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アートディレクター小杉幸一さんからどのようにして高評価を得たのか?課題へのアプローチをまとめました。


今年の1月から「 GO FIGHT CLUB 」というクリエイティブディレクションを学ぶ講座に通っています。

GO FIGHT CLUBとは
広告やPRなどを得意とする、The Breakthrough Company GO主催の次世代クリエイティブディレクション講座。受講者は50人限定。日本最高峰のトップクリエイター14名が、日本のクリエイターの能力底上げと、新時代のクリエイティブディレクション技術の確立を目指した採用直結型の取り組み。
https://goinc.co.jp/fightclub/


2週間に1度の講義は、毎回、事前課題があり優秀な上位3つの企画は講義内で共有、講師から直接講評をもらうことができます。

講座は、4/23(木)のアートディレクター小杉幸一さんの回で折り返しを迎えたのですが、そこでようやく1位を獲得することができました。また今回は1位のみの選定だったことが大きな自信にもつながりました。講義の具体的な内容について記すことはできないのですが、良い機会なので、どのようなことを考えて取り組み、提出課題が高評価を得たのか、ふりかえりもふまえて残しておきたいと思います。成功のプロセスは成功体験を経てはじめて「プロセス」に「成功」という結果を加えてお届けできます。やったね!!

■ 大切なこと

課題に臨む上で最も大切なことは「課題を課題として捉えない。」というこです。

例えば「企業のロゴをデザインする」という課題が出た場合、それを課題として捉えれば、提出物はロゴだけで全く問題はありません。一方で全体を俯瞰するクリエティブディレクターの役割で捉えると、それだけでは不十分です。ロゴによって何を達成するのか、そのための道筋をどう立てるのか、そもそも本当にロゴのみのアウトプットで良いのかなど、本質的な課題を捉えるための視点が大切です。

また、視点を変えて課題に臨めるか否かによって1回の講義から吸収できることは大きく異なります。課題を課題として捉えずにあらゆる可能性を考えてのぞめば、結果的に1位〜3位に選ばれなかったとしても、選ばれた人との差がどこにあるのかを知ることが出来、次に繋げることができるのです。

かくいう僕も、これまで課題を課題としか捉えられなかったことで何度も悔しい思いをしてきました。


■ やっていること

今回の課題への具体的なプロセスの前に、まずは講座に通いはじめてから継続して行っていることを紹介します。それが以下の二つです。

 1.事前の予習
 2.過去の講義のふりかえり

1.事前の予習
インプットや学びを深めることができるのは講義中だけではありません。講義がはじまるまでの期間にインプットできる情報は山のようにあります。毎回、いきなり課題に取り組むのではなく、まずは講師のインタビュー記事から考え方に触れ、理解することからはじめるようにしています。そうすることで、「どんな意図」「どんな学びを得ること」を目的に課題が示されたのか、その背景への理解を深めることができます。

講座は「①課題 → ②講義 → ③講評」の順番で進むため、事前にできる限りのインプットが必要です。仮に「①講義 → ②課題 → ③講評」の順番であれば、講義で考え方やノウハウをインプットした上で課題に取り組めるため、事前の予習はいらないでしょう。けれども「 GO FIGHT CLUB 」の場合は課題からスタートします。事前のリサーチでポイントをどれだけ抑えることができるかが、最終的なアウトプットの差につながると考えています。

ちなみに今回の講義では以下の記事を読み込み、そこから得た学びやキーワードをまとめました。特に「+DESIGNING 2014年8月号(Vol.37)」では、今回と類似した課題の記事が掲載されており、課題の意図について理解を深めることができました。楽しい。

■ 記事から得た学びやキーワード
・デザインをスケールさせる
・目的を明確にする
・プロセスを「楽しむ」3つのメソッド:人格、翻訳、ルールを作る
・小杉さんが作るビジュアルでは色、形など、すべて言語化している
・商品やブランドは「擬人化する」
・この商品はどういう性格か?どういうセンスか?どういう話し方を
 するか?といった「人格」を考える
・考えることでマクロな視点で商品をとらえることができるようになる
・人格のイメージから色=性格、フォント=音色、ポイント数=ボリューム
 を選択すればビジョンも明確になり、デザインの方向性も定まりまる
・「アートディレクションとは、色・トーン・書体・写真などを駆使し、
 目的となる確固とした人格をつくりあげること」
・商品を「擬人化」すると制作チーム内でも共有イメージが生まれて
 ゴール(目的)も明確になる
・商品に個性的で強い「人格」を与えることができればできるほど世の中に
 浸透し機能するデザインになる


2.過去の講義のふりかえり
「 GO FIGHT CLUB 」では日本最高峰のトップクリエイターの成功体験に基づいたメソッドを実例を交えた形で学ぶことができます。それらのメソッドは、抽象化されたものが多く、他で転用できるものばかりです。これまで学んできたことをふりかえりながら、活かせる点を探り実践することで学びを定着させることができます。


■ 今回の課題と制作物

「大切なこと」や「やっていること」といった前提条件を踏まえた上で、今回の課題の具体的な進め方について見ていきます。まずは今回の課題と提出した制作物について。

課題
 1.配布された16:9サイズに、自分の名前をデザインしてください。
    (表記、色、フォント、レイアウト、、すベて自由です。)
 2.自分とは?を100文字以内でまとめてください。

