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9,10月読んだ本から

9月は割と読めたけど、10月はあまり読めず。でも無理しないでおこうと思う。良い本にも出会えたのでいくつかピックアップを。



自転しながら公転する(山本文緒)


友人から勧めてもらった一冊。けっこう分厚かったので気合を入れたけど、読みやすかった。結婚観、恋愛観ってはっきり答えられないんじゃないかといつも思っていて。たくさん経験をすれば見えてくるのかもしれないけど、やっぱりひとりひとり違うので、わからない。自分の知らない自分も出てくるだろうし。そういう曖昧さを愛せたらなと思う。そんなことを思った一冊。

羊と鋼の森(宮下奈都)


これも友人お勧めの一冊。いつもわたしが知らない本ばかり教えてくれるのでありがたい。ピアノの調律師の話。私自身、ピアノの調律はずっと信頼できる人にお願いしているので、興味深かった。始終、静かな話だったけれど、ずっと音が鳴っていた。ひとつの音楽のような一冊。こういうの書きたいと思えた。

若い小説家に宛てた手紙(バルガス=リョサ)


2年ぐらい前から読まなければと思っていた1冊。ずっと机に隅に置かれていた。何回も途中まで読み、放置、を繰り返し、ついに読破した。けど、たぶん半分も理解できていない。というのは、ほとんどが海外の文学の引用なので、わたしが読んだことのある本が、老人と海、アルケミスト、ぐらいだったせいで、もったいないなと思った本。もっと読んでいればわかるところがたくさんあるだろうなと思った。でも、小説を書く人にとって大事なことが心を込めて書かれている。おそらくもっと合理的に伝える手段はいくらでもあると思うけれど、それをあえて手紙形式で文学に仕立て上げた作者の熱意と誠意に拍手。
少しだけ引用すると、
ーーしかし、敬愛する作家の文章をそのまま模倣してはいけません。というのも、あなたが自分自身の文体、つまり自分が語りたいと思っている内容にもっともふさわしい文体を作らなければ、あなたの書く物語が説得力をもつころはありませんし、命あるものにならないでしょう。

雉始雊(絲山秋子)


〈海の仙人〉と一緒に入っていた短編。わたしの持っている初版には入っていなかったので、図書館で借りた。やっぱり好きだった。短いけど、ものすごくいい。どうやったらこんな短編が書けるのかと思う。
タイトルは、きじ はじめて なく と読む。

臣女(吉村萬壱)


ずっと前から気になっていた吉村さんの初めての一冊。度肝を抜かれた。
たぶん、泣くところではないであろう序盤から泣いた。どうやったらこんなものが書けるのか(二回目)。恋愛もの、というには壮絶すぎる、でもやっぱり流れているものは恋愛、愛なのだなと思わせられる。骨がうずくような作品だった。好みが分かれるかもしれないけれど。先が全く見えない作品だった。一度読んだら忘れられない系の作品だと思う。

怪談未満(三好愛)


さらりと読めるおもしろいエッセイ。作者はイラストレーターさんのようで、文章が面白くてびっくりした。些細なところを拾い上げて語る、というのはエッセイだよなぁと思うし、それがすごく上手な人だなと思う。
変に力が入っていないのもいい。妊娠、出産のエピソードは経験がある人なら共感できる部分は多いと思う。意外にそういう本って少ないよなと思った。わたしも書いてみようか。

バイバイ、ブラックバード(伊坂幸太郎)


初、伊坂さん。名前は知っていたけど未読だった。だいぶ前に誰かが勧めているのを見て、それから一年くらいしてやっとたどり着いた。直感でこの本を選んだけど、本当によかった。選ぶセンスはもしかしてあるかもしれない。なんでこんなに面白いのだろう。
小説にしかできないことはたくさんあるけど、それを小説にするのは本当に難しいなと思う。登場人物はそれぞれ難あり。癖の強いキャラをかけたらなといつも思うので、勉強にもなった。真似は絶対できないけど。

ーーたとえば、高級車や宝石が家からなくなったら大騒ぎだけどな、タオルが一枚なくなっても、それほど問題ではないだろ。おまえは自分を、タオルだと認識しているんだよ。

叱る依存がとまらない(村中直人)


これは図書館で予約していてやっと回ってきた本。ずっと気になっていた〈叱る〉ということの意味。わたしが親でなければ100%叱られる側なんだけど、子供に対しての〈叱る〉意味がどうしてもわからなかった。
わたし自身、あまり怒鳴られたりして育ってはいないからなのかもしれない。この本を読んで、納得。メカニズムを知ることは大事。
あぁ、これが知りたかったと思った一冊。親もだけど、会社の役員さんとか読むといいんじゃないかと思う。というか、読んでほしい。
怒鳴る、わめく、とかいう行為がいかに意味がないかがわかるので。
圧をかけるとか、冷静に嫌味、とかも同じ。
こういう本は割と作者の色が出ると思うけど、言葉が丁寧、誠実な感じがあって、煽るような本が多い中、この本は好きだなと思った。
これって叱るだけじゃなく、批評などにも通じると思う。人のためにやるのか、自分の欲をみたすためなのか。レビューとかもそうかも、と思うと面白い。ちなみに心理的な怒りとはまた別の話。人に対して〈叱る・怒る〉という行為についての本である。


◎イラストはみんなのフォトギャラリーからお借りしました

#エッセイ #読書 #読書感想文 #小説 #読書の秋

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