪が見える。
若いカップルを見ると嬉しくなるのは歳をとってきたからなのかもなぁと複雑な気持ちになりながらも、ちらちら見ていると、マスクをした彼が彼女の頭にチュッとした。彼女がふっと彼を見上げる。彼は周りをちょっと気にしてキョロキョロする。わたしはすぐに目をそらす。
大丈夫、見てない見てない。
2人は次の駅で降りて行った。マスクじゃなかったらしなかったんじゃないかなぁとか思いながら、心の中がふわふわした。

気持ちは目に見えないから行動するのだとかいうけれど、行動だって解釈がみんな違うから、それは何の証明にもなりえないのかもしれない。
人は愛を学ぶために生まれてきたなんて、だったら初めから人はエゴの塊でしかない。
でも、誰かの行動や表情にふと目がいき、目が離せなくなる。わたしの妄想だと言われたらそれまでだけれど、そこに宿る何かを探したくなってしまう。
見える世界が変わるほどのものだとしたら、その映画って本当にすごいと思う。
まだ頭も心もぐるぐる回っていて止まらない。
どうしようと思いながらいつまでもかみしめている。
噛んでも噛んでもまだ味がなくならないガムみたいで捨てどきがわからない。
エゴと愛は対ではないと思うし、かといって横並びというわけでもない。
きっとわたしが思うより、混沌として曖昧。
なんて書いてしまうともう違う、と思ってしまう。
言葉にできない。まだ。

映画【エゴイスト】


#エッセイ #コラム #映画 #愛 #エゴイスト





いただいたサポートは創作活動、本を作るのに使わせていただきます。