制作物
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制作のプロセス

今回の制作プロセスは以下の8つです。内容は課題によって多少変わります。

制作の8つのプロセス
 1.前提条件とゴールを決める
 2.コンセプトを決める
 3.デザインの方向性を決める
 4.表記を決める
 5.デザインと検証
 6.寝かせる
 7.コミュニケーションの展開を検討
 8.モックアップに落とし込む


1.前提条件とゴールを決める

「課題を課題として捉えない。」をふまえて、前提条件を「阿部さんというクライアントから依頼を受けたと想定」と定めました。前提条件を定めたことで、今回は2つの利点が生まれました。

 前提条件を定める利点
 1.客観的に自分を捉えることができる
 2.課題の提出物に捉われない視点が持てる

また、前提条件からもう少し深掘りして「フリーランスとして働くために名前のロゴを作りたい。」という依頼を受けたと想定し、以下の2つをゴールに定めました。

 ゴール
 ・阿部さんの人間性(性格や雰囲気)が一目で伝わること
 ・阿部さんに関心のある方に「阿部さんと一緒に仕事をしてみたい」
  と思ってもらうこと


2.コンセプトを決める
前提条件とゴールを定めたら、まずは「自分とは?を100文字以内でまとめてください。」について考えます。このまとめがデザインをする上でのコンセプトとなります。自分の特徴、好きなこと、性格、クセなどなど、これまでの人生をふりかえりながら、自分にまつわるキーワードを抽出します。100文字では、多くを語れないため「性格」か「好きなこと」のどちらかで進めることを決めていくつかのエピソードを書きました。その後、デザインに落とし込むことも考慮して以下の3つの軸でエピソードを決定しました。

 シンプル : シンプルにまとめられそうか?
 クリアー : 明快な表現になりそうか?
 ボールド : 強いコミュニケーションが出来そうか?

実は、この3つの軸は小杉さんの博報堂時代の師匠、佐野研二郎さんが大切にされていることでもあります。コンセプトを立てる際には必ず3つの軸を踏まえて「わかりやすく強いコミュニケーションか」を確認します。


3.デザインの方向性を決める
今回はエピソードがコンセプトとなるため、デザインの方向性は自ずと定まります。エピソードの中心は「汗をかくこと」であるため「汗かく文字」をロゴのコンセプトとしてデザインを進めていきます。

自分とは?(=エピソード)
阿部さんはサウナや運動で「汗をかく」ことが好きな人です。また、汗かきでもあり「サラダを食べても汗をかく。」という都市伝説が生まれたことがあります。物腰の柔らかい、優しくユーモアある性格です。


4.表記を決める
名前については、漢字、平仮名、カタカナ、英語の4つの表記方法があります。それぞれの表記方法ごとに印象の異なるフォントを当てて検証します。最終的には、イメージしているデザインとの相性や仕上げやすさを考慮して漢字を選択しました。デザインの元となるフォントは、「優しさ」や「柔らかさ」を考慮して「筑紫B丸ゴシック」を選択しています。

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5.デザインと検証
文字は「筑紫B丸ゴシック」をベースにオリジナルで作成しました。水滴モチーフの位置や角度、文字とのバランス、配色などでデザインのパターンを検証して最適なものを探っていきます。

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6.寝かせる
デザインは完成がスタートラインです。半日でも数時間でも良いので寝かせます。この寝かせる時間がとても大切で、時間をおくことで客観的な視点を持つことができます。集中して制作していた時には見えなかった、デザインの違和感を発見することができるのです。その違和感を解消したら、ようやく完成を迎えます。以下は寝かせた後の気づきのメモの一部で、これを10回ほど繰り返します。

修正箇所 200415
- 制作意図のユーモアを外すか検討
- 汗モチーフ→水滴をイメージしたモチーフにへんこう
- 幸の文字のバランス

以上のような流れでロゴが完成します。

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「筑紫B丸ゴシック」と比べるとこのような感じです。

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7.コミュニケーションの展開を検討
設定した2つのゴールを達成するためには、ロゴが完成して終わりではありません。ロゴを軸にして、どのような展開ができるかを検討します。今回は「フリーランスとして働く」という点に注目し、封筒や今の時代にあったツールへの展開を模索しました。最終的には紙袋や封筒などのVIツール一式と、最近のトレンドであるzoomの壁紙を用意することにしました。


8.モックアップに落とし込む
あくまで課題の取り組みであるため、画像検索から東京ビッグサイトのVIを拝借し、モックアップ用に加工して使用しています。モックアップにデザインを落とし込めば、ツール展開のイメージを持つことができます。テンションが沸騰する瞬間です。

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以上、「 GO FIGHT CLUB 」の受講にあたり、大切にしていることと今回の課題へのアプローチでした。

■ おわりに

講義と講評と評価をいただいた小杉さん、GO三浦さん、ツドイ今井さん、GO FIGHT CLUB事務局のみなさま、ありがとうございました。デザインを評価いただけて色々と吹っ切れました。こんな状況でもあり、直接ご挨拶することは叶いませんでしたが、昔から小杉さんのデザインがとても好きで、チームサノケンの頃からずっと追いかけていました。好きなエピソードは「小杉さんが打ち合わせに遅刻してきた際に、佐野さんがおでこにマジックで💢マークを書いて腕を組んで待っていた。」というお話です。

話がマニアックな方向に逸れましたが「 GO FIGHT CLUB 」は、あっという間の折り返し地点です。引き続き、質の高い考えやアプトプットができるように頑張っていきたいと思います。

この記事が、みなさんが何かを考えたり、作ったりする時に少しでもお役に立てると嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました!


Special Thanks 妻。

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