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4. マザー、Takeshi、時々、ピンさん - “Spitzname”の話

noteをご覧の皆様、Guten Tag!
コロナに罹り、自宅隔離して6日目。ドイツ時間の明日(2月5日)、抗原検査をしてnegativなら、晴れて隔離が終了するのですが…
隔離終了が分かった瞬間、すぐ防具を取りにアイスリンクに行き、アウェイ会場までAutobahnをすっ飛ばして向かうつもりなんですが…
僕はやはりホッケーバカなのでしょうか?笑

まぁ、身体が元気なのに自宅で待機する日が続いてしまうと色々と考え込んでしまうので、たまにはドイツ語に触れるような記事を書いていきたいと思います。

Spitznameとは?

der Spitzname(男性名詞)
ニックネーム、あだ名

三修社 アクセス独和辞典より

いわゆる、本名とは違う呼ばれ方のことである。
日本では少し前から、『あだ名禁止』にする学校が増えたという記事をよく目にする気がする。

「ご時世で…」「時代が変わったから…」という言葉で片付けたくはないが、現にあだ名で呼んでいる状況に遭遇することは少なくなったと肌で感じる。
そんな中、ドイツでは下の名前か、それを短くした呼び方(der Kurzname)、そしてSpitznameで呼ばれることがほとんだ。家族間でも日常的にSpitznameで呼ばれるので、初めてドイツに来た時はかなり新鮮だった。

ドイツ人には難しかった、Masaru

ドイツ語で“S”は、”Z”の発音になるのだ。
例えば、オーストリア中部の都市名:Salzburg。そう、『ザルツブルク』である。”Sa”で始まるのに『ザ』と発音する。多くのドイツ語の単語でこのような発音をします。
で、僕自身の名前が”Masaru”で、Kurznameは”Masa”となる。多くは後者の”Masa”で呼んでくれるのだが、呼び方が『マザー』となる。

そう、英語のMother(マザー:母親、母)と同じ発音になるのだ。

自己紹介の時は、ちゃんと『マサ』と発音するのだが、書体が”Masa”なので、どうしても発音は皆『マザー』になるのだ。まぁ悪い気はしないので、あまり訂正は入れない。時々、『マッサ(Massa)』と呼んでくる子もいるが、もはや許容範囲として振り向くようにしている。
そんな中、自分でもびっくりするSpitznameを付けられた…

世界のTAKESHI

日本人で海外での生活をしたことある人なら、多分一度は聞かれたであろう質問がある。

「タケシ・キャッスルって知っているか?」

出典元:TBSチャンネル

そう、日本が誇るお笑い番組風雲!たけし城のことである。相手が日本人だと分かると、この質問がだいたい来る。もはや恒例の質問のレベルで聞かれる(笑) ヨーロッパ全体で人気を誇り、絶大な支持を持つ番組である。
ここで皆さんに想像して欲しい。チームに唯一の日本人選手の呼び方を悩んでいるドイツ人は、彼に愛着ある呼び名をつけるとしたら、どんな呼び方をするのか?

うちのチームの答えは、”Takeshi”となった(笑)
もちろん、自分の名前”Masaru”として、自己紹介はしている。だが、それを上回るスピードで”Takeshi”と呼ばれるようになったのだ。初めて聞いた選手に至っては、本当に名前が”Takeshi”だと勘違いしているレベルだった(笑)
なので、今でも街中で”Takeshi”と呼ばれると振り向いてしまう癖は直らなくなってしまった(笑)
これ以外にドイツで呼ばれているSpitznameについても書いていこう。

プレースタイルからついた”Kampfmaschine”

試合での一枚

上の写真を見て頂ければ分かるかと思うが、相手シュートに対して身体で止めに行くシュートブロックを武器にリーグ戦を戦っています。

相手のシュートコースに入り…
シュートを自分の身体に当てて…
ゴールさせるのを防ぎます

一連の写真は過去の物ですが、このシュートブロックを見たドイツ人たちは、ブロック直後に何事も無かったかのように動く僕に、こんな言葉を付けてくれました。(実際にはチョー痛い時とかあるんですけどねw)

