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今年の総括~読書編

2023年読んでよかった本、10選です。
月ごとの本紹介とかぶるかもしれませんが、ご容赦ください。
今月、本を全然読めていなくて、年間100冊には届かないかなという読書量でした。詩や短歌、絵本も含めた読書数ですが、同人誌等は含めていません。順不同、敬称略です。ネタバレ含みます。


『一生一色』志村ふくみ

年明けに読んで、好きになった本。エッセイだけれど、この人の言葉はゆっくりと染み込んでいくような静けさがある。ものを作る、生み出すということはどんな世界においても同じことなのかもしれない。
~明日死んでしまう蝉の羽がなぜこんなに美しく、巧妙に作られているのだろう。自分もこんなふうな仕事がしたい。

『レボルバー』原田マハ

友人がすすめてくれた初めて読んだ作者の作品。純粋に楽しく読めた。ミステリアスでありながら、芸術の深さに触れていく。分厚いなと思ったけど、一気に読めた。
~画家を目指す者を待ち受けているのは、宴か餓死か、そのどちらかだ。そうわかっていたはずなのに、激流に彼らの身を投じさせたのはいったいなんだったのだろうか。


『何者』朝井リョウ

これも友人のおすすめ。書く視点で読むと本当にすごいと思う。最後まで一人称でこの分量、伏線のはりかた、すごいと思いつつ、完全に読者として楽しんで読んだ。読んだ後、残ったものがはっきりしていた。
わたしにとってそれは勇気の形をしていたと思う。

『センセイの鞄』川上弘美

川上さんの長編、二冊目。短編も最高に好きだけど、すごく好きな長編だった。短編でつなげていくような書き方。絲山秋子さんのイッツオンリートークも似ているスタイルだった。
どこはどうとは言えない、とにかく読んでよかったなと思えた一冊。いとおしい。
~センセイの乾いてあたたかな腕に包まれて、わたしは笑いたいような泣きたいような気持だった。けれど笑いもせず泣きもしなかった。わたしはただひっそりと、センセイの腕の中におさまっていた。

『海の仙人』絲山秋子

初めて読んだ絲山秋子さんの作品。好きすぎてこれを皮切りに今年は5冊ほど絲山さんの作品を読んだ。初版の装丁が好きだったから、新装版が出ていたけれど、中古で探した。でも新装版もやっぱり欲しいなと思っている。この本に出て来る海にどうしても行きたくなり、ゴールデンウイークに車を走らせたのも懐かしい。また海を見たいな。
~「中村は中村の孤独のなかに入っていくのだ」と言った。「さびしいやろうな」河野は胸をつまらせた。

『エゴイスト』高山真

映画をみて、好きだったのでしばらくしてから本を読んだ。エッセイだと思っていたら、自伝的小説とあった。
著者は亡くなっていると知り、あぁ、じゃあ今頃、天国で四人一緒なのかと思ってみたりした。そうだといいなと思った。
愛が何かわたしにはよくわからないけれど、心に残ったものがあたたかいものだったから、きっと愛に近いものだったんじゃないかと思う。

『羊と鋼の森』宮下奈都

これも友人にすすめてもらった一冊(もう本当に感謝)。
調律師の話。今年、ピアノのコンクールやコンサートに久々に足を運んで思ったけど、調律師の名前をぜひプログラムに載せてほしいなと思った。
ピアノを弾いている人がどれだけピアノのことを知っているかというと、案外わかっていないものだと思う。(プロはそんなことはないと思うけど)「ピアノを弾くなら仕組みを絶対に知っておいた方がいい」と学生のころ、副科でピアノを弾いていたわたしも調律師さんによく言われた。「わかっていないと絶対に弾けない」とも。
もしかするとピアノを弾く人より、調律師のほうがピアノという楽器には近いのかもしれない。そんなふうに思った。

『雉始雊』絲山秋子


先ほどの「海の仙人」の新装版に収録されている、短編。
二人称の小説。かなり短いけれど、よい。こんなに短いのに、と思う。
すごいなぁ。

『臣女』吉村萬壱


ずっと気になっていた吉村さんの小説。衝撃だった。どんなふうに終わるのか全く想像もつかなかった。読みはじめたら止まらなかった。何気ない言葉が、特別な表情を帯びて来る。必要な言葉がちゃんとそこに置かれている。
時間が進むにつれ、言葉は減っていくのに、読み手には多くのものを残していく。こんな物語が書けたらなぁと思う。
~不自由な言葉の中にこそ、多くの意味が込められているのだ。

『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎


こちらも初めて読んだ作家さん、気にはなっていたけどずっと読めていなかった。読みながら笑ったし、唸った。おもしろい。小説でないとできないことができるのはすごいことだと思う。あとがきを読んで太宰の「グッドバイ」の続きを意識したのだと知ってなるほどと思った。あれもめちゃくちゃ面白かったなぁ。ラストも最高。あとがきに書いてあった「賛否両論あるだろう」の部分、わたしは書かない方が好き派。途中で何となく〈書かないだろうな〉と思ったから。

いい小説にたくさん出会えた年でした。すすめてくれた友人にも感謝。
書くために読んでいるというのも大きいけど、やはり楽しむために読むことも忘れずにいたいと思います。
あと、やはり読書感想文はヘタクソです。申し訳ない。

○イラストはみんなのフォトギャラリーからお借りしました

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