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島根から東京へ。 東京から宇宙へ。 part5

空港に着くと友達が車で迎えに来てくれていた。


「お疲れ! どうだった?」

「いやー、むずかったわ。 落ちたかもしれん。」

「やっぱむずかったんや、まあハザマ(僕のあだ名)なら大丈夫やろ。」


そう言って僕の挑戦をねぎらってくれ、ラーメンまで奢ってくれた。
その後、研究室のメンバーで飲み会がある僕を家まで送ってくれた。


「じゃあな、お疲れ様!」

「おう、ありがとう。」


僕のためにここまでしてくれる友達がいてなんて幸せなんだろうと思った。


その後の研究室メンバーでの飲み会は大いに盛り上がった。
僕だけじゃなく、他の院試組のメンバーも今日試験が終わったばかりだったので、辛い院試勉強から解放されみんな幸せそうだった。僕も決して試験がうまくいったわけではなかったが、こうやって苦楽を共にした仲間と過ごす時間を思えば今までの苦労が報われたような気がした。


飲み会も終わり、家路につく。
その日は試験と移動と飲み会で疲れ果ててすぐに明かりを消しベッドに入った。酔いのせいか、疲労のせいか心臓がドクドクと音を立て、独りの暗い部屋に鼓動が響き渡る。


「ドクッドクッドクッドクッ」


それは小さい頃宇宙に想いを馳せた時の胸の高鳴りに似ていた。小学生の頃、布団の中に入って目を閉じ、広い広い宇宙を想像した。見たこともない景色や宇宙人、地球にいるどんな生き物よりも大きなモンスター。そんなことを考えていると頭が冴えて眠れなくなって、お母さんを起こして話を聞いてもらっていた。
あんな小さな頃のドキドキでここまで来たんだと思うと不思議な気持ちになった。


明日の12:00に一次試験の合格が発表される。二次試験は形式だけで、進学の意思確認をする程度だと聞いていたので実質明日で合否が決まるのだ。

ドキドキしていたが頭は冷静だった。

「ここまでやることは全部やってきた。あとは運命に任せるしかない。」

そう思うと、今まで張っていた肩の力が抜け、落ちるように眠りについた。


–––––––––––––––––––––––––––––––––


目が覚めて時計を見るともう11時だった。昨日の疲れのせいで寝すぎてしまった。


「あと1時間か。。」


そう思うとなんだか一人で合否を見るのが怖くなって、すぐに支度をして研究室に向かった。研究室にはM2の先輩が二人おられた。


「おはようございます。」

「おぉ、試験どうだった? お疲れさん。」

「いやぁ微妙ですね。12時から合格発表なんですよ。一人で見るの怖くてきちゃいました笑」


そんな会話をしながら時間を待つ。不思議なもので時間が経つのがものすごく遅く感じられた。本を読んでみたり、パソコンいじってみたり、うろちょろしてみたり、トイレも5回くらい行った。そしてついにその時が来た。


「ふぅ、、、、、。」


「『東京大学大学院』っと、カチカチ。。」


ホームページを開くと、「受験番号を入力してください」の文字があった。


「120009 カチッ」


「・・・」


「・・・・・・・あった・・・・。」


瞬間、熱いものが一気に込み上げてきた。


「よっしゃ!」


先輩の目もはばからず一言大きく叫んだ。

爆発的な嬉しいというより、静かな高揚感だった。まるで大気圏を抜け、宇宙空間に飛び出したロケットみたいに。

「俺、、きちゃった、、ここまで、、。」

心臓がずっとドキドキしている。

足元がフワフワする気がした。


島根から東京へ。

僕のロケットロードはまっすぐ伸びていた。



–つづく–








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