Japanische Kampfmashchine:日本の戦闘機

意図するものとしては、神風特攻隊のような意味合いだと思われる。
これまで7シーズン、ドイツのリーグ戦を通して、僕以上にシュートブロックをしている選手を見たことがない。身体を張ってシュートを阻止する献身的なプレー、そして何事も無かったかのようにプレーに戻る姿を見て、「Masaは本当にKampfmaschineのようだ!すごいよ!」と言われるようになった。これは味方だけでなく、相手チームやファンからも言われるようになった。それだけ、この言葉は僕の代名詞であり、誇り高きSpitznameでもある。

ここまではドイツでのSpitznameについれ触れてきたが、学生時代のあだ名についても触れていこう。

呼ばれたくなかったあだ名

ほんの些細な練習で、そのあだ名は決まってしまった

中学時代、僕はラグビー部に所属していた。入学したての体格と言えば、身長148cm、体重29.7kgのスーパー小柄な選手だった。
で、ラグビーの練習には当然タックルの練習があるのだが、同級生にはすでに身長180cm、体重80kg越えの化け物もいた。で、当然この化け物ともタックル練習をするわけだが、当たり前のように吹っ飛ばされるし、タックルしても相手は倒れないわけだ(笑)
そんな僕の姿を見て、同級生の一人がこう言い放ったのだ。

「まるで、ボーリングのピンみたいだな!」

それ以降、僕のあだ名はピンとなった。
このあだ名で呼ばれるのがすごく嫌だった。
だが、これを機に先輩後輩構わず、僕のことをピンと呼ぶようになった。あだ名はラグビー部以外にも浸透してしまい、結局このあだ名で中学時代は呼ばれ続けた。ラグビー部では夏合宿にあだ名をつける習わしがあったが、そこで付けられたあだ名はもう忘れられていた。

結局、このあだ名は部活を変えた高校でも、大学の體育會でも呼ばれ続けられるようになった。不幸中の幸いとしては、後輩は先輩のことをあだ名で呼ばないルールがあったので、先輩と同期しかこの名で呼ぶことは無かった。
今はもう抵抗なく受け入れられるようになったが、やっぱり嫌なものは嫌だった。だって、自分の中では気に入ってはいないあだ名だから、嫌なままだった。こういったあだ名が、いじめや自殺のキッカケになるのは痛いほど理解することが出来る。

一周回って受け入れることにした、嫌だったあだ名

では、どのようにして嫌だったあだ名を受け入れるようになったのか。
答えは、「コミュニケーションを円滑にするためのツールとして割り切る」ことにしたのだ。

いくら自分が嫌だと抵抗しても、その名で呼ばれなくなるほどの力を手に入れるのは容易ではない。
「それならば、いっそ相手とのコミュニケーションを円滑に進める為のツールとして、場面に合わせて使えば良い!」と、考える様になった。
部活や中学の同級生以外で、このあだ名で呼ばれることはほとんど無い。つまり、場面場面であだ名を使い分ければ良いということだ。これに気付いてからは、かなり気持ちが楽になった。そこから心に余裕が出るようになり、今まで嫌だったあだ名をすんなり受け入れられるようになったのだ。

だが、全ての人にこれが当てはまるとは限らない。
もちろん、向き不向きはある。どんなに努力しても難しいこともある。
だから、無理に僕と同じようにしようとして、さらに心に追い打ちをかけないようにして欲しい。あくまで、これは僕が導き出した、嫌なあだ名との向き合い方のひとつだ。

今の僕の”Spitzname”は?

2020/21シーズンの練習中での一コマ

さて、では、今の僕のSpitznameは何か?
ドイツのチームメイトからは相変わらず、”Kampfmaschine”(日本の戦闘機)として呼ばれている。
日本に帰れば、またホッケー仲間からはピンと呼ばれることだろう。今でも呼ばれたくないとは思っているが、ドイツのSpitznameと同様に、その言葉自体が僕の愛称として変化してしまったのだろう。もはや諦めるしかないだろう(笑)
ただ、あだ名が一概に悪いものだとは思わないのだ。
もちろん、嫌なものもあるだろう。だが、時にはそれが相手とのコミュニケーションを円滑にし、場を盛り上げ、雰囲気を変えることにもなる。だから、あだ名を禁止にしなくても、僕は良いのではないかと思う。
ただ、あだ名の付け方は慎重になるべきだとは思うけれどね。

さて、あなたのSpitznameは何ですか?
今度お会いした時に、僕にも教えてもらえますか?

Stuttgartから感謝を込めて
込山優

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