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洗えるものは洗ってみる

万年筆を洗ってみた。パイロットのカクノをずっと使ってるけど、うっかりインクを違う場所にいれてしまったからである。
カートリッジが空になったら、わたしは空になったカートリッジにインクを充填してまた使う、という方法にしている。
あまりよくないのかもしれないけれど、おかしくはなっていないし、なによりカートリッジを買いに行かなくていいし、好きなインクをブレンドできる。
ぼんやりしたまま、スポイトに入ったインクをそのまま本体に注いでしまった。
「うわぁ、間違えた」
思わず声が出た。しばらくどうすればいいのかわからず、万年筆とスポイトを手にもったまま放心する。
ティッシュペーパーを広げ、万年筆を逆さにすると少しはインクが出てきたけれど、どういう仕組みになっているのか、とれないところに入ってしまったようで、いつも透明だった部分が青いインクで波打っている。
「なんでとれへんのやろ」
「えー」
ひとりでしゃべりながらいじくってみるけれど、インクは出てこない。
「しゃーない、洗うか」
分解できるところまでバラシて洗面所へ向かう。
水が青く染まる。
何回か繰り返しすすいで、水が透明にはなったけれど、その水はやはり内部に溜まったままである。
思いのほか万年筆がきれいになって、まぁよかったと思いながら、とりあえず買い置きしていた新しいカートリッジを取り付けてみる。
書いてみると明らかに水が混ざっていて薄い。
日記を半ページ書いてみたけれど、まだまだ薄い。
けどこういうのもなんかいいよなと思いながら、いつもよりもたくさん書きたくなる不思議。
きれいに洗ったせいか、前よりも書きやすくなった気さえする。
あぁ、手紙の時代が戻ってこないかなぁなんて思ってしまう。
切手も封筒も便箋も、なかなかいいと思うんだけど。
いちど便利になったものはなかなか戻らない。
仕方がないよなと思いながら、引き続き日記を書く。
ときどき、洗ってみるのもいいなと思った、万年筆。

○写真はみんなのフォトギャラリーからお借りしました

#エッセイ #万年筆 #洗う #手紙 #インク

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