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新たな「モリ」問題【エッセイ】六〇〇字

 本日の「天声人語」の冒頭。「こんなクイズがある。父親と息子が交通事故にあい、二人とも大けがをした。救急車で別々の病院に運ばれ、息子のほうを担当した外科医は顔を見るやいなや叫んだ。『これは私の息子です!』。一体どういうことか」。多湖輝『頭の体操』でも紹介された。ご存知の方は多い筈。
 五年前まで十八年間営んでいた会社では、お茶出しは、お客さまのときだけ。近くに座っていた者が給仕する。朝は、最初に出社する私が、コーヒーを淹れる。それを内勤者三名が飲む。後は、飲むものが淹れる。女子男子、関係ない。それが私の流儀だった。スタッフは、在宅勤務を含め十八名。女性が十四名。女性比率が約八〇%。小規模でデザイン会社ということだからと、言える。それと、私の家庭環境も関係している、かもしれない。
 父は大正十年生まれ。母は二歳下。父は完全なる亭主関白。時代だったが、わが家は特別だった。いまではDVで犯罪者になるほど。母は、暴力に耐えて、五十で逝ってしまった。その母を見て育ったので、女性を守りたいという想いが、どこかにある、と思っている。
 が、冒頭のクイズは、不正解だった。「義理の父親」と思ったのだ。もちろん、正解は、「母親が外科医だった」。かように、自分の中にも、森何某ほどでないにしても、サングラスのバイアスがかかっていることを、知った。
 同日朝日新聞の川柳の投稿から。〈家事もせず「森けしからん」わが亭主〉(大坪智)

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