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雲をちぎって、いつの日か。

限りなく白に近い、グレーの空。

天井が低くなったかのような錯覚を覚えるほど、頭上と心に、なんとなく。
天から、小さくも、確かな圧力を感じた今日。

…まもなく引っ越しだ。

そして
私が引っ越す日の天気は高確率で、曇りである。


いいことを数えてみる


今回は、新生活に向けてドキドキ・ワクワクするような引越しではなく…

今後のためにしばらくの間、色々なことを諦める決意をした。
少し複雑な気持ちの引っ越しである。

部屋は今より狭くなるし
通勤時間は長くなるし
お気に入りの散歩コースともお別れだ…。


…悲しい気持ちになってきた。
このままでは空までも泣き出してしまいそうだ。

では、いいことも数えてみよう。

今までの部屋では、上の階の人の騒音や、部屋の寒さが少し気になっていたので、改善されるかもしれない。
家族や親戚との距離が近い。
通勤時間を利用して、読書量が増える。
今回は東に窓がある。朝、太陽の光を受けられる。
今までできなかった分の貯金ができる。

…これはなかなか嬉しい。いいことの方が多いかもしれない。
悪いことばかりではなさそうだな、と思うことにする。


諦めた。手放した。…でも。


やりたいこと、叶えたいこと。

その一方で
諦めること、手放すこと。

最近は圧倒的に後者が多くて、寂しい気持ちになるけれど…
目を向ければ、そこから得ていることもまたあるはずだ。


今住んでいる部屋に住み続けることを諦めたけれど
一方で
毎月高いと感じていた家賃の負担が減り、これからは少し楽になっていく。

部屋が狭くなり、家具や思い出を手放したけれど
一方で
自分の思い通りに物事がうまく運ばない“現実の厳しさ”をリアルタイムで学んでいる。すると他の色々な物事を厳しく、現実的に考えられるようになる。

…そう思うと結局は
“失った”ようで、新しい何かを“手に入れている”ようにも感じるのだ。

夢や希望だけでなく
俯瞰して物事を考えられるようになることは、決して悪いことではないはずだ。


むしろ、楽しんでやろうではないか。


狭くなった部屋を、どのように彩ろう。
どんな風に家具を配置すれば、生活しやすいだろうか。
実家で料理を少し学べるだろうか。
日々の読書量が増えて、来年からは読んだ本が何冊増えるだろうか。
遮光カーテンと西向きの窓により、朝は暗かった。明るい朝は、どんな気持ちになるだろうか。
そして何よりも…貯金が貯まった未来のこと。

「嫌だなー、狭いなー、辛いなー」
と思いながら生活していたら、きっと色々な場所で言葉や態度で表れてしまう。
するとそれは言霊によって、本当に心からそう思ってしまいそうな気がする。

そして。
そのままもしも自分の身に何かが起きたら、きっと後悔してしまうだろう。

やはり、諦めるんじゃなかった。
もっと毎日楽しいことを考えていればよかった。
貯金なんて、輝かしい未来ありきの話じゃないか。

…そんな風に思いたくない。

そのために、
「諦めた」けれど、「楽になった」
「手放した」けれど、「得たものもあった」
「今は今で、楽しいな」

そう思えるように。

貯金のことすらも忘れて、「気づいたらこんなに貯まっていた」と思えるくらい、毎日楽しいことを探していきたいと思う。


このグレーで重たい雲をちぎって、天使の梯子がかかる空。
そんな日々を紡いでいく。

そして、いつの日か。

引っ越し日の天気は快晴。
まさに心も天気も晴れ渡った状態で、自分の理想の生活ができる場所を見つけられる未来を、密かに夢見ている。


2023.12.18


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